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この度わたくしに妹が出来ました  作者: 犬塚猫蔵
3章・後編「妹と初めての姉」
104/163

6P

「12歳の身分で親の庇護なしに生きられるほど世界は甘くないぞ」


「…道具として、生涯を終えるよりはマシです…」


 迷いは無かった。


 私は心底蔵人と言う男に、そして花菱の一族に失望し、あまつさえ怒りを感じていたのだ。 

 そしてそれに対する蔵人の答えはこうだった。


「そうか。ではお前の代わりを用意するとしよう」


 父は私の顔すらも見ずに無感情にそう述べる。


「…何の…話ですか…?」


「常に不測の事態というものは予見しておく必要がある。──お前が出来損ないだった時のための予備は、あるのさ」



 ”お前が出来損ないだった時のための予備”



 蔵人の言葉が反芻される。


 出来損ないだった時のための予備…って…。


「最も当時は身体が弱く、花菱の一族としては不適格だと判断したのだがな」

 まさか…まさか…! まさかまさかまさか!



「解りやすく言ってやろうか? お前には妹がいる」


 

 声が出ないほどの衝撃だった。


 私に…妹…。


 そして、その妹は、私が逃げれば私の変わりに苦しむことになる…?


 私の…姉の代わりに…!


 そんなの…そんなのあんまりじゃないか…!


「何だ、今の今まで存在すら知らなかった妹が心配なのか? …下らない感傷だな」


 私の様子を見て、蔵人は退屈そうにそう漏らす。


 下らない感傷だっていい。

 偽善というなら否定もしない。


 だけど、私の運命を誰かに押し付けるのは絶対に間違っている。

 そして名前も顔も知らない妹。


 きっとそれは今となっては家族とも呼べない、他人以下の存在だ。

 ただそれでも、もし私がその妹にたった1度でも何かをしてやれるのであれば。


 姉として妹の運命を守ることが出来ると言うのであれば──。


 花菱の駒として生涯を終えるのは意味がある事ではないだろうか? 


 私が産まれた、意味はあるのではないだろうか──。


「さぁ、どうする鈴音? 決めるのはお前だ」


 蔵人からのその問いの答えはもう、出ていた。



「妹には……手を出すな……!」



 強くハッキリと、そして真っ直ぐに私はそう言った。


「…やはりお前は優秀だよ」


 そうして花菱蔵人はまた笑うのだ。


 ──冷たく、おぞましく。



                 ~回想終了~


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