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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-14 ニュース

 大家さんに追放宣告された後、おれは、すぐに荷造りを行った。といっても、持っていくものはほとんどない。


「ふぅー。終わった。こんな感じでだいじょうぶだろ」

 

 そこでひつじくんの声が聞こえた。


『ゴブヒコさん。モンスター図鑑を忘れているよ?』


「モンスター図鑑? そんなのあったっけ?」


『ほら、テーブルの上』


 そこには、学習帳みたいなノートがあった。表紙には、「オークド博士監修 モンスター図鑑」って書いてある。


「あー、これ。ここに来た時に、リーヌが「いらないからおまえにやるよ」ってくれたノート。白紙だからラクガキでもしようかなって思ってたんだった」


 もらった時、表紙の名前らんに、おれはなんとなく名前を書いたけど、そのまま忘れて放置していた。ところが、おれがそのノートを手に取ってパラパラめくってみると、中には色々と書きこまれていた。


「あれ? リーヌが書きこんだのかな?」


『自動で書きこまれるんだよ。そのノートに名前を書いた人が遭遇したモンスターが』


「え? そういう魔法のアイテムっぽいものだったの? これ」


『うん。どこにでも売っているけどね』


「へー。じゃ、これもいれとこう」


 荷造りを終えた後、おれとリーヌはホブミのいるホテルに向かった。

 ホテルでおれたちから事情を聞いたホブミは、すぐに言った。


「では、すぐに出発しましょう。ご安心ください。私は地の果て、世界の果て、たとえ冥府であろうと、リーヌ様におともいたします」


 ホブミが出発の準備をしている間に、おれは大家さんにわたされた新聞を声に出して読んでみた。新聞はけっこう前の日付のものだった。

 ちなみに、この世界の文字は、なんちゃって中世ヨーロッパ風の世界でちょっと違和感があるけどそこはつっこまないのがお約束な言語、日本語だ。


「えーっと。1面にいきなり、『大魔王リーヌ復活か!? ジェイシー町で被害!』の見出しがあるっす。だから大家さん、この新聞をくれたんすね」


 そこで、さっそくリーヌがたずねた。


「ダイマオリーヌってなんだ?」


「リーヌさんのことっす。大魔王リーヌって、よく呼ばれてるじゃないっすか。それに、ジェイシー町って書いてあるし。これ、どう見ても、リーヌさんのことっす」


 リーヌは首をかしげた。


「アタイはテイマーだが?」


 おれは、無視して続きを読むことにした。


「武道会で盛り上がるジェイシー町で、しばらく姿を消していた大魔王リーヌが目撃された。武道会では大魔王リーヌの部下とみられる暗黒賢者の禁呪によって、ジェイシー町の観客の多くが犠牲になってしまった。詳細は、被害者のプライバシーを守るために報じることができないが、それは、それは、悲惨な目にあわされたという」


 おれは、リーヌとホブミにたずねた。


「暗黒賢者? これ、ホブミのことっすよね? ホブミは勇者パーティーの賢者だったのに。ひょっとして、大魔王の仲間になったから闇堕ち扱いで暗黒賢者になっちゃったんすか?」


「あんこくう? ホブミはあんこ食う賢者なのか? 和スイーツ派だったのか?」


 すっとぼけたことを言っているリーヌに、ホブミは、まじめに答えた。


「私はただの賢者ですが、洋風ケーキも和スイーツもどちらも好きですよ。そういえば、ガイセン通りのケーキ屋さんで季節限定・抹茶モンブランが発売中だそうです」


「なに? むっちゃモンブラン? おい、ゴブヒコ、今すぐ買ってこい」


「むっちゃモンブラン? たしかにどんだけモンブランなのか気になるっすけど、さっき大家さんに有り金ほとんど巻き上げられちゃったから、リーヌさんにそんなお金はないっすよ」


 なぜかむっちゃモンブランな話になったけど、おれは新聞の続きを読んだ。


「当局は、暗黒賢者の行方を追うため情報を集めている……って、ホブミまで指名手配になっちゃってるっす!」


 ホブミは、後悔するどころか、むしろ嬉しそうに言った。


「私はリーヌ様と二人、追われる身になってしまいましたか。まるで愛の逃避行のようですね」


 おれはすぐに訂正しておいた。


「おれもいるぞ。スイートなゴブリンといっしょに3人で逃避行だから」


 それはそうと、おれは、他にも気になる記事があることに気がついた。

 そこには、「レベル上げ中の冒険者、襲われる!」の見出しがあった。

 おれは新聞記事を読んでみた。


「レベルを上げるためメタル系モンスターを狩っていた冒険者が、テイマーを名乗る女に襲われた。被害者によると、ゴブリンを連れた自称テイマーが難癖をつけて被害者に突然おそいかかったのだという。冒険者ギルドは、この自称テイマーを特定し、厳重な処分を下す予定だ」


 おれは、そこで、しばし考えた。


「メタル狩りをしていた冒険者がテイマーを名乗る女におそわれた……? これって、やっぱ、リーヌさんのことっすよね?」


「アタイはメダル狩りなんてしてねぇぞ?」


「メダルじゃなくてメタルっす。それに、リーヌさんは被害者じゃなくて加害者の方っす。この被害者って、たぶん、ラムメタルを襲っていた、あの悪い冒険者のことっす。あーあ。おれたち、メタル牧場を守っただけなのに。なんで、ギルドからも追われる身になってるんだろ。前回の旅行では良いことしかしなかった、と思ってたのに。すっかり悪者あつかいされてるっす。なんだか報われないっす」


 おれが嘆くと、リーヌは悔しがりもせず、平然と言った。


「世の中、そんなもんだぜ。いいじゃねーか。勇者あつかいされるよりゃ、マシだろ」


 その時、ホブミの部屋のテレビから、突然、緊急ニュースのお知らせが流れてきた。


≪今、最新のニュースが入りました。預言者ダガロパとして知られるピスピ教会の大主教ダガロパ様が、重大な預言を行ったということです。こちらに入った情報によると、預言者ダガロパ様は、世界の滅亡を予言したということです。これから、記者会見が行われる模様です。もう一度繰り返します。預言者ダガロパ様が、世界の滅亡を予言しました≫


「世界の滅亡? 予言?」


 おれがニュースを見ながらつぶやくと、


「おやまぁ。またダガロパ様ですか」


 ホブミはたいして驚きもせず、荷物を整理しながらそう言った。


「預言者ダガロパって?」


「二神教の三賢者と呼ばれる方々の一人です。ダガロパ様は、未来に起こることを知る『預言』のスキルを持っていると言われています。ただし、大聖女マリゼル様の『夢見の託宣』や賢人トスター様の『心眼』と異なり、外れることが多いのです。一説によれば、未来は常に変化しており、ダガロパ様の預言はそのたくさん存在する未来の可能性の一つを知る能力だから外れることもあるのだとか。当たるも八卦程度に思っておけば良いと思います。過去には、大地震や大噴火の予言が当たったこともありますが」


「へぇ。でも、なんか世界の滅亡とか言われると、不気味な感じがするっすね」


 なんとなく不気味だけど、世界の心配の前に、自分達の心配をしないといけないから、おれたちはそそくさとホテルを後にすることにした。


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