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1話-A「出力の上げ方(※方法にやや難有り)」

『警告!熱源多数接近!』


 目の前の画面では実機に向かい、マイクロミサイルが接近しているのがわかった。

 撃ったのは敵機として表示されているあいつ。黒い機械の蛇だ。一見黒いカラーリングの新幹線に見えるが、大きさがとんでもない。高さが5階建てのビルほどあり、側面からはミサイルを発射する。


(過去のイベントであんな奴がいたな。設定では軍事企業の武装列車が暴走したのでそれを破壊するって言うミッション……)


 浦島太助はそんなことを思いながらコックピットの中でトリガーを握り締める。彼が大好きなゲーム『V.W』ならワクワクしていただろうが今は違う。

 違うことの一つ目は今彼が操ってるロボットがただのロボットではない。憧れの先輩海姫乙女先輩が巨大化し、彼の『V.W』での愛機『サジテリアス』の装備を身にまとい街に降り立っている。そのコックピットに太助は乗っているのだ。


「きたぞ!見た目は小さいが奴らが使うものだ。どれだけ威力があるかはわからない。気をつけるんだ!」


 太助の正面。コックピットに埋め込まれている海姫先輩が叫ぶ。

 ただしこれは先輩をかたどったインターフェイスで本物ではないらしいが、とてつもなくリアルだ。

 スタイル抜群の海姫先輩(きわどい水着)が目のまで磔されているのは健全な高校生の太助には目に毒だ。


「おい!聞こえているのか?!ミサイルが来ている!」


「は!はい!聞こえてます!」


 目の前にあった海姫先輩の身体に見とれていた太助は正気に戻り、急いでスロットルレバーを握る。


(あぶない……おっぱいに見とれてましたなんてばれたら……ともかく避けないと!これはゲームじゃないんだ!)


 そう。もう一つの違いは、これはゲームではないということ。ゲームなら実際にミサイルに当たっても筐体が振動するだけだが、今は違う。ミサイルが当たるなんて経験したことがないためどうなるかわからないが、ただではすまないことは理解している。


「ええ!クソ!どうしてこうなったんだよ!」


 太助は思いっきりペダルを踏み込み、レバーを押し込んで、回避行動を取る。いつもなら滑らかに動く手も、今は興奮と緊張と焦りからかなり乱暴に動かしてしまったが、確実に迫ってくるミサイルを避けている。


(よし!いける!このまま避けきったら、反撃だ!)


 最初は慌てていたが、さすがは太助が自分で設定したデータを元にしただけはあった。元々愛機『サジテリアス』は高機動が売り。ミサイルが近くに接近した時、機体を動かしてもすばやく動く。そのおかげでミサイルの追尾機能は追跡できず、次々と何もない道路に着弾する。ただし、着弾した箇所は周りの構造物が吹き飛び大きなくぼみが出来ていた。


(威力が見た目と全然違う。あの大きさであの威力ってどんなチート設定なんだよ……って駄目だ!これはゲームじゃないんだ!)


 頭を振って意識を無理やり引き締めようとする。だが同時に仕方がないという考えも離れられない。


(だって、そっくりすぎるだろう……このシートとか同じだし……横にあるビューモニターまででてる)


 最初は、ミサイルという脅威に驚いていたが、回避できるとわかれば回りを見渡す余裕も出来た。そして、太助の横にある小さいモニターはゲームではビューモニターだ。基本コックピットの画面はコックピット視点だが、ビューモニターは空中カメラで実機を撮影しているような視点が流れる。自分の機体がかっこよく動いている姿を見えるようにしてあるのだ。


「かっこいい……!」


 横のビューモニターを見た太助は思わずつぶやいてしまった。画面に写るのは、憧れの海姫乙女先輩。しかも身に着けているのは自分が丹念に作り上げた『サジテリアス』の装甲。重要な部分のみつけているため、メカ的な水着をつけているようで妙にエロティックだ。


(これだけ見ると海姫先輩がちょっとエッチなコスプレしてるようにしか見えない。あの凛として真面目な先輩のこんな姿。背徳感がたまんないって言うか…あれ?)


