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心の泣き顔  作者: ペリエ
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第4話




───秋深し  隣は何を  見る人ぞ───



その有名な俳句を少しいじって、留美はリカコの手の中にあるコンビニのレシートを覗き込み、理解不能という顔をした。



「・・・・・・裏だってば。」


そう言ってリカコはレシートの裏を見せる。


何の変哲も無いその紙切れに書かれた、少し右上がりのやや不恰好な11桁の数字をなぞる様に読み上げた留美は、ニヤニヤと確信を含ませた目でリカコを見る。


「あゆくんでしょ?」


リカコは否定も肯定もせず、僅かに眉を動かす。

無論リカコも、留美がレシートに数字を書いた主が誰かを確信した事に気付いた。

レシートの日付と照らし合わせれば、一目瞭然。

相手はあの、あゆむの他ないのだ。


「で?どんな話をしたの?」

「別にィ。普通の世間話だよ。」

「ふ〜ん。ちょっと三角関係的な事になるかもって期待したのに。」

「期待に応えられなくて悪いね。今更そんな事ありえないよ。」

「それは分からないよ!男と女だもん。何時、何処で、どうなるかは予測不可能。」

「まあ・・・それはそうだけど。あんた変わってるね。いくら2週間っていっても一応付き合ってた男の話だよ?それを人事みたいに言って。」

「ってゆーか人事だよ。大体付き合ってたっていってもHもしてないし。」




───ああ。そうだった。




リカコはこんな会話はもう何度目だろうと思った。

よく思い起こせば、自分とカズヒロは出逢ったその日に事を済ませている。

もしかすると、ソレだけの関係なのかな?と。

そう思うのも、カズヒロは一般的に彼氏が彼女に対してする様な事をしてくれていると思うが、リカコは自分の方はどうなんだ、と聞かれたら正直何も思いつかない。

今までマジマジと考えた事は無かった。

しかしこれ以上考えても何だか、面倒な気がしてリカコはそれを打ち消すかの様に、かぶりを振る。



軽く溜息を吐き、もう一度あの日あゆむが、別れ際に渡してくれたレシートの裏を見直した。

丁寧に丁寧に、そこに並ぶ数字を慎重になぞる。

まるで不確かなものをしっかりと形にする様に。




───あゆむは一応と言ったけど、何のための一応なんだろう。

  一応とかいう状況がこの先あるとも思えない。

リカコはそうは思ったものの、


「まっ。一応ね。」


と呟いてあゆむの携帯の番号を自分の電話帳に加えた。











何日かしてリカコは久し振りにカズヒロの部屋へ来ている。

1週間も空いたわけでもないのに、何だか懐かしく感じる部屋。

今までそこまで頻繁に会っていたわけでもなく、週に一度デートしてホテルに泊まり恋人らしい事をする。

そんな付き合い方を2ヶ月ずっと続けて、そのリズムが崩れた事はない。

大きな波風が立つ事もなく、良く言えば平穏な、悪く言えば単調な二人。

リカコはそんな感じに些か飽きを覚えていたのだが。


「リカは昔あゆむの事が好きだったんだって?」


突然の質問に心の準備が出来ていなかったリカコは言葉を探した。


───あゆむのヤツ、やっぱりペラペラしゃべってんじゃない。

 少しでも見直したあたしがバカだった。



何か上手な答えはないだろうか。

しかし下手にはぐらかして、疑い深いカズヒロには怪しまれる気がしたリカコは敢えて肯定した。


「ま、まあね!ほらあいつの家お金持ちだし?クラスの女の子みんな狙ってたわよ。なんたって玉の輿だもん!」

「金狙いかよ。女って怖いな!」


カズヒロの目を欺くにはそんな動機を言うしかない。

