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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-38 ケロット団

 青い空には、まんまるプップがうかんでいる。

 リーヌは絨毯のような草の上に寝ころがって、ぼけーっとしたアホ面で、プップをながめている。

 こんな感じで、もう1時間くらいたった。

 ちなみに、ホブミは、木の下で読書中だ。

 どうやら、これは、ここに永住するしかなさそうだ。

 この山、食べられる植物は豊富にあるらしいし、怖いモンスターも出てこないし、いいすみかになるかもしれない。

 おれの脳内で、放送が流れた。 


 ~~~

 プップの浮かぶオホシミ山リゾートに、ようこそ! おいしいもぎたてフルーツを食べながら、大きなカブトムシやクワガタを取ろう。夜は、満天の星空のもと、パラパライトのパラパラショーが開催されるよ。

 ~~~


 うん。けっこう、いい感じのリゾート生活っぽい。

 よし、家を建てよう。

「えーっと。家づくりに必要なのはなんだろ? 木材かなぁ……?」

 おれが、前向きにマイホーム建設計画をたてていた、その時。

 この平和にプップが浮かぶ場所に、突然、騒々しい何者かが乱入してきた。


「まったまったー! そのモンスターはおれ達のものだ!」

「プップは、あたし達ケロット団がいただいていくよ!」

 草むらの影から、カエルの顔をした人間っぽいへんな生き物二人組がとびだしてきた。

「ケロット団か……」

 どうやら、この山はこのネタで統一されてるらしい。

 ケロット団員は、大きく「K」という文字がくっついたおそろいの服、つまり、ケロットのケとロをいれかえた軍団の制服っぽい服を着ている。

 残念ながら、小判がくっついた猫とか、他のモンスターは一緒じゃない。


 なにはともあれ、おれはつっこんだ。

「出てくるのおそっ! おれ達がプップを見つけてから、たぶん1時間以上たってるぞ? 今さら、『まったまったー!』とか言っても、何を待てばいいのか全然わかんないって。おれは、家づくりを待てって言われたのかと思っちゃったぞ? 『え? 木造じゃなくて、レンガの方がいいの? まずは粘土集めから?』とか思っちゃったぞ」

 だけど、ケロット団員のカエル達は、おれの言うことは聞いてないで、かってに楽しそうにしゃべっている。

「このレアモンスターを手にいれれば、あたし達、ハコブネ計画に大貢献よ。天空の魔女様も大喜びなさるに違いないわ!」

「おれ達のケロット団での地位も、うなぎのぼりだな!」

 おれは、そこで、カエル人間の会話にわりこんだ。

「盛り上がってるとこ、わるいけど。カエルさんたち」

 おれは、ぼけーっとした面のリーヌを指さし、カエル人間たちに忠告した。

「あきらめて帰ったほうがいいぞ。あの人、超バカっぽく見えて、超バカだけど、超バカ強いから」

 ちなみに、リーヌは、ボケーッとした顔で空をみあげたまんまで、ケロット団の登場にも気づいていないようだ。

 だけど。

「おれ達をなめるなよ!」 

 突然、ケロット団員二人組は、光線銃っぽいものをとりだした。

「先手必勝!」

「油断大敵!」

「ケロリンビーム!」

 そう叫ぶと、ケロット団員たちは、おれたちにむけて銃を乱射した。

 おれは、なんとか、銃からはなたれる光線をよけようとした。

 ところが、その時。

 誰かが後ろから、おれのえり首をつかんだのだ。

 何者かに、えり首をつかまれ、逃げられなくなったおれは、黄色い光線の直撃を受けてしまった。


「うわぁあーー! 撃たれたぁーー! もうだめだぁーー! また、あの川辺に行っちゃうぅーー!」

 おれが叫んでいると。

「うるさいですよ。私が見たところ、残念ながらゴブヒコさんのダメージはゼロです」

 おれの後ろから、そんな声が聞こえた。ホブミだ。

 おれがふりかえると、ホブミが、おれのえり首をつかんでいた。……おれが撃たれたのは、こいつのせいだった!

 こいつ、さっきの光線をよけるため、おれを盾にしたらしい。

 なんて非道な極悪賢者だ!

「ホブミ! おれを盾にするな!」

「申し訳ありません。他に手ごろなものがなくて」

と、ホブミは、すまなさそうに言ったけど。おれは知ってる。みんな知ってる。

「盾があるだろ! シャハルンの盾が! おまえが持ってるその盾を使え!」

 ホブミは首を左右にふった。

「これは、リーヌ様がくださった大事な宝物です。傷がつくかもしれませんから、とても、戦闘には使えません」

「盾を盾として使わないでどうすんだよ!」


 おれたちがこんな、しょうもない会話をしている間に、実は、とんでもないことが起こっていた。

「ぬわんじゃこりゃあーーー!」

 リーヌの叫び声で、おれたちは、リーヌがいた方へ、振り返った。

 だけど、そこに、リーヌの姿はない。金髪のカエル人間がいるだけだ。ケロット団の服は着ていないけど。

「カエル人間が1、2、3。一匹増えてるっす。リーヌさんは、いなくなっちゃったし。どこいったんだろ」

と、おれが言った時、あぜんとしてかたまっていたホブミが叫んだ。

「リーヌ様が、カエルの姿に!」

 おれは、ぽんっと手を打った。

「あ、そっか。リーヌがカエル人間になったのか。なっとく、なっとく」

「納得している場合ではありません!」

と、ホブミがおれをしかった。

 むこうでは、

「なんじゃこりゃー。アタイの手の形がへんだぞ? 緑だぞ?」

と、カエルなリーヌが言っている。

「手だけじゃないっすよ。リーヌさん。顔が、バッチリ、カエルっす。背も低くなってるし。あと、バストとか、全然ないっすね。おなかが一番ふくれた、カエル体形っす。緑でツルツルお肌だけど。これぞほんもののツルペタっすね」

