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対する鈴音も「おお、凄いな」と目を輝かせている。
その表情が小さな子供のようでなんだかこちらも微笑ましい気分になるが、母さんの「圭吾、取り皿並べるの手伝ってー」と言う言葉を聞きつけ現実に帰る。
呼ばれた俺もご指名とあらばと腰を上げる。
「ん、わかった」
「あ……わ、私も手伝います」
鈴音も同じように立ち上がる。
「……ありがと。……お皿の場所教えたげるから来て?」
「は、はい!」
照れ隠しなのか母さんのその不器用な言葉に俺と千鶴は顔を合わせ苦笑した。
目、合わせればいいのに。
──そして。
5人で囲む佐倉家の食卓というのは中々に新鮮である。
俺や親父の分まで料理をよそってくれる鈴音&千鶴姉妹にほっこりしたり、ぎこちないながらもぽつぽつと会話をする母さんと鈴音にこちらがやきもきさせられたりもあったが基本的には楽しい食卓だったと言えるだろう。
テーブル上の料理があらかた無くなった頃には大分空気もほぐれ、親父は冷蔵庫から果実酒を持ち出し、晩酌をするなどかなり「まったり」な雰囲気になる。
「──それで、圭吾はブツブツ文句を言いながらもいつも私を手伝ってくれるんです。……どうも彼は困っている人間は放っておけないらしい」
「うんうん、そういう所は大和さんにそっくりなのねぇ」
何故か俺の話で盛り上がっていた。
鈴音、千鶴はジュースを、母さんは親父に果実酒を貰ってわいわいと姦しい。
新手の嫌がらせだろうか。
「でも大和さんと違って圭吾は少しツンデレ気味よね。圭吾がつっけんどんな態度取る時って大抵照れ隠しだもん」
「圭吾は基本的に女性と話すのは得意じゃないみたいですから」
「ちょっと待った。その話題もうやめてくれませんか。流石に恥ずかしくなってきた」
「何あんた、照れてんの? 可愛いなぁもう」
ガシガシと俺の頭を撫で回す母さん。
どうやらほろ酔い気味なようだ。
そしてそこの姉妹。
深く頷くんじゃない。
「ふふっ、圭吾。そんな事を言われるとますます圭吾の話に花が咲きそうになってしまうではないか」
「ドSかお前は!」
千鶴はくぴくぴジュースを飲みながら楽しそうにこちらを見ている。
なんだかとてもぽわぽわしていた。
「な、なあ千鶴からもなんとか言って──」
「えへへぇ、ほんと兄さんはかわいいですねぇ~」
おや?