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しばし迷った後誤魔化すように俺の目を見た千鶴。
ただ俺が真剣だという事が分かったのか大人しく足を差し出す。
「…………はい」
今度は千鶴も抵抗しなかった。
歩道橋周辺と違い、この辺は街灯に照らされているのでまだかなり明るい。
その中で千鶴の足首を見ると、やはり青く晴れていた。というか結構酷い。
軽く触れると「うっ…」と思わず顔をしかめる。相当痛いようだ。
よくこれで痩せ我慢をしていたものである。
これは無理だな。迷うことなくそう思った。
「あ、あの、ちょっと派手に腫れてるだけでそんなに痛くないですよ?」
そんな空気を察したのか千鶴がそう付け足す。
「だから大丈夫ですよ……痛っ」
「ほれみろ、ちょっと触っただけで痛いんじゃないか。この足じゃ徹夜なんて無理だろ」
体力だって使うし長い間立っているか地べたに座ってないといけない。怪我に良いわけなんかあるはずないんだ。
「そんな……だ、大丈夫ですよ…。せっかく、せっかくここまで来たのに……」
それでも千鶴は諦めない。
気持ちはわかる、ここで帰ったら何のために来たんだって感じだもんな。
だけど俺はそれを許すことは出来なかった。
「駄目だ。帰れ」
少し突き放したように言う。
無理をして悪化させる訳にはいかない。千鶴が何と言おうと俺はこの場に留まらせるつもりはなかった。
兄として、というのもあるだろうけど普通に考えて怪我した女の子を一晩中外に置いておくなんて出来るわけがないだろう。人として。
だがそれでも千鶴は納得できないようだった。
「お父さんに…お礼がしたいんでさす……一番喜ぶものを贈ってあげたいんで
す………諦めるわけには……行かないんですっ…!」
「千鶴がそんな痛い想いして無理して、そんで怪我悪化させて…それでプレゼン
ト貰ったって…きっと親父は喜ばない…」
うちの親父はそういう人だ。
「…でも…でも! ……うぅ………」
千鶴もそれは分かっているのだろう。何も言えないのか悔しそうにジッと俺を見つめるだけだ。もしかしたら睨みつけていたのかもしれなかった。
「大会だって近いんだろうが」
ハッと驚いたように千鶴が俺を見る。