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「圭吾のあの言葉は私にとって本当にすごく嬉しいものだった。初めてだったよ、あんな気持ち。あの言葉があったから、私は君たちとともに生きたいと、父に頭を下げようと……そう思えたんだ」
嬉しそうに語る鈴音は至近距離でその美しい微笑を俺に見せる。
「鈴音……」
「だから」
鈴音は俺の耳元に顔を近づけながら。
「責任は取ってもらうからな」
イタズラめいた語調でそんな台詞を囁くのであった。
と、そこに。
「……ふ、2人とも………何してるんですか……?」
奇跡のようなタイミングで千鶴がドアを開いた。
何て日だ!!!!
千鶴の目には、身体を密着させ、同じベッドで寄り添いながら鈴音が俺に顔を寄せるほぼ18禁な光景に見えただろう。
「に、兄さんも………姉さんも………帰りが遅いから………心配してきてみれば……こ、こ、こ、こんな……」
千鶴は俯いて肩を震わせていた。
でもあれは多分泣きそうになっているのではない。
だって、何か……怖いもん。
「ち、千鶴! これは違うぞ! 鈴音の奴が──」
「──圭吾が自分はシスコンだと言うから晴れて妹になった私に甘えてきたんだ」
「ちょお前何言ってんの!?」
謂れのない罪を被せるんじゃない!
マジでこの状況はヤバイんだよ!
お兄ちゃん泣いちゃいそうなんだよ!
「だってさっきまで君の寝相で大分色んな所を触られていたんだが」
「お、お前が寝てる所に潜り込んでくるからだろーが!」
というかそんなに触ったの俺?
むしろ俺のこの手。
具体的にはどこを色々触ったのか問い詰めたい所ではあったが。
「──2人ともいつまでくっついてるんですか?」
千鶴の感情のない声がそんな思考をぶつ切りにする。
すぐさま俺は鈴音をひっぺがし、千鶴に向き直る。
「あ、あのな千鶴……こ、これは鈴音の冗談で──」
「千鶴」
言い訳をする俺を遮るように鈴音が千鶴に言葉をかける。
千鶴は顔を上げ、まず俺を見た後にゆっくりと鈴音を見据えた。
鈴音はニッコリと笑うと
「妹だからって、負けないからな」
そんな台詞と共に部屋を出ていった。
残るは俺と千鶴だけだ。
千鶴はそのままゆっくりと俺と目を合わせる。
その眼光はかつての鈴音を彷彿とさせる威圧感たっぷりの瞳で。
あぁやっぱり姉妹なんだなーなんてお気楽な思考が頭に浮かぶ。