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この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
エピローグ「この度わたくしに妹が出来ました」
154/163

15P

 家族とはきっと助け合うものだ。


 いつかどこかで聞いた台詞。


 小さい頃から俺達はそれを疑わなかった。


 俺の迷いを千鶴が振り切ってくれたように。


 千鶴の悩みを俺が手助けしたように。


「俺も千鶴も母さんが悪いなんて思ってない、鈴音だってそうさ。母さんは立派な母親だよ。だからもうそんなに自分を責めんなよ」


 母さんの大きな瞳が鈍く光り、頬を涙が伝う。

 それでも母さんは決して俺から目を逸らさなかった。


「失くした時間はこれからゆっくり埋めていけば良いんだ。鈴音はもう自由だし、千鶴とだってこれから少しずつ「姉妹」としての時間を取り戻していくんだと思う。けどさ、それって2人だけの問題でもないだろ。俺や親父だって力になるよ、でも何よりも2人を助けてやれるのは、母さんじゃないか」


 少し照れくさいのはきっとそれが心に触れる言葉だからだ。


 言わずにいられないのは、母さんが傷つく所を見たくないからだ。


 そんな感情は家族であれば実に当たり前の感情で、誰だって思う事で。


 だけどきっと言葉にしないと伝わらない。



「…………この姉妹には母さんが、必要なんだ」


 

 俺の言葉が終わると、まるで美しい景色でも見たかのような顔で鈴音が息をついて。


「やはり……あなた達は素敵です」


 と一言呟いた。


「全部圭吾の言うとおりです、私たちにはあなたが必要だ。私は今まで妹や母というものを知らなさ過ぎた。…………教えていただけると助かる」


 母さんは戸惑うように身じろぎする。


「本当に、いいの? 私は鈴音のそばにいてもいいの?」 


 声は震えていて、表情は未だ不安そうだ。

 そんな母さんに



「そばに、いて下さい」


 

 鈴音は優しく母さんを抱きしめる。



「す、ずね…………鈴音ぇ!!」



 母さんは幼子のように鈴音の胸の中で泣いた。

 親が子をあやすように。


「ごめんね……! ごめんね……! 今までひとりぼっちにさせて、ごめんなさい……! 私、鈴音のそばにいたい……また……鈴音のお母さんに……なりたい……!」


「…………母と、呼んでも、いいのですか……?」


 鈴音が遠慮がちに尋ねると、大袈裟なくらい何度も母さんは頷いた。


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