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「いいからどいてくれ! 色々まずい!」
鈴音にこの事がバレてしまったらコトである。
主に恥ずかしい思いをするのは俺だし鈴音だって朝から見苦しいものを見たくはないだろう。
だが、鈴音は俺に密着したまま唐突に俺の目をまっすぐに見つめる。
表情は、真剣だった。
「なぁ、圭吾。君は妹好きのシスコンだったろう?」
「真剣な顔でいきなりなんだよ!」
「いいから答えろ、君は妹好きのシスコンだろ?」
なにこの有無を言わせない感じ。
もしかしてシスコンの変態野郎だという事で成敗されるのだろうか。
「…………否定はしねえよ」
「ふむ、やはりか」
妙に納得する鈴音。
え、何これ。
我が家のトラブルはもう終わったのにいつの間にダークネスになったんだよ。
「時に圭吾、確か君の誕生日は12月だったな」
そして鈴音は更にそんな脈絡の無い事を問うてきた。
「あ、あぁ。そうだけど」
「私の誕生日は早生まれの3月だ。つまり私は君より少しだけ……年下ということになるな」
「……それがなんだよ」
鈴音の言葉の真意が分からない。
お互いの誕生日なんて前から知ってることだろうに。
「私は君の妹である千鶴の姉だが、君より私は年下だろう? ──つまり……」
そこで鈴音は一呼吸し言葉をためた。
「私は、君の妹ということになるな」
伝えられたその事実をのみこむまでに少し時間が掛かった。
そして考えている間に鈴音は更に俺と身体を絡ませる。
「ち、近い! 近い近い近いって!! だからそれがなんだってんだ!」
「鈍いな全く、つまりシスコンの君に、妹である私はこうして甘えられる権利が充分にあるという事だろう」
いや、何そのトンデモ理論!
別に千鶴は毎朝俺のベッドに潜り込んで身体を絡ませたりしないし!
「鈴音! 分かったから少し落ち着きなさい! 千鶴はこんないやらしい真似は
しない!」
「昨日の夜ベタベタくっついてたじゃないか」
「あ、あれは千鶴が酔ってたから……」
「兄であれば、妹は平等に愛でろ」
鈴音はしばらくもそもそと身じろぎした後に、心地良いポジションを得たようで幸せそうに顔を擦り付ける。
「い、いや……それと、これ……とは」
「大体君は私の父の前で、言っていたじゃないか。──佐倉鈴音に変えてでも私を守ると」
「そ、それは──」
言い訳のしようもない。