空の上の後悔 【月夜譚No.192】
アメリカ行きの飛行機の中で、私は頭を抱えていた。
そっと顔を上げてスマホの画面を覗き込むが、そこに映るのは先ほどと――いや、数日前からと何も変わらない。
どうしてあんな写真を彼に送ってしまったのだろう。きちんと意味があって送ったのは確かだが、彼が気づいてくれなければただの奇行でしかない。
今から削除してしまうか……しかし既読がついている以上、彼が見た事実は消せない。
彼が真意に気づいたのか気づかないのか、気づいていない場合、私のことを変人だと思ってやしないか、気づいていたとして、それをどう受け取ってくれるか……思考はぐるぐる回って、結局日本を発つまで――いや、発った今も何もできないでいる。留学先での不安など、考える間もない。
一年後、日本に帰ってきたら、私はどうしたら良いだろう。彼ともし再会できたなら、どんな顔をしたら良いのだろう。
抱えた頭は晴れることなく、真っ青な空の上を進んでいった。
――季節が巡って再び春が来た日、私は写真を送って良かったと、心から安堵することになるなんて、露も知らずに。