鳥葬のオブリメッガ 後編
ワーイーグル族の魔人、鳥葬のオブリメッガの結晶像を20体(念入り!)の天使型ゴーレムさんが囲んでいます。
私達は頷き合い、構えました。
「フライト、プロテクト、レジスト」
「ブレッシング! お願いします」
「解除ぷろぐらむヲ実行シマス」
補助魔法を付与し、天使ゴーレムさん達がオブリメッガの封印を解きだすと・・
「出でよ」
カン高い声でオブリメッガが命じた直後! 足元に発生した魔法陣から数百体の下等な鳥系の魔物達が噴出し、為す術もない天使ゴーレムさん達を『鳥葬』してゆきましたっ。
「展開っ! 爆ぜろ!!」
ベルミッヒさんは全ての球形爆雷ゴーレム達を迷わず全機オブリメッガの眷属群に放って、同時に大爆発させました!!
ドドドドドドドドドッッッッ!!!!!
天井が抜けてしまいましたが、二百数十体は仕止めっ、残百数十体は二手に分かれてベルミッヒさんとメハに迫りました!
分かれた眷属の向こうから現れたオブリメッガ本体は私に突っ込んできますっ。
ネスローザよりもタイマン思考ですねっ!
「クゥアアァーーーッッッ!!!!」
「しゃーっ! んちゃーーっ!!」
鉤爪の足のドロップキックとゴッド・クロスチョップで激突しっ、そのまま互いに蹴りと手刀を連打しながら抜けた天井を越えて上空に飛び出してゆきますっ!!
「クゥアッ! クゥアッ! クゥアッ!!」
「わぁっ! わぁっ! わぁっ!!」
眷属群の始末がつくまで、私が引き受けた方がいいでしょうっ。特にベルミッヒさんを直に狙われるとマズいです!
「クゥアアァーーーッッッ!!!」
「でぃやーーーっ!!!」
蹴りに見せ掛けて顔面に『掴み』を仕掛けてきた右足を払いっ、左足で半回転の胴回し蹴りを側頭部に放ってやりましたが左手で受けられました。ニッと笑うオブリメッガ! やりますねっ。
その悪徳の史実、邪悪な力、それでもなおっ、貴方が強壮なマッスル神レスラーであることだけは認めざる得ないですっ!
互いに弾き合い、再度蹴りと手刀の打ち合いになったのですが今度は間合い取って、翼による斬撃や拳打を混ぜてくるようになりましたっ。
私もフォースショットの魔法や神力の刃を拡大させた斬撃で応戦します!
「クゥアクゥアッ・・また断罪に来たのか? 八百数十年っっ、ボザの悪しき『獣人奴隷』の罪っ、俺の『目覚め』は必然だっ!!」
「っ!」
確かに、ボザ国はかなり非道な獣人奴隷制度を採用していたそうです。
「しかしっ、貴方は人間族だけでなく、王都の獣人族まで皆殺しにしましたねっ?」
「クゥアッ!!」
『怪音波』攻撃を放ってきました。
「くっ」
伏せげますが、これは回避し辛いですっ。
「永過ぎたのだ。何もかも。歴史の中、獣人達はいつしか隷属に慣れきり、『公正奴隷契約』を受け入れた」
「公正奴隷契約・・」
確か、当時の国際標準労働規格の奴隷契約です。10年以内の労働で任意で奴隷契約を解除できる条文があったはず。
「少しずつ改善していたなら」
「クゥアァーーッッ!!」
連続外回し蹴り『旋風脚』ですねっ。レスリング以外も使うようです。鉤爪が利いて、避け難く、受け難いっ。
神力を乗せたガードを超えて両手に裂傷を負わされました!
「改善だとっ? 譲歩する理由がどこにあるっ。俺は訴えたのだ!『なぜ決起しないのか?』とっ。ヤツらは言った。『争いは何も産まない』『条件が悪くなる』『他国の奴隷狩りに口実を与える』『時間が解決する』と」
なんと理知的な。
「それは」
「ふざけるなっっ!! クゥアアァーーーッッッ!!!!」
爆発的に闇の神力を高めっ、翼をはためかせて急加速して間合い詰めて両足で掴み掛かってきましたっ!
私は必死で左足のフットアイアンクローを払いましたがっ、バキィッ! 右足の一掴みで左の神力でガードしたはずの脛の骨を枯れ枝でも折るようにへし折られましたっ。
「っ!!」
悲鳴を上げたくなる激痛ですがっ、このままでは捻り千切られてしまいます!
