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「千鶴はさ、ずっと俺に遠慮して気を遣って、迷惑をかけないように接してるけどさ、そういうのいいんだよ」
「………」
「少なくとも俺は嬉しかったんだ。最初初めて俺を頼ってくれて、一緒に買い物行けて、遊んで」
すげえ嬉しかった。そう言って俺は笑う。
後ろから鼻を啜る音が聞こえた。
「もっともっと迷惑、かけて欲しいんだ。もっと俺を頼ってほしい。だってそういうもんだろ? 家族って」
「……怖かったんです。嫌われたくなくて…迷惑かけたら鬱陶しがられると思っ
て…」
でも、と千鶴は付け足す。
「本当はもっと仲良くなりたくて…もっと…ちゃ、ちゃんと…お話したくて…でも、中々切っ掛けが作れ…なくて………ううぅぅ…」
いつの間にか千鶴の声が嗚咽混じりになっていた。
小さな子供をあやす様に俺は優しく語りかける。
「考えてること…同じだな。…もしかしたら似たもの同士なのかもな、俺達」
「うぅ…ぐすっ……ふぇ…?」
「今までこうして話す機会なんて全然無かったけどさ、小さい頃俺ずっと弟か妹
が欲しかったんだよ。ずっと一緒にいてくれる兄弟が欲しかったんだ」
「──私も…です。わ、私もずっと…子供の頃お姉さんか…お、お兄さんが欲しかったんです…」
そうか、千鶴も俺と同じ境遇なんだっけ。
千鶴の本当の父親は千鶴が幼い頃離婚してしまいそのまま行方知らずだという。
元々は親父の友人でもあったため、昔薄っすらと聞いたことがある気がする。
「千鶴もか、まあ1人っ子は大抵小さい頃そんなこと考えるのかもな。でさ、子供の頃はもしかしたら今後兄弟が出来るかもしれないとか思って、もしオレに下の子が出来たら何して遊ぼうか、なんて考えてた時期あったんだよ。おかしいだろ?」
いいえ、優しい声で千鶴はそれを否定する。
「私も……同じでしたから」