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最強クロスチョップを会得した僧侶っ!!  作者: 大石次郎


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幽霊船の邪宝 4

虹の瀬の鍵を回収した私達は一旦、漁村に戻りました。アヨーさんを村に1人だけいらっしゃった魔法医の方に診てもらう必要がやはりありました。

診察と治療の結果、一晩安静にすれば落ち着きはする、とのことでした。

私達が漁村が離れたあと、ケルプウォーカーの未回収の遺骸や体液等に寄せられて、いくらか他の魔物が漁村にちょっかいを出したそうですが、これは衛兵隊と自警団で撃退できたようです。

周囲を探った冒険者ギルドの増援隊は、いくつかの魔物の群れを確認、掃討したようですが特別『首魁(しゅかい)』という程の個体は見られなかったようです。

それでも想定される邪宝の影響は強まっているとみられ、私達は夜明けと共に人魚島へ向かうことを決めました。

バカンス的なクエストのはずが、思ったより性急なことになりましたね・・



夜が明けて、私達は魔法医の方に付き添われたアヨーさんと漁村やギルド、衛兵隊の方々と共に漁村から少し離れた浜に来ていました。


「岬の洞窟のことを把握しているのかもしれない。今日は一段とよく見える・・」


朝陽を受けながら、アヨーさんは目を細めました。

沖に、奇妙な靄が掛かっているのですが、その先にうっすらと島らしき影が見えました。


「あの靄によって閉ざされているんだ。今は一部の水棲種族としか交流が無いようだな」


村長さんが少し億劫そうに言いました。長期に渡って交流が無さ過ぎて、遠い認識なんでしょうね。


「代替わりしているだろうが、人魚の女王に我々とギルドの親書をしっかり渡してくれよ?」


2通渡されている私に派遣されてる衛兵隊長さんが言ってきましたが、はっきり言ってややこしいです!


「ギルドはともかく、領主様はどうでしょうか? 大体、コレ、すぐ届きましたけど、代筆ですよね? 誰が書いたんです?」


「うっ・・俺だよっ!」


えーっ?


「隊長さんでしたかっ、いいんですか?!」


「よかないだろうが、水晶通信で書けって言われたんだからやむを得ないっ。漁村の牧師さんと役場の学のあるヤツに校正と監修をさせたから大丈夫だ!」


「もはや誰の意向の親書かよくわからないですよっ」


「いーから持っていってくれってば!」


「う~っっ」


知らないですからね!


「レルクちゃん、オジサンとじゃれてないでアヨーお爺さん、どうするの?」


「別にオジサンとじゃれてはいませんがっ?」


完全によく知らない衛兵のオジサンの方ですよっ?

まぁ、それは置いておきます。私は親書2通をバトルで度々破損しては直すを繰り返してもはや原型が無い神父様の収納ポーチにシュルっとしまい込み、軽く咳払いをしてアヨーさんの方に向き直りました。


「アヨーさん・・行きましょうか、島に」


「いいのかいっ?」


「はい、ここでこうして長い年月、靄の向こうの島を見ていたんでしょう? 僧侶らしからぬことを言っているのかもしれませんが、貴方の最後の冒険に付き合わせて下さい」


「ありがとう、ありがとう・・」


アヨーさんは私の右手を取って泣いてしまいました。



私は靄の島を望む浜辺に立ち、虹の瀬の鍵に魔力を込めました。七色に輝き、砕け散る鍵! すると、


ザリザリザリザリザリ・・・・ッッッ


海面にガラスの珊瑚のような素材でできた『橋』が靄の向こうの島まで掛かりました!


