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× × ×
俺は目覚めはそんなに良い方ではない。
毎朝毎朝俺を懸命に起こしてくれる目覚ましたんとはもう数年来の付き合いだが、この子がいなければ俺はちゃんと起きられないだろう。
多分ツインテで元気一番な感じの美少女だと思う。
「もうっ! いい加減起きて起きて起きてーーーー!!!! 早く起きないとちゅーしちゃうぞーーー!!!」
こんな感じで毎朝起こされるので(幻聴)既に愛着まで湧いてきている俺のマストアイテムだ。
だが、奇妙な事にかなり疲れていたはずの今朝は愛する目覚ましたんに口やかましく起こされる事は無かった。
「圭吾、起きろ。もう朝だ」
かかる吐息のくすぐったさと目覚ましたんらしからぬひどく優しい声で俺の意識は夢から現実へと戻ってきた。
強烈な眠気に従おうか抗おうかしばし迷った後に重たい瞼をギギギと開けると俺が寝ているベッドに添い寝しているかのように横たわっている鈴音が至近距離で微笑んでいたからである。
──思考が停止した。
その割には意識はこれでもかと言うくらい覚醒した。
?????
どうして鈴音さんがここに?
「起きたか、君は案外可愛い寝顔をしているのでずっと見ていたくもあったが、残念ながら遅刻をしてしまう」
笑う鈴音は余りにもいつも通りだ。
「──ってそうじゃない! なんで鈴音が俺のベッドに潜り込んでんだよ!?」
「圭吾、朝起きたらおはようだ」
「あ、あぁ、おはよ……」
「うん、おはよう」
「……いやそんなんじゃなくて!! なんでここにいんの!? 千鶴の部屋で寝てたんじゃないの!?」
見ると時間はまだ6時ころだ。
「あぁ、千鶴は今朝ごはんを作っているよ。で、私が起こしに来た」
「ベッドに潜り込んでいる理由は?」
「気持ち良さそうだったから……ついな」
たははと照れくさそうに笑う鈴音だったが、こちらはそれどころではない。
何せ俺のベッドは小さい。
人一人寝るのがやっとの大きさだし、二人寝ようと思えば色んな所が当たるくらい密着しなければならない。
加えて鈴音の体からはくらくらするくらいのいい匂いがする。
そして男子高校生にとって朝の起き抜けとはあまり女の子に見られたくない事情というものがある。
「それにしても君はいい匂いだな、なんというか安心する」
嬉しいがそんな場合じゃない。