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「大丈夫か千鶴!?」
抱きとめた体制から身体を離して問いかける。
「は、はい。大丈夫で……うっ! …痛っ!」
千鶴の顔が一瞬苦痛に歪む。
「ど、どこが痛い?」
「い、いえ…大したことないんですけど………その……右の足首が」
慌てて右足首の辺りを見てみようとする。
「だ、大丈夫ですっ! ホントに大したことないですよ! も、もう痛くないし」
「い、いやでも」
「もう時間になりますし、早く行きましょう? ね?」
「…わかったよ…」
千鶴にこう言われては仕方ない。
歩道橋をゆっくり下りた俺達は目的地へと向かう。
隠しているつもりなのだろうが、右足を庇って歩いている千鶴の歩き方が痛々
しい。
骨折まではいってないだろうが、相当痛いのだろう。顔色も少し悪くなっているように見える。
こちらを気にせずバスへと急いでいったあの男女に文句の一つも言えば良かったと今更ながら後悔する。
「私ならっ…大丈夫ですよ…」
全然大丈夫そうじゃなかった。
その笑顔が余計に痛々しくて、なんだかこちらまで痛くなってきそうな程だった。
「無理…すんなよ」
「っ……はい」
そうして目的地に辿り着いたのはそれから15分後だった。
× × ×
時刻は10時過ぎ。
ゲーム屋が9時に閉店したばかりにも関わらず驚いたことに既に並んでいる豪の者達がそこにいた。
とはいえ数はそれほどいない。ざっと20人くらいといったところか。
「す、すごいですね、もう並んでる人がいます」
「あぁ、多分根っからのGFシリーズのファンなんだろうな…」
こんなにも多くの人が情熱を燃やせるゲーム。
純粋にすごいと思った。
ただうちの親父も完全に同類かと思うと何故か居た堪れない気持ちになる。
列に並び他の人達がそうしているように荷物を下に置き慎重に千鶴を座らせる。
既に並んでいる人達が千鶴を見て少しざわついたのが分かった。
まあ気持ちはわかる。千鶴みたいな女の子がここにいること自体変だもんな。
よく見れば千鶴の顔はかなり青かった。額には汗も浮かんでいる。
強がっているつもりなのか俺にニコリと笑顔を向ける。
こんな時まで俺に気を遣うつもりなのかよこいつっ…。
「千鶴、やっぱり足見せろ」
これ以上の無視は、出来なかった。思い出が蘇った──