「お~、いいな! 映えるっ」


「環境を利用した魔法のようだが、長く持ちそうには見えないな」


「急ギマショウ!」


「爺さんは問題ねぇかぁ?」


「ええ、なんとか」


アヨーさんは昨日、ベルミッヒさんに改造して取り付けてもらった『3号さんスーツ背部の座席』に座ってもらっていました。


「それでは! ゆきましょうっ。皆さん行ってきます!!」


「気を付けてな!」


「親書忘れないでくれっ」


「幽霊船の攻略は無理しなくていいぞ?」


「アヨーさん! いい旅をっ」


「アヨー!! バカ野郎~っ」


「アヨーっ!!」


村民の中には泣いてアヨーさんに手を振る人も少なくなかったです・・

私達はガラスというより砂糖菓子のようにサクサクした踏み心地の珊瑚の道を進んでゆきました。


「・・聞いてるだろうが、そう変わった話でもなかったんだよ」


昨日より一回り小さくなった気がするアヨーさんは誰にでもなく語り始めました。


「浜にね、海の魔物に襲われて怪我をした彼女が流れついて、こっそり匿って手当てをして、私達は他愛なく恋に落ちて、それもいつか、明るみになって・・別れる時がきた。それだけだよ。山無し、落ち無し。私より古い時代にもしばしばあったようだし、なんなら、私より若い世代の村人が他の人魚と恋に落ちたりもしていたよ。数は、少なくても」


アヨーさんは段々近付く島の靄を見詰めていました。


「どこにでもある話。それでもね、私の、人生で、唯一の眩しい光だった。それを追い掛けて、追い掛けて・・それ自体が目的になってしまったのかもしれないね」


「手段が目的になっても、元の目的の価値は落ちたりしないぜぇ」


「ありがとう、君は見た目が怖いのに、優しいことを言ってくれるね」


「別にっ! そんなんじゃねぇぜぇっ」


「照れてる照れてる。フフッ」


赤面してしまったノライオさんをからかうモカミンさん。アヨーさんはそれを3号さんスーツの座席の上から、穏やかに見下ろしていました。

目の、力が抜けている印象があります。時間は少ないのかもしれません。

私はそれとなく皆に促し、靄の結界に囲われた人魚の島へと急ぎました。

船で渡る距離を歩くので中々の距離です。



靄の中は晴れていて、人魚島の浜辺は海のエレメントの非常に強く所々が煌めき、浮遊水棲生物が多く漂い、樹木や草花の替わりに陸珊瑚や陸生海藻が生い茂る、磯と香木の匂いが混ざったような環境でした。


「どうも、初めまして」


私は緊張しながらも挨拶しました。

魚の下半身とよく見れば首にエラ、指に多少の水掻き、ヒレのような耳を持つ、陸では浮遊する人型の種族、マーピープルの方々が手に銛等の武器を持って浜で待ち構えていたのです!


「・・お前、姉さんのっ、アヨーか? 今さらっ」


リーダー格らしいマーピープルの青年が降下し、輝く水飛沫と共に履き物まで構成させて脚のある姿に変化して着地してきました。


「君はゾラ君かい? すっかり大人になったけど、やはり、生きる時間が違うんだねぇ」


「人間族と一緒にするな。姉さんに会いにきたのか?」


「いやあの、私達は幽霊船の方を! アヨーさんは、どうしても、とのことで」


マーピープルの弟さん? はギュッと眉をしかめました。


「遅い、遅過ぎる! 姉さんは・・ダイオズゥーマの船を再封印する為にっ、死んでしまったよ」


「え~っ?!」


突然の話に私は安易に声を上げてしまい、慌てて振り返ると、


「ふぅっ・・・」


3号さんスーツの座席のアヨーさんは気を失ってしまいっ、


「おっと」


座席から落っこちた所をメハがキャッチしましたっ。


「ヒール!」


取り敢えずヒールっ!


「なんだ? 話を聞いただけで気絶するヤツがあるかっ、歳を取ったにしても脆弱」


「この年寄りは末期の腫瘍で長くないんだ」


「ピョ!」


「何ぃっ?! 先に言ってくれっ、なんだ? 俺が悪いのか??」


慌てる弟さん。


「あの、それはそれとして親書を。領主様の方は領主様ではなく、その辺のオジサン達が書いたので一旦保留しておいて下さい」


ここぞとばかりに親書を弟さんに押し付ける私っ。


「親書? オジサン?? 待てっ、整理しろっ、まずお前らなんだ?!」


「そこからですかー」


「説明はダリぃなぁ」


「ここって、どっか御飯食べるとこあんの? フルーツっぽい物がいいわ」


「何っ? 幽霊船目的じゃないのか??」


少々浜辺でわちゃわちゃしてしまいましたが、取り敢えずアヨーさんを休ませなければならないので、マーピープルの方々の郷にゆくことになったのです。

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