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ときには夜の散歩をするように

作者: 黎め

なんだか隣があたたかいなと思えば

いつの間にかそこにいた

初めて、隣に並んで歩いたような


リードをぐいぐい引っ張りながら

地面を這ってくモップみたいな犬とすれ違い

ランニングパンツにぴっちりと包まれたふくらはぎが

追い越したと思えば遠ざかっていった


風が吹いて地面の落ち葉をからからと巻き上げる

路肩に停まった軽自動車は

カッチ、カッチとハザードをたいて

歩道と車道の境目の

縁石を登ったり降りたりするあなたは


バランスをとって手を揺らしてみせたりして


足取りはとことこ、って感じで

いつでも目にも止まらぬ速さだと思っていたから

へえ、そんな風に歩くんだって

新しい発見をしたみたいに

ちょっとだけ息を漏らして笑う


にやけた顔を見られまいと

わたしは少し俯いたりするけど

わかってる

お互いの方は見ることなしに

わたしたちはただしばらく歩く


まもなく陽も沈み

辺りは急に冷え込むだろう

そんなことはおかまいなしに

そもそも

暑さに溶けてしまいそうな時分だって

ひとは肌を恋しがるのだ

汗が吹き出ていようとも


トラックが唸り声をあげてやってきて

白煙と共に姿を消す

タクシーは徐行したかと思えば加速して

マンションの共有部のライトがぱぱ、ぱと一斉についた

一本の木に集まったすずめたちがやかましく寝床を整え

からすがかあと飛んでいった


ゆっくりでもなく

そそくさでもなく

別に話すこともなく

ただ歩くだけが

楽しかった


すっかり陽が暮れたなと思えば

いつの間にかそこにいなくて

別にどんな風な歩き方だって

やっぱり素敵だなあってわたしは

ただ余韻に

包まれてた

お読みくださり感謝します

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