無論リカコはこれっぽっちも玉の輿がどうとか、お金がどうとかなど心にあった訳ではない。

嘘が苦手なリカコは、こう答えるのがベストだと思ったのだ。


この場にあゆむが居ない事をリカコは感謝した。

例え嘘でもあんな言葉なんて言いたくなかった。

それをもし本人に聞かれたら、ジョークだとしても人格を疑われかねない。


それにしてもあゆむもあゆむだ。

カズヒロに昔の話をしたのなら、そう教えてくれれば良かったのだ。


───嗚呼、薄情な男。


そうムスッとしたリカコは、この数時間後に真実を知る事となる。











その日の晩、リカコはどうしようか迷っていた。

今晩はいつもより早くお店をはねて家に帰ってきている。

留美はお客さんと食事に行くとか。

いわゆるアフターというものだ。

そんなわけでリカコは暇を持て余し、あゆむに苦情の電話を入れようか迷っているのだ。

暇だから文句を言うなんていうのも何だか口実の匂いがプンプンしているが。

それでも昼間のあのカズヒロの言葉は気になっていて、近いうちにはあゆむに問うつもりでもあった。

リカコは数分考えこんだ結果、やはりあゆむに電話をする事にした。


五回程コールした時、あゆむの眠たそうな声が聞こえた。

寝ていたのかもしれない。

悪い事をしたな、と反省する。

しかし眠っていたからといい、ここで掛け直すと申し出るのは二重の失礼になる。


「ごめんね。寝てた?」


ありきたりな断りをする。


「大丈夫だよ。」


そう答えたあゆむの様子はいつもとは明らかに違っていた。

少し元気がないようにもとれる。

リカコは気が引けたが、もう一度謝ってから例の件について聞いておく事にした。


「・・・あのさ、」

「頼みがあるんだけど。」


一呼吸おいて切り出したリカコの言葉に覆い被さる様にあゆむは遮った。


「タクシー代出すから今すぐ来てくれる?速攻で。頼むわ。」

「えっ、ちょっ、」


あゆむはまたも、一方的に電話を切ってしまった。

この前といいこれで2回目だ。

さすがのリカコも多少ムッとしたが、今回はちょっと深刻なあゆむの様子が引っかかり、急いで家を出る。

タクシーは走りながらつかまえるつもり。

リカコは仕事から帰ってそのままの格好で出たので、走りにくいヒールを履くしかなかった。

こんな事になるならとっとと着替えておけば良かった、と顔をしかめると向こうからタクシーが来たのが見え直ぐに手を上げた。

乗り込んだリカコは運転手に行き先を告げ息を吐く。

あゆむの家までは約10分程度だろう。

窓の外を見ながら考えてみる。


───あゆむ、何か元気なかったな。

  何処か具合でも悪いのかな。

  風邪かな?あっ、だったら飲み物とか買って行った方がいいかも。



「あっ!!運転手さん、ストップ!」


瞬間、運転手の肩が通常より10cm多めに上下した。

もしもこの運転手がさっきまでしゃっくりに悩まされていたなら、どんなにリカコに感謝する事だろうか。

そう思える位、リカコの声は唐突で轟然としていた。

あゆむの家まではあと十数メートルといった所だろう。

つと、コンビニが目に入ったのでストップをかけたのだ。

リカコは「ごめんね。」と言いお釣りを貰わずにタクシーを降りる。

自分なりの詫びのつもりだった。



コンビニに入り清涼飲料やゼリーなどを買い込み、すぐそばのあゆむの家まで走る。

あゆむは実家暮らしだが、両親はいつもといっていい程不在が多い。

しかし一応あゆむに電話をかけて到着を知らせて、忍び足で二階のあゆむの部屋へ上がる。

一段一段階段を踏みしめて、あゆむとの距離を縮める。


二階へ上がるとうっすら光が零れている部屋があり、中からは微かにTVの音かと思われる笑い声が聞こえている。

軽く二度ドアをノックすると、直ぐにあゆむの返事が聞こえた。

