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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

猫かぶり聖女の愛しの彼氏が魔王くんだった件

 ーとある【王城】にてー


「え、帰還方法はないんですか?」

「うむ。異世界から召喚した【聖女】や【勇者】を元の世界へ帰還させる方法は見つかっておらんのよ」


 …ーーはぁ?

 ちょっと待って、何が「うむ」よ。

 何が「元の世界へ帰還させる方法は見つかっておらんのよ」よ。


 帰還方法がないのに私を【召喚】した訳、アンタ何様のつもり。

 ああ【王様】だったわね。

 一国の王だから何しても許されると思ってるの?ふざけるのも大概にしろよな。


 こっちはねぇ、付き合ったばっかりの"彼氏"とラブいちゃ、蜜月中なのよ。

 あと、大学の課題もてんこ盛りなのよ。

 どうしてくれんの?あんたらやってくれるの?


「……私はどうすれば?」

「そなたには【魔王】を【封印】してもらいたい」


 自分テメーらでしろよ。

 私を巻き込むな。


「……そうですか。お話は分かりましたわ」

「おお!やってくれるか!」


 な、に、が「おお!やってくれるか!」よ。


「……ええ。ただ条件がございます」

「条件?申してみよ」


「申してみよ」随分と上から目線ね。


「あちらの剣を私にいただけませんか?」

「【聖剣】をそなたにか?女子おなごのそなたに使いこなせるわけでもあるまいし、他の褒美ではダメかの?」


 あーらー、目が泳いでいる。

 よっぽど渡したくないのね。

 こうなったら。


「……そうですか。では【魔王】を【封印】する、お話はお断りさせていただきますわ」

「そっ、それはいかん。他の褒美でなんとかならんか?」


 何がなんでも【魔王】は【封印】したいのねー。

 私には何もメリットないのに。


「……なりませんわね」

「しかし【聖剣】は歴代【勇者】しか扱えぬもの。台座から引き抜くことも不可能なのじゃ」


 ふーん、そういうことか。

 試しに抜いてみよ。


「あらあら、抜けましたわ」

「な、なにぃ。そなたは【聖女】だぞ」


 やたらただの“肩書き”にこだわるわね。


「……恐らく【聖女】兼【勇者】なのでしょう」

「いやいや「なのでしょう」ではないわ。使いこなせない【聖剣】を持っていても意味がないじゃろ」


 このおっさん。

 使いこなせないって決めつけてるな。

 こちとら剣道黒帯よ。


「……でしたら。王様の片隅におられます【騎士】様と手合わせお願いいたしますわ」

「おお【近衛騎士団長】ラムベルトとか、よかろう。敵わなかったら【聖剣】を返してもらうぞ。よいな」


「よいな」ってなによ。

 さっきからイラつくおっさんね。

 さて…と、本気をだしますか。


「……王様、ご覧になりましたか。私、勝利しました」

「な、なん、なんと」


 はーー、このおっさん弱過ぎでしょ。

 あのおっさんの護衛にこのおっさんかぁ。


「……お約束どおり、いただきますわ。ご機嫌よう」

「待て【聖剣】は【召喚】に必要なものなのじゃー。持つのじゃー。追うのじゃ」


 だぁーれが、待つものですか。

 それにしたって騎士達遅くない。

 100人以上いるわよね?

 簡単に撒けるわ。




 ーーーー




 ーとある【魔王城】にてー


「そなたが【勇者】か?」

「……【聖女】だと伺っております」


 んん、ただの10歳のガキじゃん。

 どういうこと?


「え?どういうことだ【聖剣】を抜いたってことは【勇者】だろう?」

「……【聖女召喚】で召喚された【聖女】でございます」


 あらあら【魔王】くん混乱してる。

 可愛いぃ。


「意味が…分からない…の…だが?」

「……たまたま【聖剣】も抜きまして【聖女】と【勇者】を兼任しておりますの」


 …黒髪に黒い瞳、日本人みたいな見た目で、愛しのたっくんに似てるわね。

 まぁ、私は私で【魔王城】まで来た目的を遂行しますか。


「そなた僕を【封印】する気か?」

「……【魔王】様は元の世界への【帰還】方法をご存知でしょうか?」


 そう【王城】からのしつこい【騎士】達を“かくれんぼ”しながら撒きに撒いて。

 苦労しながら【魔王城】まで辿り着いたのは【帰還】方法を知るため!

【魔王】を【封印】するためじゃない!


「……………」

「……聞いておられます?」


 せ、め、て、何か言ってよー。

 あるの?ないの?どっち⁉︎


「ああ、すまない。一応あるんだが…」

「……ございますの!どんな方法でしょうか?」


 この【異世界】が【魔王】によって滅びようか、どうでもいい。

 自分らでやればいいものを我が身可愛さで押し付けられただけ、誰も私を責める権利はない。


「す…すごい勢いだな」

「……私は…ただ、たっくんの元へ帰りたいだけ」

「…たっくん?」

「……私の彼氏…恋人」


 お願い。

 私を早く帰して。

 たっくんに会いたい!


「…そう…なんだな、残念だな。方法はあるが意味が分からなくて【魔王】と“かくれんぼ”するらしい」

「……“かくれんぼ”?あの“かくれんぼ”でしょうか?」


 ちびっ子達が遊んでいる、あの“かくれんぼ”でいいの⁉︎


「…知っているのか?」

「……ええ。私の故郷の遊びでございます」

「どんな遊びだ?」

「……まず“鬼”と“かくれる人”で分かれます。

 “鬼”が10分数えてる間に“かくれる人”が何処かにかくれます。

 “鬼”は数え終えたら「もういいかい?」と“かくれる人”にかくれたかどうか確認します。

 まだの時は「まーだだよ」と“鬼”に返事をして、かくれ終えた時は「もういいよ」と返します。

 “かくれた人”が“鬼”に見つかったら終了でございます。理解されましたか?」


 あれれ?

