1/49
0 ことの始まり
俺が生まれたのは、魔法大国と名高い国の、東の辺境だった。
庶民の多くが使えない魔法という奇跡の力を持って生まれ、黒髪黒目が一般的なこの国では滅多にお目にかかれない琥珀の瞳を持ってしまった。
魔力を持っていることで降りかかるあれこれを躱し、それなりに快適に過ごして幼子の年齢を超えた。
「レオ、賭けに興味はあるか」
豪胆な父親の一言で、俺は十歳になった年に、貴族の子息子女が通う騎士学院を受験することになった。辺境の鍛冶屋である父親がどうやって俺の受験資格を手に入れたのかは分からないが、犯罪に手を染めていないことを祈るばかりだ。
こうして、碌に教養もないまま、俺は王都へ向かう列車に乗った。
天下の騎士学院に受かるなんて、露ほども期待せずに。