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そもそも千鶴は「本当に喜ぶもの」が何かを知りたかったのだ。
こんな無難なものでも良いと思ったのならそもそも相談になんて来ないだろう。
とその時、控えめなノック音が聞こえた。
「あいてるよー」
静かにドアが開く。千鶴だった。
「し、失礼します」と小さな声で言った後遠慮がちに部屋に入る千鶴。
「あ、あのどうですか? 何か良い案浮かびましたか? …あ」
とてとてとこちらに近寄るとパソコンのディスプレイに気付いたのか意外そうな声を上げた。
「あぁ今調べてるとこ、ピンと来るもんはまだ見つかってないけどな」
「ホントに考えてくれてたんだ…」
千鶴が小さな声で驚いてる。あれ? もしかして俺信用されてなかった? 協力するって言ったよ?
「ちなみにお父さんって何か趣味とかってあるんですか?」
「親父の趣味ねえ」
ふむと唸りながら考えてみる。
あれで親父は多趣味だ。
親父に趣味を聞いても統一した答えは返ってこないと思う。
それでも親父が一番長く、そして熱くハマっている趣味となると………。
「ゲームかな」
「げーむ、ですか?」
同じトーンで呟く千鶴。
「本人から聞いた話なんだが、なんでも昔っからゲームが大好きだったみたいでさ、その昔はゲーム会社を立ち上げようとしてたらしい」
「す、すごい入れ込みようですね」
最もゲーム会社を立ち上げてしまったら売り上げだの流行だので純粋にゲームを楽しめなくなると考え、その夢は仲間に託したそうだ。
後に夢を託された仲間達が実際に立ち上げた会社は親父の信念と企画を受け継いだ人達の尽力で、今大きな成功を収めている。
なにそのバイタリティ。
ともあれゲームに関しては間違いなく親父のツボだろう。
問題は親父は欲しいゲームソフトはほぼ自分で購入している、ということだ。
それでもひとつだけ、俺には心当たりがあった。
「誕生日プレゼントにゲームなんて子供のプレゼントみたいだって思うかもしれないけど、間違いなく親父が喜ぶゲームソフトがひとつだけあるよ」
「そ、それは何ですか!? 教えて下さい!」
「ゲボリアン・ファンタジー14。略してGF14だ」
そう、不朽の名作GFシリーズ。
親父はもちろん、普段あまりゲームをやらない俺でさえ大好きな超大作RPGである。