 何も言わないんだけど、説明分かりにくかった?


「?どっかで…聞いたこと…あるような?」

「……?」


 どういうこと?

 意味わからないんだけど。


「ああ、すまない。はじめようか。どっちがいい?」

「……“鬼”で!」

「では僕がかくれるんだったな。何処がいいか?」


 やーん、悩んでる姿も可愛いぃ。

 お姉さんときめいちゃう!って、いけない、いけない。

 愛しのたっくんが居るじゃない。


 いーち、にーい、さーん、しーい、ごぉー、ろーく、なーな、はーち、きゅーう、じゅう。


「もういいかーい?」

「まーただよー」


 この【魔王城】思ったより、声が響くわね。


 いーち、にーい、さーん、しーい、ごぉー、ろーく、なーな、はーち、きゅーう、じゅう。


「もういいかーい?」

「もういいよー」


 さて、と。

 行きますか。

 何処かな?って言ってもすぐ見つけるけど、この【異世界】に召喚された時に便利な力がゲットしたんだよねー。


【千里眼】発動!


 この力、遠くのことを何でも見れちゃうんだよねー。

 さーてと【魔王】くんは何処かなぁ?


 ん?何か…黒い剣がある部屋に…居るっぽい?

 てか【召喚】された部屋に似てるなー。


 じゃ【テレポート】発動!!


 これって目的の場所まで一瞬で移動できるからいいのよね。


 あ!さっき見えたの、この剣ね。

 うーん、何か【聖剣】と同じデザインで、気配も一緒ね。

 まぁ、いいや、抜いちゃえーー!


「はぁ!!」


【魔王】くん出てきちゃった。

 ん?何かビックリしてる??


「そなた【魔剣士】なのか??」

「……【魔剣士】とはなんでしょうか?」


【聖女】【勇者】に続いて【魔剣士】って、RPGじゃん。


「【魔剣士】は唯一【聖女】や【勇者】に対抗出来うる存在なのだが。そなた"レアジョブ"全部か」

「……光栄ですわ」


 今、何て言った?

 懐かしい"ゲーム用語"が聞こえた気がするんだけど。

 いや、それより。


「見ーつけた!」



 わぁ【魔王】くんの手ぇ、小さいし、柔らかい。って、この光【召喚】の時と一緒!?


「…ああ、そうか。そうだったのだな。そなた名は?」

「……猫被里(ねこかぶり)咲子(さきこ)20歳(はたち)です」


 んん?

【王城】の奴らも聞かなかったのに、何で名前??


20歳(はたち)か。10年も待つのか、長いな」

「……???」


 ヤバい。

 全然理解出来ない。


「僕は魔勇(まゆう)拓真(たくま)。10年後、絶対見つけるから待ってて」

「……魔勇…拓真。たっくん?」


 どうして【魔王】くんが、たっくんと同じ名前?


「きゃ!」


 光で何も見えない!




 ーーーー




 ーとある"部屋"にてー


「…ん」

「…ー(さき)、お帰り」


 ああ、たっくんが居る。

 私、帰ってこれたのね。


「たっくん、会いたかった」

「僕も10年待ったかいがあった」


 10年?【魔王】くんも言っていた。


「僕は10年前に咲と同じように【勇者】として【召喚】されたんだ。元々【魔王ぼく】が居た【魔王城】が【王城】だったんだ」

「【王城】だった?」

「僕が【召喚】された当時の【王城】は“人々の欲の塊”が実体化して暴れていたんだ」

「“人々の欲の塊”が【魔王】だったの?」

「そうだよ」


 んん?自分達のせいじゃね。


「そして【王様】は【魔王】を抑える為に、2振りあった【聖剣】の力を使って【異世界】から、10歳だった【勇者ぼく】を【召喚】したんだ」


 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「じ…自分達で…何とか…すれば…いいのでは?」

「…本当にそうだね。でも僕は子供だったし、台座に【聖剣】をさすだけでいいと言われて引き受けてしまったんだよ」


 まさか。


「その【聖剣】が【魔剣】になったの?その影響でたっくんは【魔王】に?

 ま、まさかたっくんを見捨てたの⁉︎」

「うん、そうだよ」


 はいーーーーーーーーーーーー!

 あいつらほんと何様よ⁉︎


「……それでたっくんを【封印】するために私を召喚したのね」

「そのおかげで僕は咲と出会えたし、帰れたんだ」

「…たっくん」


 もう好きぃ!


「たっくん、キスしたい。ダメ?」

「いいよ」

「…ん」


 はぁー、久しぶりのキスだー。

 生き返るー。


 そういえば。


「ねぇ、どうして【帰還】方法が“かくれんぼ”だったの?」

「…ん。憶測だけど…僕は“かくれんぼ”の途中で【召喚】されたから“かくれんぼ”しに“帰りたい”思いが【帰還】方法に繋がったんじゃないかな」

「んん。…はぁ、待って、息が…っ」


 さっきから、すっごーーくキスが深いんですけどー!


「10年も探し続けたんだから、これぐらい多めに見てよ」

「……もし私が10歳年上だったら、どうしてた?付き合っていた?」

「自分にも嫉妬していたし、誰にも渡す気はなかったよ」


 んん?それって、もしかして!


「一目惚れだったよ」



 2人の足元には【聖剣】と【魔剣】がキラキラ輝いて、もう2度と【異世界】に【召喚】された人間はおりませんでした。


【魔王】がどうなったかって?


【異世界】の当事者達が頑張ってどうにかしたのでしょう。きっと。


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