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ともあれ、ゲーム自体は普通のガンシューティングだった。
千鶴は最初こそ戸惑ったり驚いていたがすぐに慣れてきたのかしばらくするとガンガンおっさんを倒していた。
「えい! えい! この! やあ!」
可愛らしいかけ声とともにおっさんを次々と撃ち抜く千鶴。
何このシュールな絵。
しかし、無駄に難易度が高かったのか中盤ほどで2人共ダウン。
画面に「CONTINUE?」の文字とカウントダウンが表示される。
ちなみにゲームオーバーになった主人公達はおっさんに半裸にされていた。どうでもいい。
「ま、負けちゃったんですか…?」
「あ、ああ。残念ながら俺達はおっさんにやられてしまった…」
「な、なんだか凄いゲームでしたね…」
「俺も初めてやったけど…これシナリオがシュール過ぎるだろ…」
「私もうこのジャケットをまともに直視出来る気がしません…」
「ははっ…俺もだ…なんだよこれ」
クソ、せっかくイイトコ見せられると思ったのに千鶴完全にドン引きしてるじゃないか! このクソゲーめ…。
「……っ」
しかし隣を見ると千鶴は俯いてぷるぷる震えていた。
あれ…意外にウケた…?
試しに千鶴の耳元でボソリと「半裸のおっさん」と囁いてみた。
「…!! やめ…やめてくだ…! アハハハハっ! …お、お腹痛いっ…! ひ
い…!」
ツボに入ったのか爆笑していた。
気遣いとか遠慮とか、そういう建前を感じない本当の笑顔。
千鶴の満面の笑みというやつを俺は始めて見たかもしれなかった。
「お父さんが欲しいのはこういうゲームなんですか?」
しばらく笑っていた千鶴だったがようやく落ち着いたのか何となく質問してくる。
「いや、GF14はシューティングじゃなくてRPGだよ。ジャンルが違うんだ」
「あーるぴーじー。勇者が冒険するやつですよね?」
おぉ、さすがに少しは知っている様だ。RPGのイメージ古いけど。
「大体そんな感じだ。興味あるんなら今度貸そうか? いくつか持ってるから」
「いいんですか? じゃ、じゃあやってみようかな…」
そんな雑談を途切れ途切れに交わしながらゲームセンター内を歩く俺達。
ふとある所で千鶴の足が止まる。
見ると千鶴はクレーンゲーム内のぬいぐるみに視線が釘付けになっていた 。