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× × ×
「それじゃあ母さん、あとはよろしく」
「ええ、それはいいけれど本当に置いていっていいのね圭吾?」
「あぁ、まだ俺はやることがあるから」
この人が親父の再婚相手であり千鶴の実母、そして今や俺の母さんでもある佐倉百恵だ。
背丈や顔の作りはやはり親子なのか千鶴と似通っているが決定的に違うのは千鶴は引っ込み思案で大人しいが母さんは行動的で割りとズケズケものを言う。
千鶴の性格が真逆になったらこんな感じだろうか。
「それにしてもあんたら二人がねえ、そんなに仲良かったかしら?」
「べ、別に普通だろ、親父のプレゼントに付き合うくらい」
「そこじゃなくて、仲良くおんぶして帰ってきたこと」
「うっ……。そ、そりゃあしょうがないだろ、千鶴歩けないんだから」
「だとしてもねえ、この子の性格上絶対歩こうとするだろうし無理矢理おんぶさ
せたとしてもこうはならないと思うのよねえ」
母さんは意地悪い顔でニヤニヤと俺と──すやすや眠っている千鶴を交互に見比べる。
そう、あの後待ち合わせ場所に着いて千鶴を降ろそうとしたら余程疲れていたのか俺の背中で眠ってしまったのだ。
よく眠っているので起こそうにも起こせず途方に暮れていたところを狙いすましたように母さんが到着したところだ。
「今日一日で何かあった? ま、あったんだからこうなってるのか」
「勝手に納得してるし…。ん…まあ強いて言うなら腹割って話せたってところかな」
「そっか」
そう言って母さんは笑った。
その優しい笑顔は千鶴とそっくりで思わずドキリとさせられる。
「まぁうちのお姫様はしっかり家まで運ぶから、圭吾はしっかりお兄ちゃんやんなさい。──任せたわよ」
「りょーかい」
そんなやり取りをして母さんは千鶴を乗せて家に帰っていった。
さて、あとは俺の仕事だ。
再度ゲーム屋に戻るとなんと、かなりの人が増えていた。
ざっと見て先程の5倍はいるかもしれない。
時計を見ると23時になったばかりだった。
かなり順番は下になったがそれでもまだギリギリなんとか手に入るラインだと思うけど…正直微妙なところだった。
考えててもしょうがない、並ぼう。
──開店まで後9時間、佐倉圭吾の堪え忍ぶ戦いの始まりである。