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× × ×
そして当日──
あの後「そ、そんなご迷惑、か、かけられません!」
と小さく強く抵抗した千鶴を半ば強引に納得させる形でなんとかついていく事を確定させ、俺達は今バスの車内にいる。
せっかくなのでゲーム屋に行く前に他の場所も見て回ろうと提案したら真っ赤な顔で大賛同された。
なので少し早い昼過ぎに中心街へ行くことにしたのだ。
俺は密かに意気込んでいた。
向こうももしかしたら兄妹の仲を深めるチャンスだと思っているのかもしれない。
少なくとも俺はそう思っている。
「♪~~」
バスに揺られること40分
何故か上機嫌で窓の外を見ている千鶴を尻目に俺はそんなことをずっと考えて
いたのであった。
──俺達が住むこの街は決して都会ではないものの、中心街だとそれなりに賑わいがあり、見渡す限り人、ビル、人だ。
目的のゲーム屋はこの街で一番大きなホビー店で品揃えもかなり豊富だ。
もちろんGF14の限定版も店頭販売するという情報も入手済みである。
並べるのは店が9時に閉まってからなので時間はまだかなりある。
俺達は当初の予定通り他の場所を見て回ることにした。
「千鶴は普段中心街に来るのか?」
「い、いえ。あまり来たことありません。すご…お店がいっぱい…」
千鶴は周りの賑わいや品揃えに感動している。
千鶴がこっち側にあまり来ないというのは少し意外だ。
クラスの女子達なんか暇さえあれば中心街に出たがるのに。
「も~マジ授業ひまー、カラオケとか行きたーい」
「わかるー、てか今週街いこーよ!」
「いこいこ! 久々にクレープも食べたいし」
みたいな会話はしょっちゅう耳にする。
俺だって友達と遊ぶ時は中心街に繰り出すことの方が多いくらいだ。
そんな俺の視線に気付いたのか千鶴は苦笑いした。
「部活とか生徒会が忙しくて中々遊ぶ機会がないんです…。たまに遊ぶ時もありますけど、地元で済ませてしまうことが多くて」
やっぱり俺も一緒についてきて正解だった。
一人で行かせてたらさんざん迷った挙句変な男に絡まれるという可能性も充分に有り得ていた気がする。
「それじゃあ今日は色々見て回ろう、せっかくだからな」
「は、はい!」
というわけで俺達の特に目的のないゆったり中心街巡りツアーがスタートした。 聞こえるはずもない返事を思わず呟いて苦笑してしまった俺だった。