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× × ×
「圭吾、千鶴。父さん達な、世界一周旅行行こうと思ってるんだ」
「は?」
「え?」
帰ってきて早々我が家の大黒柱で俺の実の親父──佐倉大和は突然突拍子も無いことをのたまった。
余りにも唐突すぎて固まってしまう俺と千鶴。
そんな子供達を意に介さないように親父はニカッと笑った。
「ちょいと遅いけど、新婚旅行ということで2人で行こうと思ってんだ。1ヶ月ほど」
「い、1ヶ月!?」
長っ! 思わず声を上げる。
「ちょっと待て! そんな余裕うちにあったか?」
「安心しろ、懸賞で母さんが見事当てたんだ。金はかからん」
くっ! なんて理不尽な幸運!
チラリと母さんの方を見ると猛烈にドヤ顔をしていた。凄いんだけど! 凄いんだけどその顔やめて欲しい!
「お、お母さんはたまに凄い幸運を呼ぶ時があるんです…」
「呼びすぎだろ…幸運…」
隣の千鶴ですら引きつった笑みを浮かべていた。
「で、でもそれにしたって都合のいい漫画じゃあるまいし、1ヶ月も子供だけっ
てのは…」
「ふむ、それについても母さんと話し合ったんだがな、お前達はしっかりしてるし、2人共家事に関しては優秀だろ? 1ヶ月くらい家を空けても問題は無いと思うんだよ」
確かに俺も簡単な自炊くらいは出来るし、千鶴に至ってはたまに家事を手伝いをしてるくらいだからそこまで大きな問題はないだろう。
1ヶ月分のお金さえ置いていってもらえるなら生活自体にさほど影響はないと思う。
しかし、1ヶ月…。
1ヶ月も千鶴と2人きりとな…。
そんな俺の想いを察したのか母さんがあっけらかんと補足した。
「ちょっと前なら不安要素ももう少しあったんだけど、最近あんた達ちょっと仲良くなったじゃない? それなら何とかなるわよ」
出た、THE☆他人事。
それで気まずい思いをしたり苦労するのは俺であり千鶴なのだ。
もう少し我が子達を信用しないで欲しかった。
「──まあという訳なんだ。せっかく母さんが当ててくれたことだし、大丈夫そうなら2人で行きたいんだが、…いいかな?」
「お願い2人共」
そう頭を下げる母さんと親父。
「お、おいおい、頭なんか下げんなよ! どうしていいかわかんないだろ」
「そ、そうだよ2人共! そこまでする事じゃ!」