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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-20 賞金稼ぎのシロ 2

 賞金稼ぎのシロは、両手に1本ずつ刀をもち、2本の刀を口にくわえた。つまり、両手で二刀流、プラス、口の両側から牙のように二本の刀を横に出す、という格好だ。


「あのスタイルで四刀流なのか」


 おれがつぶやくとホブミは言った。


「コボルトのアゴの力がなければ無理な剣術ですね」


「そうだな。おれなんて、三刀流のまねをしようとして、昔、ひどい目にあったからな」


 おれはかつて、とある有名海賊団に所属する三刀流の剣士の真似をして、口に木刀を咥えて負傷したのだ。

 木刀を口にくわえて動こうとしたら、壁にぶつけて……。半年たっても思ひだしたくなひ痛さ。……い、いや、は、半年じゃなくて、10年前だ。

 おれは、決して、実は小学生の時に同じ事やってケガしてたのに、すっかり忘れて20代にもう一回やってしまったおバカな大人なんかじゃないから! 母ちゃんから心底あきれ返った顔でため息つかれたりしてないから!


「シロは単体攻撃が主の戦闘スタイルと聞きますが、S級の攻撃力を持っていることを考えると、もう少し離れていた方がいいかもしれません」


 ホブミは後ろに下がっていった。


「敵よりも、リーヌの攻撃が問題だからな。まきこまれないようにしないと」


 おれは全速力で走って逃げた。

 逃げながら、おれは、ふと気がついた。


(あれ? そういえば、あのもふもふ賞金稼ぎ、コボルトなのに、強そうな刀を4本も持ってる……)


 どうやら、シロが持ってる刀は、モンスターでも装備できそうだ。

 強い賞金稼ぎがもっている刀なんだから、きっと、あれを装備したら、おれも強くなれる……気がする。

 刀って、かっこいいしな。木刀じゃなくて真剣をもってるなんて、なんかそれだけで、かっこいいし。


(よし! おれは、ゴブリン侍になるぞ!)


 おれは、とりあえず広場の石像のかげに逃げ込んで、そこからリーヌに呼びかけた。

「リーヌさん、そいつの刀をぶんどってくれっす! それなら、おれも装備できるかもっす! おれも侍になるっす!」


 リーヌは自信満々に答えた。


「おう。まかせろ。アタイは、今日こそ、モフモフを仲間にするぜ!」


 おれの言ったことは、たぶん、まったく伝わってない。


「『この町で名前を言ってはいけない存在』よ。貴様が伝説と言われていることは知っているが、俺を甘くみるなよ」


 そう、賞金稼ぎのシロは言った。

 リーヌは叫んだ。


「な、なに!? おまえ、モフモフなうえに甘いのか? ぺろぺろすると、わたあめみてーに甘ぇのか!?」


「俺は甘くない。俺をなめるな」


 まじめな賞金稼ぎがかわいそうになるほど、会話が成り立ってない……いや、これは、成り立っているのか? もうそれすらわからない。


「余裕を見せていられるのは、今のうちだ。覚悟しろ」


 シロは両手にもつ2本の刀の切っ先をリーヌの方に向け、後ろに引いた。攻撃の構えのようだ。


「くらえ、≪四刀流・猪突≫!」


 賞金稼ぎのシロは、おれの目には、ほとんど見えないスピードで、リーヌにむかって突進し、リーヌの背後数メートルのところに着地した。

 シロは、口にくわえた刀でリーヌを斬りつつ、両手の2本の刀で同時に突きを繰り出したようだ。

 着地をしたまま静止している賞金稼ぎの、前方に突き出された二本の刀と、口にくわえた刀の一本から、赤い血が滴っている。……ということは、リーヌは切られたらしい。


 おれは、あわててリーヌによびかけた。


「リ、リーヌさん、だいじょうぶっすか!?」


 リーヌが、こっちに、ふりかえった。


「おう。問題ねぇ」


 そう言う、リーヌの腹には、どす黒い穴が開き、口は口裂け女みたいに、横にパックリ裂けている!

 おれはその場で駆け回りながら、思いっきり叫んだ。


「ギャーーーー! 思いっきり斬られてるーーー!」


「あんだよ。そんなにびっくりすんなよ。こんなのちょっとした切り傷だぜ?」


 裂けた口をぱっくりとあけ、腹にでかい穴のあいた女は、そう言った。


「ギャーーー! むっちゃホラー! 怪談!? 幽霊!? あんた何者-ー!?」


 おれがパニックになって叫んでいると。


「リーヌ様ですよ、ゴブヒコさん」


 と、ホブミが落ち着いた声で言った。


「そりゃ、そうだけど! ……そうだな。リーヌだもんな。ありえるありえる、人魚並みにアリエル」


 おれは、なぜか、納得してしまった。


 どうやら、この世界では、見た目のダメージと本当のダメージは、必ずしも、一致しないようだ。……すくなくとも、リーヌの場合は。

 だから、おれは、ホブミに聞いて見た。


「さっきのシロの攻撃ってどれくらいのダメージだったんだ? リーヌさんの残りHPって、あとどれくらい?」


 こういう質問、リーヌに聞いても、まともな答えは返ってこないからホブミに聞くしかない。

 ホブミは、落ち着いた声で、にこりとほほ笑んで答えた。


「わかりません。リーヌ様の体力は今も上限を突破しています。人知を超えた美しさのなすわざですね」


「いや、美しさとか、関係ないから!」


(ホブミに聞いても、まともじゃなかった……)と、思いながら、おれは、そこで思いだした。

 そういえば、あの勇者と最初に戦った時も、リーヌはたしか約1億のダメージを何回受けても生きていた。

 リーヌって、いったい、どれだけHPがあるんだろう。

 おれは首をひねった。


「なんでリーヌって、あんなに強いんだ? 伝説の大魔王だったのは知ってるけど」


「私の知り得る領域ではありません。つまり、そういうことです」


 ホブミの言うことは意味不明だったから、おれはもう一度首をひねった。


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