表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
88/170

4-21 賞金稼ぎのシロ3

 思いっきり攻撃をくらってもリーヌが平然としているのを見て、モフモフな賞金稼ぎは言った。


「さすがだ。伝説と呼ばれるだけのことはある。簡単にはいかないか。ならば、次は俺の全力をぶつける!」


「おう。全力でモフるぜ!」


 リーヌの顔や腹の傷は、急速に修復されていき、今は、ほぼ無傷に戻っている。

 コボルトの賞金稼ぎは、両腕を体の前でクロスさせ、唸るように声を出した。


「四刀流・奥義」


 シロの四本の刀が電気を帯びている。

 どうやら、雷系の魔法を組み合わせた剣術のようだ。

 シロが口にくわえた二本の刀と両手にもつ刀の間を、バチバチと雷電がいきかい、どんどんと強まっていく。

 そして、シロの全身を、青白い雷電が包んだ。

 シロはうなるように叫んだ。


「≪牙狼電殺がろうでんせつ≫!」


 その身に雷をまとったコボルトの賞金稼ぎは、一足飛びに間合いをつめ、雷をおびた斬撃をリーヌにくらわせた。

 激しい雷が周囲に拡散し、広場中が強い光で満たされた。おれは、石柱のかげにかくれながら、おもわず目をつぶった。




 おれはそっと目を開けた。

 シロは、頭からリーヌの胴体につっこみ、リーヌを挟み切るように斬撃をくりだしていた……らしい。

 今、リーヌは、腹でシロの頭を受け止め、胴を2本の刀で挟まれた状態でいる。

 どうやら、リーヌはシロの攻撃をまともに食らったようだ。

 だけど……。


「やったぞー!」


 リーヌの歓喜の声が広場に響いた。


「モフモフどぅわーー!」


 大喜びでリーヌは、両腕でシロのさらさらもふもふな頭らへんから、ふわっふわもっふもふな首にかけてをかかえるようにして、なでまわしている。

 おれは、思わず声をあげた。


「う、うわぁー。おれだったら、むしろうらやましいけど、これ、まじめな奴にとっては、超屈辱だろうなぁ」


 うらやましいといっても、おれは、別になでまわされたいわけではない。……まぁ、なでまわされても、いいけど? 

 でも、そういうことじゃなく。なにがうらやましいかと言うと、頭からつっこんだシロの頭が、ちょうど、リーヌの胸の下あたりにぶつかっているからだ。

 つまり、ちょっと頭を上にあげれば、ぽよんぽよんのムッフムフだ。

 だが、シロは、そのまま地面に崩れ落ちた。


(こいつ、まったく、スケベ心がなかっただと!?)


 おれはショックを受けた。


「な、なぜだ。なぜ、俺の攻撃がまったく効かないんだ……」


 賞金稼ぎのシロは、まじめにショックを受けている。


「モフモフだぁー! モフモフだぁー! すんげーモフモフ天国どぅわぁーー!」


 リーヌは、大喜びで、もふもふワンワンの頭を、両手でわっしゃわっしゃ、なでまわしまくっている。


「くっ……。やめろっ」


 苦渋に満ちた声で言った賞金稼ぎのワンワンは、地面に膝をついたまま動けず、リーヌにされるがままだ。

 ホブミがつぶやいた。


「さきほどの攻撃の反動で、シロはマヒ状態のようですね。どんどんと、シロのHPとMPがけずられています」


「リーヌがなでまわすと、ダメージを受けるってこと?」


 おれが聞き返すと、ホブミはきっぱり言った。


「かなりのダメージです。シロがその辺の冒険者並みの防御力と体力であれば、すでに死んでいる頃ですね。どうやら、これは、『もふる』という攻撃のようです。私はこれまで、見たことも聞いたこともありませんでした。さすが、リーヌ様です」


「いや、さすが、とか言って感心するとこじゃないだろ! 自称でもテイマーが、『もふる』でダメージ与えちゃ、だめじゃん! モフモフの天敵じゃん!」


 どうやら、ふわもこモフモフ大好きリーヌは、ふつうのモフモフ動物やモンスターなら、「もふる」で殺してしまう、殺モフ体質だったらしい。

 ホブミは、穏やかな声で言った。


「リーヌ様にもふられ、天国へ旅立つのなら、モフモフも本望でしょう」


「んなわけあるか! もう、『もふる』が『ほうむる』に聞こえてくるし! ……あれ? でも、そういえば、リーヌは以前、メタルドッグな犬のおまわりさんのことを、なでていたような……?」


 ホブミは指摘した。


「メタルですから」


「たしかに。ツルツルだったー。あれは、もふれないもんなー」


 メタルだから、防御力も高かったみたいだし。


「にしても、リーヌには絶対、動物園のふれあいコーナーとか行かせちゃだめだな……」


 動物の死体の山と、逃げ惑う動物たち、泣きわめく子どもたちの、地獄絵図が見える……。


 おれは、そこで、突然、重要なことに気がついた。


(あれ? シロのHPがどんどん減ってるってことは……。このままシロが瀕死になっちゃったら、仲間にできちゃうぞ?)


 かっこかわいくて、もふもふで、しかもS級なみに強いコボルト(男)が。

 しかも、リーヌがなでまわしても、死なないタフなもふもふ犬。

 そんな奴が仲間になっちゃったら、リーヌが溺愛するぞ。もう毎日モフりまくって離れないぞ? 


 おれの脳内に、「モフモフ! モフモフ!」言いながら、朝から晩まで、シロの後を追いまわしているリーヌの姿が浮かんだ。いやがるシロを捕まえては、「もふもふ愛がとまらねー」とか言いながら、苦しむシロをもふりまくり。エンドレスもふり地獄がシロを襲う……。

 きっと、リーヌは首に抱きつくという名のヘッドロックでシロを気絶させてモフモフな抱き枕にしてお昼寝したり、なんだかひまだからって意味もなくひたすら肉球をぷにぷにしたり、あらゆる拷問を加えるにちがいない。


 これは、ひどい。

 シロにとっては奴隷にされた上、毎日、常に拷問という恐ろしい状態だ。


 そして、「もふもふゲットだぜ!」ってなった後、おれは……?

 記憶力の恐ろしく低いリーヌのことだからな。何日かしたら、おれのことなんて、すっかり忘れて。

「あん? なんだあのブッサブサなゴブリン? なんで家ん中にいるんだ?」とか、言いだしそう。

 しかも。

「リーヌ様。あれは変態ゴブリンです。すぐに成敗しましょう!」とか、ホブミの奴が言いだしそう。


 これは、まずい。

 おれは決心した。


(シロのためにも、おれのためにも、絶対、リーヌの夢の実現を阻止せねば!)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