 太助は画面に出ていた海姫先輩の顔に違和感覚えた。いつもの凛とした顔ではなく、頬を赤らめてる。


「……んっ!あぁ……駄目ぇ!ふふぁああ!!!」


 おかしいなと太助が思った瞬間。目の前に埋め込まれている海姫先輩が身体を仰け反らせ色っぽい大声を上げた。


「え!先輩!?いったい……うわあぁ!」


 その声に驚き、太助は操作を誤り、海姫先輩はビルへと突っ込んでしまった。幸いその際の瓦礫と煙でミサイルは目標を失い、遠くはなれた場所で爆発する。


「いてて……うわ……ホントに現実なんだ……ゲームじゃここまで……」


 ぶつかった衝撃で太助が乗っているコックピットは大きく振動した。所々身体をぶつけてしまい、その痛みがこれがゲームではないことを太助に教える。


「はぁ……はあ……ふぃ……」


 だがその痛みも自分のすぐそばで喘ぐ声に吹っ飛ばされた。そして痛みが引くと自分の下にやわらかいものがあることに気がつく。


(な……なんだこれ?いったい……うお!)


 太助の心臓が今までの人生の中で一番激しく鼓動した。何背、目の前には息の荒げた海姫先輩の顔があったからだ。激突の衝撃で太助はコックピットにはめ込まれていた海姫先輩に覆いかぶさってしまったのだ。おまけにどさくさにまぎれて、オッパイやおなかに手が当たってる。


「ううぅ……」


 太助はとっさに体を引き起こした。


「す!すいません!……せ……先輩……大丈夫ですか?」


「ひぃ!……はあ……はあ……だ……大丈夫だ……あん!……君こそ……大丈夫か?」


「は!はい!大丈夫です……でも先輩いきなりなんであんな声を……」


 この衝突の原因は海姫先輩がいきなり色っぽいを上げたことにあった。太助としてはそれを理由に上に覆いかぶさった際、体を触ったことを許してもらおうという魂胆があったのだが、海姫先輩は照れくさそうに顔を背けてしまった。


「ううぅ……。も……申し訳ないが……その……もう少し優しくしてくれないか?初めて興奮し……力加減がわからないのはわかるが……わたしがもたない……」


 何か勘違いしそうな台詞だが、太助は実際勘違いして慌ててしまう。


(なに?俺?がっついてた?というかそんなことしてないけど!確かに触ったけどちょっとだけだし!)


 そのとき、又警告音が響く。見ると、又ミサイルが迫ってきていた。今太助と先輩は倒れてる。このままではろくな回避が出来ない。太助はとっさにペダルを踏み、レバーを引いてメインと補助ブースターを点火させ飛び上がり、その反動で立ち上がる。緊急回避手段の一つだ。

 だが、その操作をした瞬間また、目の前にいた海姫先輩が喘ぎ声を上げた。


「ひゃおぉ!だ……だからぁ〜!!」


「へ?あ……あの?いったい?」


 目の前の海姫先輩は息を荒げて体をくねらせている。ただし手足はコックピットにはめ込まれているため、妙に艶かしく、その様子が嫌でも太助の目に入ってきた。


(うわぁ……先輩の身体、艶かしい……)


「だ……だから…やさしくと……はあ……はあ……すまない。もう少しゆっくりとペダルやレバーを動かしてくれないか……君は今私に乗っているんだ。君の操作で私も動くのでその際、言葉にはしにくい刺激が身体を走るのだ……ううぅ」


「え?あ……はい……これくらいですか?」


 太助はひとまず距離をとるべくペダルを踏んで移動する。ただしそれはいつもとは違いかなりゆっくりだ。


「んん!!あぅ……ああ……そのくらいなら何とか……難しいと思うがたのむ……」


(でもこんなスピードじゃあ、いつもの半分以下でしか動けないかも……色っぽい先輩の声をきけてよかったけどこれ以上激しくは動けない。又ミサイルを撃たれたら今度は避けきれない……なら……)


 太助は、ウェポン画面を開く。


(よし!こっちも俺が設定した数値と同じ。なら!)


 太助はメインウェポンである大型ビームライフルを使うことを決めた。このライフルは連射速度と威力を自由に設定できる。連射機能をOFFにすれば抜群の威力を得ることができるのだ。


「先輩!あいつを狙撃します!距離をとりますよ!」


 動く前に声を出して海姫先輩に伝える。不意に動かして、又あの色っぽい声を出されては自分がもたない。下半身の一部とか理性とか。


「わ……わかった。あん!」


 かなりゆっくりをペダルを踏んだが、海姫は軽く声を上げてしまった。声を出さないように我慢してるらしいが、目の前でくねくね動かれると余計に集中できない。


(ともかく、ミサイルのレンジから離れて、一撃必殺だ。こいつのレンジは半端ないし、威力も申し分ない。幸い相手はレールの上しか走らないから動きも読みやすい)


 距離をとって、武器を展開する。ビューモニターからはライフルを構える大きな先輩が映し出されていて、相変わらずかっこいいが、顔がさっきと違う。顔を赤らめぴくぴく震えている。


「だ……だいじょうぶですか?先輩……すごい顔……」


「はう!し……仕方がないだろう!私だってこれほどとは聞いてなかったのだ……ともかく長引かせると私も持たない。すばやく頼む……あ……あと……あまり見ないでくれ……」


 海姫先輩は首を横に向けて視線をそらす。


「へ?あの?」


「君はさっきからちらちら何度も……下から見てるとよくわかるんだ……そんなに私の姿が気になるのか?」


(うわああ!いや!横目でビュー画面を見るのはいつもの癖で!)