ノブを回しながら、さっきまで強い酒で、体中を押しつぶされそうな熱が蝕んでいた事を思い出す。

その勢いが後押ししてくれなければ、今自分はこの部屋の前には立つ事はなかったかもしれないと苦笑した。



少し間をおいてリカコはあゆむの部屋に入った。


二十畳程の部屋に、乱雑に脱ぎ捨てられた衣服。

それとは裏腹に意外と整頓されたTV周りや、香水などが置かれたローボード。

自分の知らない微かな甘い香りに鼻腔をくすぐられたリカコは、軽い眩暈に胸が早鐘を打った。



「ごめんな。熱でだるくてさ、家誰も居ないし頼める人も居なくて。」


あゆむは部屋の奥ばった場所に置かれたローベッドから半身を起こし、リカコに照れくさそうな表情を見せる。

頼られた事が嬉しかったリカコは首を横に振り、買ってきた清涼飲料などを勧めた。

つとテーブルに目を向けると、グラスやペットボトルなどがなく、大分長い時間水分を取って居ない事が窺われる。

あゆむは受け取ったミネラルウォーターを、一気に半分以上飲み干して軽い溜息を吐く。

やっと生きかえった様な目をリカコに向け、派手なスーツに包まれた姿をゆっくりと見た。


「高橋、夜勤めてんの?」

「うん。高校やめてすぐね。こんな格好してると同級生に見えないでしょ?」

「・・・馬子にも衣装だな(笑)」

「ふんっ、すーぐ人をバカにするんだから!」

「はは、ムキにならない!でも勿体無いな。何で高校辞めたんだよ。」


リカコは一応トップの進学校へ入った。

というのも、元はリカコもそんなに勉強なんてものはあまり好きではなかったが、小学校の頃から成績の良かったあゆむに負けたくはなかった。

成績でも、スポーツでもなんでもいい。

少しでも近づいて、あゆむに一目置かれたかった。

好敵手としてでもいいから、少しでも自分を見て欲しかった。

あゆむはリカコにとって、いろんな意味での目標であったのかもしれない。

しかしあゆむは中学の後半あたりから、ネジを少しずつ緩めるように頑張らなくなって、いろんな事に適当な対応をしているのが露骨に見え出した。

高校進学についても、昔からあゆむを知る人達が予測・期待していた様な結果にはならなかった。

リカコからすると受験しなかったのはわざとにしか思えなかったが。



「あ・・・あゆむこそ何で進学しなかったの?あゆむだったら大学もいいとこ行って、お父さんの会社継げたじゃん。」

「・・・・・・期待されるのに疲れたから。本人の意思を無視して勝手なイメージ作られて、エリートだとか将来有望だとか面倒になったんだよ。」


リカコは何も答えられずにいた。

同じような環境で育ち、似た様なプレッシャーを浴びてきた自分はそんなあゆむの気持ちも解る。

勿論そこから生まれる反動でさえも。

それにも関わらず、自分自身もあゆむに対してある種の期待に似たイメージを作り上げていたからだ。

気まずくて思わず俯いてしまう。



「・・・で?何か用事があったんじゃねーの?仕事から帰ってそのまんまで電話かけてきたって事は。」

するどい指摘に再び俯くリカコにあゆむはクスリと笑う。

「まっ、そのおかげで飲み物にありつけたんだけど!で?何だったんだ?」

「ああ、カズヒロが・・・・・・。」

ふとそこまで言いかけてリカコは無性に恥ずかしくなってきた。

昔の話で、いくら過去にはこだわらないと言っても、自分の口からは聞きづらい事である。

「・・・・・・なに。」

「・・・・・・あ、あのさ・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「あたしが・・・・・・。」

「・・・・・・だからなに。」

じれったいくらい言い淀んでいたリカコだが、あゆむの苛ついた声でようやく聞く決心をした。