(レルクっ!)
「でぃあっ!!」
私は渾身の右手の神力の手刀でオブリメッガの右足を斬り落としましたっ!
「クゥアッ!!」
互いに弾き合いっ、また距離が取られます。
「ううっ、・・ヒール!」
手を添え痛過ぎますが骨の形を整えて最低限度骨折を回復魔法で直しましたが、腫れ上がり、脛から下のどころか左の膝まで感覚がありませんっ。連打の影響もあって神力が残り少ないですっ。
(落ち着くんじゃレルク、向こうも効いてるんじゃ!)
オブリメッガの斬り落とされた傷口は結晶化していました。
「戦う誇りを棄てたっ。万死に値する! 打算にまみれたっ。万死に値する! 外道どもに恐れをなしたっ。万死に値するっ! 己の責務を子孫に押し付けたっ。万死に値するっ! 俺は理解した。『この狂った制度はこの者達の愚鈍から発生した物だと』っ!! この負の行いは形を変えて繰り返されるっ! 俺はその『再現性』を滅ぼすと神に誓いっ、大いなる祝福の元! 実行したのだっ!! 見よっ、偽りの神に仕えし者! 200の年月を経てなおっ、この大地は静かに清らかだっ。・・この地の『悪』は俺が滅した」
眼下には瓦礫と潮風に晒された不毛の平地が広がっていました。誰も、いないのです。
「オブリメッガ・・もうっ」
哀れな人。私は涙が零れました。遺跡の方では一際大きな炸裂が『2つ』起こります。
「貴方の、屁の突っ張りは、結構です」
「レルーーックっ!!!」
「待たせたぜっ!!」
仲間達が来ました。オブリメッガは怪音波を放ちましたが、『音波』をメハは切断して払い、ベルミッヒは遠距離から熱線魔法を正確に開けた嘴に撃ち込みましたっ。
「グァッ?!」
私は一気に間合いを詰め、カウンターの前蹴りと合わせた左足の掴み技をオブリメッガの身体を旋回させて躱しつつっ、
「しゃーっ!」
痛めた左脚でローリングソバットを脇腹に撃ち込みっ、ガードされると逆足の回し蹴りで側頭部を蹴り付け、そのまま手足を畳んで回転して真後ろに回り込んで残り少ない神力でゴッド・クロスチョップを放ってオブリメッガの両翼を切断しましたっ。
「クァアアッッッッ!!!!」
飛行能力を失い落下してゆくオブリメッガっ。しかしこの高さでも墜落だけでは倒せないでしょう。私に彼を一撃で終わらせる神力の手刀を打つ力はもう残っていません。私はっ、
「んちゃーーっ!!」
飛行魔法の出力を上げて追い付き、背中を合わせるように接近するとそのまま強引に組み付き、『フライングパワーボム』の形を取りましたっ。
「クァアアッッ、俺はこの時代でも全ての悪を断たねばならないっ。『粛清のマッスル』の神に誓ったのだ!」
両手で私のオリハルコン並みの両手に引き剥がしに掛かりながら、鉤爪の左足の後ろ蹴りを私の背に連打してくるオブリメッガ。
(・・レルク、終わらせてやるのじゃ)
「勝ちたいんですね、オブリメッガ。でも、もうここまでです。貴方は正し過ぎた」
何も無い旧ボザ国の大地が迫ります。
「クァアアーーーッッ、やめろぉーーーっっっ、俺が正義だぁあーーーっ!!!」
「『ゴッド・シューティングスターパワーボム』ッッッ!!!!」
私は一筋の光の流星として魔人オブリメッガを地表に叩き付けっ、消滅させました。
・・巨大な焼け付くクレーターを私達の飛行テントの敷物の上から見詰めていました。起動させた3号さんと、先程テレポートしてきたポポクレス神様もいらっしゃいます。
「ヤツの主、粛清するマッスルの神はかつて我ら正義マッスル神のリーダーであったこともあった。行き過ぎた正義は、これ以上無い悪行を地上に現してしまうのじゃ。じゃ・・じゃが、今は慰めよう。多くの滅びた者達と共に。マッスルマッスル・・おお、安らかに、マッスルマッスル・・・」
「ピョ?」
今起きたばかりで状況を把握していない3号さんの頭を撫でてあげ、私達は旧ボザ国の王都跡を去りました。




