レスポンスは速い
目指すヤンソン村までに魔除けの野営地は3ヵ所あるようです。
夜になるまでだと、以前の私の走力であれば一番近い野営地まで行くだけでヒィヒィ言う所ですが、快調に馬並みの速さで駆ける今の私なら村に一番近い野営地まで一気に行けそうっ。
走りつつ夕日で照らした地図を見ながらそなことを考えていたのですが、
(我が使徒レルクよ、せっかくじゃから途中の魔物狩りもしておくんじゃ。ついでに路銀も不足じゃろう? 素材も集めるんじゃ!)
前触れ無し、ポポクレス神様。というか私のプライバシーどうなってるんでしょうか?
(ポポクレス神様、デートはどうしたんですかぁ?)
(何時間経ったと思っておる? 我はデートばかりに、かま掛けておれんのじゃ!)
(・・まぁ、いいですけど)
(うむ。道の近くでフラフラしておる、その内やらかすであろう凶悪な魔物どもを先んじて排除なのじゃ!! マッスル! マッスルっ!!)
(ホントにやるんですか?)
素手だし、殺生だし、やりたくはないですっ。
(弱っちいまま竜や巨人に挑むつもりか? ボンビーなまま、毎日煎り豆と野草茶ばかりで旅するつもりか? そんな苦行僧ライフは流行らんのじゃ! もっとアグレッシブに、冒険をエンジョイしちゃうのじゃっ!)
(・・・)
基本、そういう感じですよね。
(わかりましたよっ。ただ、放置しておくのが危険そうな魔物に限りますよ?)
(任せよ任せよ~、ナビしてあげようではないかっ。我程、面倒見の良い神は早々おらんのじゃぞ? 毎日、感謝感謝のマッスルに励むことじゃ!)
(なんですか『感謝のマッスル』って!)
押し切られましたねっ。予定を変更し道中で魔物狩りをすることになりました。はぁ、なんだかなぁ・・。
というワケで数時間後、普通に夜になっていましたが、結局2番目の魔除けの野営地で私は泊まることになりました。
もう土まみれ、草まみれ、魔物の体液&肉片まみれです。
野営地の東屋の近くにカンテラを置き、虫除けを焚いて、取ってきた大きな葉を重ねた上で鉈とノコギリとノミとトンカチとナイフを使い、大雑把に回収していた魔物から採取した素材をポポクレス神様に言われるがまま、売り易い用に初期加工を済ませ(またそこそこグロいです・・)、ようやく休める形になりました。
『異常に体力がある』からなんとかなってますが、気力がもうヘロヘロですっ。
「終わったぁ」
私は炉に火を灯している、東屋の石の床に寝転がりました。
(我も疲れたのじゃ。解体の指図まで手伝いハメになるとはっ。もう寝るから明日は適当にアレして村まで行って、あれこれをアレしておくんじゃぞ?)
(急に雑ですねっ。・・まぁ、いいです。それなりには対応しますよ、お休みです。ポポクレス神様)
(お休みマッスル!)
(・・・)
隙あらば挟んできますね。なんか、ドタバタしていたから、そもそもなんのつもりで私を鍛えるのか? とか、他にも色々、聞きそびれてしまいました。
「どーなってしまうんでしょうか? 私は」
ポツンと呟き、初見のはずですが没個性過ぎて見たことある気がしてしまう、簡素な東屋の天井を見詰めていました。
信じ難いですが、夜明けと共に目覚めると私は完全回復していました。頑丈っ!
「1、2っ、3、4!」
体操をし、身支度を整え、適当にスープを作ったり、神父様からもらったパンの残りや干し葡萄で朝食を取り、火の始末等を済ませ、マントを羽織り、私は野営地を出発しました。
朝イチで馬並みのダッシュですっ。
そのまま、地図通りならもう少しでこの辺りの基準からすると大きな街道に合流する、という所まで来たのですが、
「っ!」
魔物が争う気配! 結構、強い、人らしき気配もっ。昨日の魔物狩りで感覚が鋭くなっていた私は直感しました。
「ブレッシング!」
それなりに懲りてるので、迷わず鞘からクレリックワンドを抜いて運気を上げる魔法を自分に掛けてから野外道を離れ、小石や土の多い、気配のした方に進みました。
「オラぁっ、来いや! 来いや来いや~っ、俺は効いてねぇぞっ! 肩凝り治っちまったぜ! スッキリぃ~っ!」
妙に口が回ってる感じですが、だいぶ疲弊した様子の褐色の肌の鎧を着た青年が、樽ぐらいの大きさのブヨブヨした液状モンスター『ラージスライム』の群れに囲まれていました。
私は窪地になっている所からこっそり顔を出しています。
「これは、マズいですね」
青年の武器は無難にロングソードと盾、察した技量からすると万全なら1人でも対処できそうです。
しかしなんらかの経緯で青年はグロッキー気味。
有効な持ち道具が無いのかも? 持ってるならここまで群れを引き付けて、伸ばした液状の身体で小突かれたり、吐き出された消化液を慌てて回避し続けたりはしないでしょう。
うん、彼は普通にピンチです。ここで、
(ふぁあ~っ、おはよう我が使徒。なんか神力が高まっておるが、どうしたんじゃ? お? なんじゃ? ・・ほほう、あヤツのマッスル、中々面白い)
(なんですか?)
(それなりの腕前の『リアクション力』と『ツッコミ力』を持っておる! お主はノッてこない時はダウナーな反応が多いから、心許ないとは思っておった。スカウトするのじゃっ、レルクよ!)
私、ノらない時、ダウナーなんだ。
(『面白い』って、文字通りの意味なんですね。・・ま、見捨てはしませんよ? 多少、マッスルにされてもっ、私は聖職者ですから!)
破けるといけないので、魔除けのマントを脱ぎ捨てました。
(レルクよ! 昨日の内に覚えたっ、飛び付きゴッド・クロスチョップ、回転ゴッド・クロスチョップ、魔力誘導ゴッド・クロスチョップの合わせ技じゃっ!)
(しゃーっ、んちゃーっっ!!)
私はテレパシーで気合いを入れ、両腕を交差して構えました。神力がっ、漲るっ!!!
「なっ?!」
「っ??!!!」
青年も、ラージスライム群もこちらの異常なパワーに気付きました。
「飛び付き、回転、誘導、ゴッド・クロスチョップ・・」
低く構え、踏み締めた地面がヒビ割れます!
「でぃあーーっっ!!!!」
蹴った地面を炸裂させっ、回転し、自在誘導できる飛び付きゴッド・クロスチョップを放ちました!! 多少、狙いが雑でも、ブレッシングの効果でイケるはずっ。
ドゥパパパパパパッッッ!!!!
周回するようにしてラージスライム群を纏めて粉砕しっ、土煙と火花を散らして神力を纏った脚でスライディング気味に着地しました!
「えーーーっっっ??!!!」
度肝を抜かれた様子の鎧の青年。
(おはマッスルッッッ!! 我の声は聴こえておるな? お主、この娘の旅の仲間にならんか? 今なら漏れ無く『後の世に語り継がれる伝説の英雄の1人』に成れる権利を与えようではないかぁっ!!!)
「腹話術っ?! なんでだぁーっ??」
「違います」
(違うのじゃっ!)
そりゃそうだとも思いますが、取り敢えず2人でツッコんでおきました。
そして確かに、レスポンスは速いようですね!




