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この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
3章・後編「妹と初めての姉」
115/163

17P

「あの、兄さん、この人は──ひゃぅ!」


「悪い千鶴、ちょっと下がっててくれ」


「……は、はい…」


 反射的に千鶴を庇う様に対峙する。


「目上の者を呼び捨てか、まるで礼儀というものを知らんな」


「…………何の用でしょうか……」


「いい。そんなものは瑣末な問題だ。──それに用があるのはお前じゃない、お前が大事そうに後ろで守ってるそいつに用がある」


「……鈴音から聞いてるぞ。今更千鶴に何の用だ」


「…ほう、あれがお前に…」


 そこで蔵人が興味深そうな顔をしたのが少し意外で、俺は眉をひそめた。


「なんだよ、家庭の事情に口を挟むなとは言わせねえからな。俺は千鶴の兄貴で──」


「あぁ済まない、意外だったのは、そこじゃない。あれが誰に話したか、ではない。「誰かを信用する」などという世迷言を、そんな感傷的な愚か極まりない行為を未だ続けていた、ということに驚いただけだ」


「なっ──」


「話が逸れたな。なに、悪い話ではない、今日はビジネスの話をしに来た」


「ま、待てよ! ちょっと待て! 今お前自分の娘が誰かを信用したことを、愚かな行為って言ったのか…!? 鈴音の気持ちを何だと思ってんだ!?」


「鈴音の気持ち…? お前は馬鹿か」


 心底見下したような眼差しを蔵人は送る。


「そんなものが、花菱の繁栄にどう役立つというのだ」


 さも当たり前のようにそう言いのける蔵人からは、鈴音への思いやりや親としての愛情など微塵も感じない。


「あんた、娘が可愛くないのか」


「先程と同じような質問をするな、そんなモノが、花菱の繁栄に、なんの役に立つ」



 瞬間頭の中が沸騰しそうになるくらい熱くなった。

 視界が赤い。

 腹の奥底から、ドス黒いものがこみ上げる。

 これは、怒りだった。



「ふざけんな」



 今、心底理解した。

 この男は、鈴音の、俺達の敵だ。


「鈴音は、花菱の操り人形なんかじゃねえぞ!」


「よくもまぁそれだけ他人の為に激昂出来るな、それともあれに思慕の情でも抱いているのか? どちらにしても下らない感傷だな」


「て、てめ……!」


 反射的に殴りかかろうとしたその時だった。

 気づくと俺の腕を途轍もない力で掴み放さない、大きな腕と身体が眼前にいた。


 蔵人のボディーガードのようだ。


「本当に礼儀を知らないガキだ」


 蔵人のそんな呆れたような声が聞こえた。

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