俺の彼女
俺の彼女は可愛い
どのくらい可愛いか、それは筆舌に尽くしがたい
陽の光に煌めく、黄金色の長く艶やかな髪
小さな卵形の顔
美しい曲線を描く細眉
宝石のように輝く、エメラルドの瞳
顔の中央にす、と通る鼻梁
形の良い、桜色の唇
ここまで考えただけで、胸が愛しさでいっぱいになる
そのうえ、日々その可愛いさに磨きがかかるため、自分の理性との戦いは熾烈を極めている
そんな俺の彼女の名は、『九条院和葉』という
「あっつ―――い!」
高らかに叫んだのは、俺の彼女である和葉
シンプルなセーラー服の裾をぱたぱたと仰いでいる(男供の目線が気になるので、やめていただきたい)
本日は気温28度
暑いと感じるのも至極当然である
「ねー、今日どっか寄ろうよー」
「んあ?いいけど」
此方にしなだれ掛かり、上目使いでおねだりしてくる
暑いと思うが、役得なので我慢する
「やったぁ!じゃあ、アイスクリーム屋さん行こっ!」
向日葵のような笑顔を浮かべ、勢いよく立ち上がった彼女
俺もそれに続き、自分と彼女の鞄をひっ掴んで、足早に学舎を後にした
彼女が、照れくさそうに俺の小指を摘まんでくる
その可愛らしい手を掴み、指を絡める
目指すは、アイスクリームショップ
夕方
アイスクリームを美味しく戴いた俺達は、帰途ついていた
背後から差し込む夕日が、手を繋いで歩く俺達の影を順調に伸ばしていっている
もうすぐ、タイムリミット
彼女の家は目と鼻の先だ
「アイスクリーム、美味しかったねー」
「だな。また明日食うか?」
彼女は嬉しそうに、いいの?と此方を覗きこみながら聞いてくる
その仕草一つ一つが、この上なく愛しい
バニラにしよっかなー、でもストロベリーも捨てがたいなー、うんうん……などと彼女の唸り声を聞いてるうちに彼女の家の門の前に到着していた
手の温もりを躊躇いがちに離し、頭を優しく撫でる
「じゃ、また明日な」
「うん。……あ、ちょっと待って」
後方からの制止の声に僅かに振り返ると、頬に柔らかな感触
完全に振り返ると、彼女のいたずらっ子のようなやんちゃな笑顔
ややあって、キスされた事に気づく
「えへへ!また明日ねっ!」
小走りに去っていく彼女
夕日に照らされた、小さな背中
「………はは。全く、敵わないな……和葉には」
俺の顔が赤いのは、夕日のせいだけではないだろう
密かに、明日仕返ししてやろうと思ったのは別に悪くないだろう
うん、悪くない
シリーズものにします