 おたおたするが、すぐにすべきことを思い出す。


「す……すいません。後で謝りますので今は我慢を!」


「た……たのむ……くうぅ……私がリードするといっておきながら……君に頼りっきりだ……なさけない」


 戦闘でなければ嬉しいのだが、今の太助には喜ぶ心の余裕がなかった。一刻も早くこの状況を終わらせることしか考えられなかった。


(う……。我慢!冷静!紳士!今はスナイピングに集中だ!……よし!この位置ならばっちりだ!)


 太助が移動した位置は高いビルが二つ並んでたつところ。ビルの隙間は狭く、巨大化した海姫先輩は通れないが、ライフルの銃身なら入る。銃口の先には線路。しかもまっすぐこちらに向かってくる位置だ。横移動をしない相手だからまず間違いなくあてられる。おまけに線路はこちらに向かわず手前で180度ターンする。

 ミサイルはビルが防ぎ、一番怖いあの巨体での体当たりも線路の性でできない。


「先輩行きますよ!」


 太助は、レバーを操作し、スナイピングに入る。銃口をむけ照準を黒い機械の蛇の正面を狙う。


(後は出力をあげて……は!)


 出力を上げる段階になって太助は気づいた。確かに後はライフルの出力を上げるのだがその方法が問題なのだ。ライフルの出力はタッチパネルで上げるのだが、ゲームセンターの筐体では目の前のタッチパネルでするのだが、現在そこには海姫先輩が埋め込まれてる。


(おい待て!俺の記憶が正しければ操作コマンドってたしか……)


「どうした?早くライフルの出力を上げるんだ!奴が来る!上げるに方法はゲームと同じだ!タッチパネルはないが、代わりに私の体の上に同じ画面が映し出される!場所は私の左おっぱ……」


「やっぱりか〜!!!!」


 太助の叫びと共に、海姫先輩の左胸にエンゲージがが表示された。ゲージのバーを指で上げ真ん中の円を押すと出力が上がる仕組みだ。


(出来るわけないだろ!先輩のお…お…オッパイを指でって!!誰がこんな設計にしたんだよ!)


「おい!どうした!早くゲージを上げるんだ!私は手がふさがってて出来ない!」


「できるわけないですよ!」


「なぜだ?やり方はゲームと同じだ!こう!私のオッパイに指を当ててだな!くいっと回して!最後に真ん中をぐいっと押すんだ!さあ!やるんだ!」


 海姫先輩は手がふさがってるため、一連の動作を腰を動かして説明してくれた。


(ぐおおお!こんなきわどい水着を着た先輩が目の前で腰くねらしてって迫るって!いや!うれしいけど!ちがうう!!)


「出来るわけないでしょう!」


「どうして!早くしないと奴が!……は!?」


「え?!」


 言い争いに夢中になり、二人は気がつかなかった。相手がスピードを上げとっくにスナイピングポイントを通過していたことを。だがそれ以上に予想外のことが起こった。

 黒い機械の蛇が太助達に向かって攻撃してきたのだ。しかもミサイルではない。二人もミサイルならビルが盾になって安全と踏んでいたから言い争っていた。だが、奴からの攻撃はミサイルをはるかに超えていた。


「なんだ……あれ?」


 太助はそんな言葉しか出なかった。なぜなら自分達に向かってきているのはミサイルではなく巨大な黒い塊。黒い機械の蛇は180度ターンする際、遠心力を利用して、自分の最後尾についていたパーツを投げ飛ばしてきたのだ。


「逃げろ!あんなもの……みゃあぁ!そ!あ!だからそんならんんぼぅう!!」


「うおおおお!!」


 あんなものが当ればビルごと押しつぶされる。太助は海姫先輩が喘ぐのも無視してスロットルを引いた。だが、投げ飛ばされた黒い塊はスナイピングポイントに轟音と共に直撃し、粉塵が海姫先輩を巻き込んだ。


<続く>







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