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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-18 防具屋4

 「お客さん、どうする? 危険だから、早く決めてよ」

 

 命がけの接客をしている防具屋の店員君は、おれをせかした。


「そうだなー。やっぱ革の防具しかないかな」


 すると、防具屋の店員君は言った。


「革の防具にするなら、今装備してる防具、まだ修理できるよ。買うよりは少し安いかな。師匠はさっき暇そうにしてたから、30分もあればできると思うな。きっと、文句言うだろうけど。『こんな安物、修理にだすなよ、ケチくせーやろーが。おまけに臭くて汚ねー状態で出しやがって。クソやろーが! 手入れしてからもってこい!』とか」


「どんなに、ののしられても、修理の方が安いなら、修理をお願いするっす。おれ、ののしられるのは慣れてるし」


 店員君はおれをほめた。


「さすがお客さん。だてに猛烈なM男オーラを出してないね。そういえば、首輪もあるけど、いる?」


「いやいや、おれはフリーダムを愛するワイルドなモンスターだから。首輪なんかいらないぞ。ってか、おれ、M男オーラなんてでてるの!? おれ、完全にノーマルなN男だけど? でも、たしかに、どんなにボケまくりでもなぜか女王様オーラ全開なリーヌの仲間モンスターという名の下僕でいると、なんか……と、とにかく! リーヌさん、修理でいいっすよね? そのほうがエコだし、SDGsだし」


「おう」


 リーヌは、カウンター横に飾ってある、かっこいい鎧セットの兜の上にトランクス風装備をかぶせながら、そう言った。

 つっこむのもアホらしいので、おれはスルーしようかと思ったんだけど、がまんできずにたずねてしまった。


「なにやってんすか?」


 リーヌは満足げにうなずきながら言った。


「パジャマの帽子をかぶせてんだ」


「たしかに水色しま模様がちょっとだけパジャマっぽいかもしれないけど! どうみても、帽子じゃないっす! どうみてもパンツっす!」


 ところが、防具屋の店員君は言った。


「お姉さん、くわしいね。実は、頭に装備するのが、インナー風装備の裏技なんだ。そうすると、胴体には他の防具を装備できるようになるんだよ。別の意味でダメージが大きいから、実際にやる人は少ないけど」


「そんな裏技あり!? ……でも、じゃ、今度、ためしてみよっと。というわけで、リーヌさん、おれにパンティーを1枚……」


 そこまで言ったところで、まるでバトンを回すように可憐に<100トン・ハンマー>を片手でくるくる回しているホブミの姿が見えたので、おれは、続きを言うのをやめた。

 防具屋の店員君が、ブルブル震えながら、おれをせかした。


「お、お客さん! は、早く修理に出す装備を!」


 おれが革の防具をはずして店員君に渡すと、店員君は、ものすごいスピードで、防具をカウンターの奥に運んでいった。


 防具の修理が終わるのを待っている間、ひまなので、おれ達は武器屋の方ものぞいてみた。

 武器屋のおやじは、奥に引っ込んでしまったようで、売り場にはいなかった。なので、おれ達はのんびりのびのび武器を見ることができた。


(ゴブリンも装備可能な強い武器があれば、おれって、あの盾がなくても、実はそれなりに攻撃力強化できるのかもなぁ)


 おれはそう考えながら、武器を眺めていた。

 だけど、おれには装備マニアの店員君みたいな鑑定眼がないから、実際に持ってみないと、どれが装備できるのかわからない。店員君は、今はいないから、聞けないし。


 防具屋の店員君は、一度、修理料金を取りにきたっきり、奥から出てこない。すっかりホブミにびびってしまったらしい。


 というわけで、おれは、装備できるか試すために武器を手にもっては、何かの制限に引っかかって手から落っことし、ということを何度もくりかえしていた。

 すると、リーヌがおれにたずねた。


「なにやってんだ? ゴブヒコ」


「装備できるか、手に持って試してるんす」


「ほう。じゃ、アタイも試してみよう」


と言って、リーヌは、近くにあった鋼の剣っぽいのを手に取って、もう一方の手で刀身をもって、ポキッと折った。……ポキッと折った!


「リ、リーヌさん!? なにやってるんすか?」


「うむ。装備できねーな。じゃ、次」


と言ってリーヌは、次は、モーニングスターっぽい武器を手に取って、トゲトゲの鉄球をもう一方の手にふりおろした。すると、鉄球がぐにゃっとつぶれた。


「リ、リリリリーヌさん……」


「じゃ、次はこの剣」


 リーヌは、この武器屋で一番攻撃力が高そうな、そして高価そうな、豪華な剣を手に取った。

 リーヌはサヤに収まった状態の剣をもち、そして、サヤごと、ぐにゃりと、へし曲げた。……もう二度と、あの剣をサヤから抜くことはできないな。


「これもダメか。ろくな武器がねぇな」


 リーヌは剣を放り投げた。

 投げた剣が壁際においてあった他の武器にあたって、どんがらがっしゃん、たくさんの武器が床に落っこちた。その内のいくつかは、リーヌが投げた剣が当たった衝撃で、なんの武器だったのかわからないくらいに粉砕されてしまっている……。


「リーヌさん! なんで片端から武器破壊してんすか! しかも、店内がぐっちゃぐちゃに! これ、バレたら、大変なことになるっす!」


 おれが、リーヌにむかって叫んだ時。


「おい! 魔女!」


 武器屋の親父の怒鳴り声が響いた。


 いつの間にか店の奥から出てきていた武器屋の店主が、カウンターごしに怒鳴りながら、こっちを睨んでいる。

 武器屋のおやじはいつのまにか煌々と輝く見事なスキンヘッドになっていた。


「魔女! てめぇ、なに、売り物を破壊しやがってんだ! 当然、ぜんぶ弁償してもらうぞ!」


 仁王立ちでそう怒鳴った武器屋のおやじは、髪型がかわって、すっかり威風堂々としている。

 なんだか、もう勝てそうにない。

 もともと、いかつくてマッチョな武器屋のおやじは、スキンヘッドになったことで、なんかちょっとサングラスが似合いそうで、どう見てもカタギじゃなさそうな、堂々たる裏社会オーラをかもしだしている。


「どうするんすか、リーヌさん! すんごい金額請求されそうっすよ!? むちゃくちゃぼったくられて、めちゃくちゃ残酷に取り立てられそうっすよ!? ……なんか、あのおやじ、大家さんと相性よさそうになったすね」


 その時。


 武器屋の入り口が開き、唸り声が響いた。


「グァルルルル。見つけたぞ、『この町で名前を言ってはいけない存在』!」


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