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この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
3章・後編「妹と初めての姉」
135/163

37P

「花菱家だとか、一族の繁栄だとか、2人がどれくらい価値のある人間なのかとか。正直俺には遠い世界の話だ。あんたの話だって多分全然理解できてやしない。──でもな、俺は千鶴の兄貴だから……。兄貴ってのは妹を守るのが役割だから………絶対に千鶴を渡すわけには行かないんだ」


 千鶴の言葉に充てられたからか俺の言葉は止まってはくれない。

 いつかもこんなことがあった気がする。

 万引き犯に立ち向かった鈴音と、鈴音に感化され、衝動的に犯人を追いかけた自分。


 当時の状況とどこか似通っていることに内心で苦笑する、

 やっぱり2人は、姉妹なんだ。


「鈴音だってそうさ、鈴音は俺の大切な親友で、妹の大切な姉ちゃんで……つまり俺達にとって誰よりも大切な人なんだ! こいつなしの人生なんか考えられない! 俺は鈴音のためなら何だってしてやれるし、鈴音が困っていたらどんなことをしたって助けてやりたい。例えどんな相手だって!」


 勢いのまま俺はその場に座り込み、地に頭を擦り付ける。

 古来より日本人にとっての屈服の姿勢で、最大の屈辱とされる禁断のポーズ。

 簡単に言うと土下座だった。


「に、兄さん!?」


「け、圭吾! 何して──」


「……! お、お前……プライドが無いのか……?」


 三者三様の反応だった。

 というか満場一致でドン引きだった。

 でも構うもんか。俺のプライドなんて紙切れみたいなもんだし、交渉のカードが無い俺には形振りなんてどうでもいい。

 むしろ蔵人の面食らった顔を拝めたんだ。 勝った気分だぜ、ザマーミロ!

 などと自分を鼓舞しながら俺は蔵人に、あるいは姉妹に自身の思いをぶつける。


「頼む! 2人を自由にしてやってくれ! 俺は2人とずっと一緒に居たい! こんな理屈あんたらには通用しないかもしれない! 花菱家の事情の前では俺なんかの土下座じゃ100回やったって足りないかもしれない! でも俺はあんたにこうして頭を下げるしかもう手段が無いんだ! 頼むよ!」


 恥も外聞も無く喚き散らす俺とそれを困惑の目で見る3人。


 こんな姿、男であれば。いや人であれば絶対に見られたくない。

 しかも鈴音と千鶴の前でだ。


 多分終わった後俺は死にたくなると思う。

 けれど俺は、勢いのまま何度もその地に頭を打ち付けるのを辞めなかった。


 結局分不相応な主人公には格好などつかないのだ。

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