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「これがゲームセンター…」
けたたましいゲーム音と喧騒で声自体は全く聞こえなかったが千鶴の表情から察するに恐らくそう言って驚いているのだろう。
まずは最初に巡る場所として俺はゲームセンターに連れてきた。
千鶴曰くゲームセンターには行ったことがないらしい。
たまに来る俺としては少々のカルチャーショックなのだが、まあそれはいい。
キョロキョロと辺りを見渡しながら物珍しそうにしている千鶴を見ると何か微笑ましい気持ちになる。
「何かやってみたいやつあるか?」
周りの音で掻き消えないように、少し大きめの声で千鶴に問いかけてみる。
「でもなんだかみんな難しそうです
…」
「大丈夫、初心者用のもあるし大抵のものなら俺も教えてあげられるから」
迷った後「そ、それなら」と、千鶴が指をさしたのは意外や意外ガンシューティングゲームだった。
「クラスの子が面白いって話してたの聞いていつかやってみたいなって思ってたんです」
「よし、じゃあ決まりだな」
ゲーム機に2人分のお金を投入するとジャカジャカジャーン♪といった感じのタイトルコールが鳴り響いた。
銃型のコントローラーでスタートの文字を撃ち抜くと「1st STAGE」と仰々しく表示され、おどろおどろしい街並みと英語で話す2人のキャラクターが街を歩いているムービーが始まった。
コントローラーを握りしめたまま軽くテンパる千鶴。
「えっ? えっ? も、もう始まってるんですか?」
「あぁ。えっとゾンビが襲ってくるからその銃を目標に向けて引き金を撃つ、弾がなくなったら画面の外を撃てば補充されるから」
そうしてゲームが始まると、おぉぉぉぉとおぞましい唸り声を上げて冴えない半裸のおっさんが襲いかかってきた。
「えっ!? なんだよこれっ!? ゾンビ倒すゲームじゃねえの!?」
思わず突っ込んでしまった。いやだって半裸のおっさんが唸りながらこっち来てるだけだからね!?
「あ、あらすじにはイケメン主人公を妬んで襲いかかってくるメタボの敵を倒せって書いてます」
どんなストーリーだよ、製作者はおっさんに恨みでもあるのか。