「・・・あたしが昔・・・、あゆむの事好きだったんだろ?って。カズヒロが。」

リカコの心臓は大きな和太鼓を打ったかのような鼓動を刻む。

何だか五年の時を経て、改めて告白しているようで恥ずかしい。


「・・・・・・で?」

あゆむはそんなリカコの様子に気付いてかそうでないのか、少しも動じる事無く平静な風である。


「その事、あゆむがあの日カズヒロに言ったのかなーっと。」

「言ってないよ。言うわけねーだろ、そんな事!大体カズに聞かれたとしても普通言わないんじゃない?」

「あゆむ、普通じゃないから。」

リカコは半ば吹きだしそうなのを必死で堪え、含み笑いで言うとあゆむにも伝わったようで、口角をやや持ち上げた。


「失敬だな、君は。変態とは言われるけどその辺の常識はあるつもりだけど、僕は?」

「・・・・・・じゃあ、何で知ってたのかなあ?カマかけたってのも無さそうだし、誰かに聞いたって感じだったんだよね。」

「・・・・・・・・・藤井・・・忍かもな。カズとは顔見知りなんだよな。」

「・・・・・・・・・。」

久し振りに聞く級友の名前に、またまた世間は狭いものだと溜息を吐く。

何処で誰と誰が知り合うのかなんて判らないものだ。

全く接点が無いように見えても、何処かで繋がっている。


藤井忍の名を口にしたあゆむも、それを聞いたリカコも、さっと表情を曇らせる。

少なくともリカコには因縁めいた人物でもあるし、彼女もそう思っているはずだ。

まだ子供だったあの頃、人を憎むと言う事を教えてくれた貴重な子───藤井忍。

今更になって、また関わるだなんて夢にも思わなかった。



「ねえ、何処でカズはそんな出会いをするの?しかもあたしの同級生とばっかり。あゆむだってそうじゃん?」

「俺?俺はどうだったかなー?何かパチンコ屋で友達になったような記憶はあるんだけど、忘れた!」

「あれ?カズヒロもパチンコするんだー。」

「・・・・・・・・・本当に何も知らないんだな。前も言ったけどそんなんで付き合ってるって言うわけ?カズ可哀想だな。」


痛いところばかりつかれていたリカコはあゆむの前でこれ以上嘘を吐けなかった。


───カズヒロを好きではあるが、それは恋愛感情とは違う事。

───今まで考えた事はなかったのに、最近になってそれについて考え始めた事。

───独りで過去に縛られ拘っていた事。


いろんな事を、まるで空白の二年間を埋めるようにリカコの胸中にある事をあゆむに語った。

終始あゆむは、相槌をうったり頷いたり、また反論したり時には自分自身の話までしたりした。

リカコの中で止まっていた時間が春の雪解けのように音をたてて動き出した。










ひとしきり二人は思い出話を交えた近況報告のような話をした後、いつの間にか夜が明けていた事に気付いた。

晩秋の夜は長く、凍てつく冬の寒さを呼び寄せるかのように体を突き刺す風が吹く。

そんな中をコートも着ずに出てきた事をあゆむは「おっちょこちょいだ」と笑うが、きっとそこに含まれる一生懸命さが伝わって照れくさかったに違いない。

リカコは窓の外に目をやり、はにかんだ顔をあゆむに気付かれないように背ける。

認めてはいけない想いを拾いあげてしまいそうで、怖かったからだ。



「熱・・・下がった?」

「ん〜どうかな?」


あゆむがリカコの冷やりとした小さな手を、彼の額に引き寄せあてがった。

熱は下がったみたいだったが、その温度が額に触れた手を伝わりリカコの頬を紅潮させる。


「高橋、顔が赤いよ。お前の方が熱あるんじゃないの。」

そう言ったあゆむはリカコの額に手を当てる。

「おわっ!あっつ!ちょっとマジで熱測ってみ。」

言い終わる前に立ち上がったあゆむは、リカコをはさんで向こう側にあるテーブルの上に置かれていた体温計を渡す。

やはり手を伝って熱が伝染ったのだろうか?

