午前中だけの
「あれ」男子が顔を覗かせた。「もう早弁?」
「そうよ」女子はやや気後れ気味に、「悪い?」
「太るよ」悪戯っぽく男子が笑う。
「いいもん」女子が声を曲げた。「朝ごはん抜いてきたもん」
「それ」男子が腕組み、「余計太るよ」
「もう!」女子が口を尖らせる。「女の子にそういうこと言うかなぁ?」
「じゃあさ」後ろ手、男子からピンクの弁当箱。「こっち試してみてよ。俺のお手製」
「うわぁやられた!」女子が突っ伏す。「何その女子力」
「どしたの?」男子に怪訝顔。「俺の分はちゃんと」
「そうじゃなくて」女子が気まずそうに鞄から、「先、越されちゃった」
ピンクと青の弁当箱が、合わせて2つ。
「一緒に」女子が上目遣いに、「食べてくれる?」