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「なあ圭吾、今からでも遅くない。一緒に部活をしよう」
「いや、遅いだろ。俺達もう3年だぞ? 大会にも間に合わないよ」
「大会なんてどうでもいいじゃないか。楽しむことが第一だろう」
そう高らかに答える鈴音。
「私がもう一度楽しくしてやるっ! もう一度走ることの楽しさを君に教えてやる! だから──」
「い、いや鈴音ちゃんや? それって単なる君の我侭じゃ…」
「へ!? …う…うるさいっ!! というかちゃん付けはやめろ!」
ちゃん付けは嫌らしい。
「とにかく! 今日こそ陸上部に来い! 一緒に走ろう圭吾!」
「いやいや無理だって! 大体この後妹と帰る約束してんだよ!」
「い、妹!? 千鶴のことか!?」
燃え盛る炎のようだった鈴音の目が驚きの表情に変わる。
「お、お前達仲良くなったのか?」
「いや実は1ヶ月前に少し関係が改善されてな」
「そ、そうか、そうなのか。ふむ…それなら仕方ないか…」
おや? なんか引いてくれそうだぞ?
「め、珍しいな。いつもは親の死に目でも部活来いとか言うのに。」
「そこまで言ったことなんてない! …千鶴に関してはな、ちょっと特別なんだ」
特別って一体どう言うことですたい? と聞こうとした瞬間、噂をすればというやつである。階段をちまちま降りている千鶴を発見した。
鈴音も気付いたようで千鶴を見ながら「おお…噂をすればというやつだな…」と感心している。
思考が被っちゃったじゃねえか、恥ずかしい。
「お待たせしました。あれ…会長? 何してるんですか?」
こちらに近づいてきた千鶴は俺と鈴音の組み合わせにキョトンとしている。
「いや、大した用事ではないのだ。2人共気をつけて帰れよ」
「はい、会長また明日!」
「お、おい鈴音──」
呼び止めようとするも目にも止まらぬ速さで鈴音はその場を去っていった。侍かあいつは。