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この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
エピローグ「この度わたくしに妹が出来ました」
163/163

24P

「兄さん」


 蔵人もびっくりの冷徹な声だった。

 多分マイナス200度くらい。


「は、はい!」


「朝から姉さんと何してたんですか?」


「い、いやその──」


 何口ごもっているんだ俺! しっかりと誤解をとけよ!


「兄さんは、シスコンだからって……わ、私じゃ満足出来ずに……ね、姉さんとああいうことをする人なんですね……?」


「ち、違う! 大きな誤解をしている! べ、別に妹だからってああいうことになった訳じゃ──」


「……余計悪いです!」


 俺に対して語気を荒らげる千鶴というのもまた珍しかったが、出来ればそんな千鶴は見ないままにしておきたかった。

 千鶴は俺をキッともう一度睨むと、小さく、けれどもハッキリとした声で



「兄さんの…………馬鹿」



 そう言い捨て部屋を出ていってしまった。

 千鶴に、嫌われ、た?

 かつてない絶望感が俺を襲う。


「誤解だーー!!」


 そして慌てて俺も部屋を飛び出す。

 この後千鶴はしばらくの間俺と目も合わせてくれなかったのはまた別の話だ。


 これから俺はこんなほんの少し変わったいきさつで出来た妹達と一緒に、この平凡で取り留めのない日常を生きていくのだ。


 主人公にもヒーローにもなれない俺は、格好なんかつけられないし特別な力だってない。

 けれども俺は俺の守りたいものを、大切な人達と過ごしていくかけがえの無い未来を。


 この手で掴む事が出来た。


 全く、こんな素晴らしいことがあるか。

 いつか願った俺の些細な、けれども切なる願いが、俺の人生をこんなにも騒がしくするなんて。


 

 ──家族というものは助け合うものだ。



 それはどこの家庭にだって存在している、今更確認するまでも無いような当たり前のことで、普段はどれだけいがみ合っていたってイザという時に支え合える家族であるなら、きっとそれは尊くて美しいものだ。

 俺が手に入れた家族ってのはそういうものだと思っている。


 ちと大変で、背負った荷物の重みは増したが、案外その重みは心地良い。


 これからもきっと俺達は色んな壁にぶつかるし、その度に支え合ったり励ましあったり、時には喧嘩する事だってあるだろう。


 そんなひどく面倒で、けれども優しい存在が。



 この度俺に、出来たものだった。




                 完

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