暇つぶしにデスゲームの運営者になりましたが、誰も導入説明を聞いてくれません。
デスゲームの運営者にならないかと誘われた。
生活に困らないだけの資産をもち、暇を持て余していたわたしはその誘いを受けることにした。
既に参加者は集められている。絶海の孤島にあるリゾート施設に高校生の男女、三十名。最後の一人になるまでデスゲームを続けるのだそうだ。
監視カメラを確認すると、参加者はホテルのロビーを不安そうにうろついている。
そろそろ出番かな。
わたしは黒い狐の仮面を被り、カメラとマイクのスイッチを入れた。
「おはよう、みなさん。よく眠れたかな?」
わたしの顔は、ロビーの液晶モニターに映し出されている。参加者達はびくりとモニターを見た。
「驚かせてしまったね、君達は――」
「おい何だてめえッ! 俺らをどうする気だ!」
ヤンキー風の学生がいきなり吠える。
「……それを今説明しようと」
「こっちはバイトあんだよ、とっとと帰せゴルァッ!」
待ってあのヤンキー超怖い。
「待て、長谷川。さっき島を見回ったが、船もヘリも見当たらない。スマホも圏外。俺達は閉じ込められたと考えるべきだぞ。恐らく、この狐女にな」
委員長風の男子学生が長谷川なるヤンキーを制する。
「そう、残念ながら君達は――」
「でも立花君……何でわたし達が?」
今度はおどおどした女子学生の声がわたしの台詞に被ってきた。
「きっと……俺達のもつ特殊能力が原因だろう」
ん? 特殊能力?
「一ノ瀬さんの能力は、空中浮揚、だったよね」
「うん……でもそれは、車に轢かれそうになった時にたまたま発現した力で……」
空中浮揚って何? あの一ノ瀬ってコ、空が飛べるの?
「それだ。奴は俺達を極限状況に追い込んで、能力の覚醒を図るつもりじゃないだろうか」
わたしは小さく咳払いした。
「察しが良くて助かるよ。極限状態、つまり君達は――」
「……殺し合いだろ」
クールそうな男子学生が低い声で言う。
「一番の極限状態ったらそれしかないよな」
「そ、そんな鹿嶋君! わたし達が二つに分かれて戦うって言うの?」
「分かれて? 甘いよ、最後のひとりになるまで戦うバトルロイヤルって奴さ」
「くそ……やってやる。やってやるさ! だがお前の思い通りにはならない、俺達は必ず生き延びてやるからな!」
立花が鋭くモニターを指差している。
「あの……じゃあ、まあそんな感じで」
このデスゲーム、わたし必要?
なろうラジオ大賞2 応募作品です。
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