そんな少女漫画的な考えを巡らせながら、リカコは自分の体が汗ばみ、少しずつ気怠くなっていく感じがした。

ふうと息を吐くと電子音が鳴り、ちらりと目をやると「37℃」とある。

平熱の低いリカコにしたら、微熱程度では済まされない。

おそらく昨晩は酷く冷えたのにも関わらず、薄着で外を歩き尚且つ風邪をひいたあゆむの側で一晩も過ごした所為だろう。

熱を測ってしまうと余計に怠い気がするのは何故だろう?

気付かない振りをしていれば良かったとリカコは後悔する。

あゆむはさっきまで自分が入っていたベッドに、横になるように促したがさすがにリカコもお年頃で男友達のベッドに入るという行動に躊躇する。

そんな躊躇いもよそに、あゆむは半ば強引にリカコをベッドに押しやる。

そしてスウェットのような服を引っ張り出し、着替えるように言った。

あまりにも懸命にしてくれるので、リカコも断るタイミングを失しあゆむを一瞥した。


「何だよ。」


「・・・・・・見ないでよね?」

熱が高い割りに妙に冷静だった。

「・・・見るかっ!」

そう答えたあゆむは背を向け部屋を出ていこうとした。



───ピンポーン



部屋を出ようとした足を止め、窓からすぐ真下にある玄関の方を見る。

その直後にさっと身を引き、リカコの方に向き直った。

「あーっ見ないでって言ったでしょ!」

「カズが来た。」

「は?」

「お宅の彼氏!」

「えー!?タイミング悪い。居留守使えないの?」

「ガレージに俺の車停まってんだからバレるだろうが!」


リカコの心臓は早鐘を打っていた。

勿論悪い意味で。

あゆむもそうだった。

誰にとっても現状況は笑えないシチュエーション。


「どう・・・説明する?」


リカコはあゆむの貸してくれたスウェットに着替えたが、サイズも男物だと丸分かりだし如何にもお泊りして借りてます状態。

それ以前に此処に居る事自体がおかしい。あやしい。いかがわしい。と思われるはず。

居留守は出来ないし、玄関先でカズヒロを待たせておき、あゆむが出て行き居なくなったのを見計らいリカコが出る、というのは怪しまれる。

あゆむが家にカズヒロを上げない理由がないからだ。

カズヒロはきっとそんなあゆむを見て何かを隠したがっているのに気付くだろうし、追求し始める。



お互い様々な案を出し合った結果、とんでもない策を出したあゆむにリカコは青ざめた。



「そ、そんな事してバレたら大変だよ。」

「大丈夫だって!いつもカズが俺が寝てる時に遊びに来た場合を再現するだけだから。」


───あゆむの家は無防備な事に、誰かが家に居る時はいつも鍵が開いている。

カズヒロもそれを知っていて、何度か呼び鈴を鳴らしたら一声かけながら二階へ上がってくるらしい。

普段の習慣が悪影響を及ぼした結果である。


「ぼちぼち上がってくるだろ。」


あゆむの言葉で躊躇う時間の余裕はない事に気付いたリカコは、自分の着てきたスーツを抱えベッドの足元に隠してから、ベッドの中に潜り込んだ。

幸い秋も深かったため毛布やら、羽根布団やらでボリュームがあり、小柄なリカコがベッドの中に潜んでいる様子を外側から見て窺い知り難いのを確認し、あゆむもそのベッドへ身を滑り込ませた。

リカコはこの状況に高鳴る胸を押さえた。

そうでもしなければ、鼓動が聞こえてしまいそうだから。

あゆむが寝たフリをするのでリカコも下手に動く事は出来ない。

こんな作戦は馬鹿げてると思ったが、他に自分は良い案があったわけでもないから、致し方ない。



「おーい。あゆむーまだ寝てたかー?」


カズヒロの如何にも朝には強いというかのような爽やかな声が聞こえた。

リカコはベッドの中で、固く手を握り締めひたすら祈る。










第四話  完

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