「ぬわんだってぇーーー!」

 どうやら、さっきのは、撃たれたものをカエル人間にしてしまう、そういう光線銃だったらしい。

 スタイルのいい美女だったリーヌはすっかり、バストもヒップもどこにあるのかわからない、つるんとしたカエル人間になってしまった。

 顔も、美女度ゼロ。カエル的に美女なのかは、わからないけど。人間的にはゼロ。

 もとと同じなのは、金髪くらいだ。カエルに金髪がはえてると、違和感しかないけど。


 おれは、むしろ、感心してしまった。

「リーヌさんって、前は、見た目と中身にどうしようもないギャップがあったけど、今は、すっかり、見た目も中身もボケ担当、ボケカエルっすね」

「ボケカエルだとぉ!?」

 金髪カエルが叫んだ時、おれは、ふと思い出した。

「あれ? そういえば、おれも、さっき撃たれたんだった……! まさか、ひょっとして、おれもカエルに……!?」

 おれは自分の手を見た。もともと緑だから、よくわからん。

 みんなに聞いてみるしかない。

「おれは? おれも、カエルになってるんすか? 実は、もう、ケロヒコになってるんすか?」

 金髪カエルは、憎らしげに言った。

「おまえは、憎らしいくれぇにブサイクなゴブヒコのままだぜ」

「残念ながら、ゴブヒコさんには、1ミリも変化がありませんね。すこしはマシになってほしいものですが」

と、ホブミも同意した。

「なんでおれは、かわってないんだよ! 撃たれたのにぃー。せっかくだから、おれも、ちょっとかわいいカエルにしてくれよ。もういいかげん、超絶ブサイクなゴブリンとか、卒業したいんだって」

と、おれが文句を言うと、ケロット団員は言った。

「下等なゴブリンは、カエル化できないんだ」

「ゴブリン差別はんたーい! おれもカエルになって、ボケボケケロケロリーヌとペアルックやってみたーい。おれを、カエルにしろー!」

と、おれが抗議の声をあげてると、リーヌが悲愴な叫び声をあげた。

「ボケカエルなんてありえねぇーー! ふざけんじゃねぇ! アタイを元にもどしやがれぇーー!」

 リーヌの怒りと悲しみは、かなりのものだった。

 だから、その怒鳴り声が、砲撃のように、ケロット団員たちへむかって飛んでいった。

 そして、リーヌの怒鳴り声の直撃を受けたケロット団員2匹は、大空にふきとんでいった。


 おれは、大空に消えていくケロット団員を眺めながら、つぶやいた。

「あー……。リーヌさん、カエルになっても戦闘力は、変わってなかったんすね。トード系の呪いって、攻撃力とかむっちゃ下げるのが定番なのに」

「ゴブヒコさん、意味不明に悠長なことを言っている場合ではありません」

 ホブミがおれを、しかった。

「早くリーヌ様を元にもどさなくては」

 リーヌは、おれに命令した。

「そうだぞ。ゴブヒコ、早くアタイを元にもどせ」

「なんで、そこで、おれを指名? おれが変身させたわけじゃないんすから。おれは、回復系の魔法も技も一切もってないっす。元にもどす方法なんて……」

 知るわけないんだけど。

 だけど、おれは、このパーティの頭脳である司令塔ゴブリンだからな。

 しかたがない。

 おれは、リーヌを元にもどす方法を、バッチリ考えてやることにした。

「そんなに頼られたら、断れないっす。じゃ、おれの頭脳にまかせてくれっす。えーっと……この世界、基本的にはゲームっぽい世界っすからね。ゲームの状態異常は、戦闘終了で元に戻るものと、戻らないものがあるけど……」

 リーヌはうなずきながら、言った。

「ほうほう。摩訶不思議な呪文だな」

「いや、おれは、呪文なんて言ってないっす。でも、ケロット団員がいなくなっても、リーヌさんは、カエルのままっすから……」

 戦闘終了で自動的に解除されるような状態異常ではない。何かの方法で解除しないと、リーヌはこのままだ。

「親切設計のゲームだったら、戦闘終了でなおらなくても、時間がたつか宿屋で寝れば、たいてい治るんすけど。この世界、不親切きわまりないっすからね。いやなとこだけ、リアルっすから。だから、どうにかして解除しないと、なおらないんじゃないっすか?」

「ほうほう。解除すればなおるんだな。なら、安心だな」

と、おれの言うことを半分くらいしか理解してないリーヌは言った。

「だけど、リーヌさんが、ケロット団員をふきとばしちゃったから、解除方法が、わかんないっす」

「ほうほう。つまり?」

 おれは、バッチリ、おれのすばらしい頭脳が導き出した結論をつげた。

「つまり、リーヌさんは、もう永遠にカエルっす」

「なるほど。モウエイエンってとこに帰るといいのか?」

「認めたくないからって、ききまちがえないでくれっす。もういちど言うっすよ。たぶん、リーヌさんは、ずっと、カエルのままっす。このままカエルライフを楽しんでくれっす」

「ぬわんだってぇーーー!!!」

 リーヌが叫び、そこで、いままで黙っていたホブミが、ため息をついて、言った。

「さすが、ゴブヒコさんの頭脳ですね。1ミリも解決に近づいていません」

「えー? バッチリ解決したろ?」

 カエルな人生を楽しめばいいだけだもんな。

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