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「「………」」
学校から家への帰宅途中の風景である。
何この空気。気まずいんですけど。
ぎこちないながらもようやく普通に話せるようになったとはいえ、俺も千鶴もお喋りな方ではないので会話が途切れ途切れになるのは珍しいことではない。
ただ今日の千鶴はなんだか言いづらいことを言い出す直前、みたいな感じでずっと難しい顔をしている。
俺はと言うと
(べ、別に普通だよな、恋人には見えないよな…)
井上のアホが言ったことを変に意識してしまい中々話題を切り出せずにいた。
それと鈴音のさっきの話だ。
千鶴は特別って言ってたけど…俺との関係を鈴音に相談でもしていたんだろうか。
いや、でもそんな相談をしておいてもう1ヶ月近く俺と千鶴の関係が多少改善されたことを知らないのはなにか変だ。
普通はすぐに報告するものだろう、吉報なら尚更だ。
ううむ、と首を捻る。
そんなことを考えていると
「あの…えと…に、兄さんって……会長と仲良いんですか?」
隣からか細い声でそんなことを聞かれた。
「ん? 鈴音とか?」
「は、はい……名前で呼び合ってたし…」
「あぁなんかあいつが名字じゃなく名前で呼べって言うんだよ。同学年はみんな鈴音って呼んでるぞ」
「あ、あぁ、なるほど」
「ただ俺と鈴音は仲悪くはないとは思うぞ。同じクラスだし」
「あ、会長と同じクラスだったんですか」
「うん。………3年間ずっと」
「え!? 3年間ずっと!? す、すごい偶然ですね」
「中学も一緒だからな、それを入れたら中2から5年間一緒だ」
「そ、それも初耳です…」
腐れ縁というやつであろう。
幼馴染というカテゴリではないが女子でこんなに付き合いが長い奴は鈴音以外にいない。
そういえば出会った頃は花菱と呼んでいたはずなのだがいつの間にか矯正させられていた。呼び方に嫌な思い出でもあるのだろう。
「そ、そうかそんなに付き合い長いんだ…だからあんなに……」
ぼしょぼしょと千鶴が呟いている、そんなに俺と花菱の組み合わせって意外?
「それがどうかしたのか?」
「い、いえ! 何でもないです! …何でもないんです…えへへ………ふう…」
そんな風にはぐらかされた。
学校で何か嫌なことでもあったのかしら…?
思春期の女の子は理解が難しいものである。