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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-7 誘拐

 翌朝、真城さん達との待ち合わせ場所へ行こうと、おれは、ウキウキドキドキ家を出た。

 そして、数十メートル歩いたところで、いきなり、拉致された。

 そう、拉致された。まさか、平和なはずの日本でこんな目にあうとは……。


 妙なワゴン車が横を徐行していくと思ったら、突然、ドアが開き、おれは引きずりこまれてしまったのだ。


(なんだこれー!)


 車の中には、ものっそい怖い男達がいた。

 おれが普段関わりあいになることが絶対ないタイプの、気合が入った「夜露死苦!」て感じの方々が。各地の荒れる成人式の中で一番怖い男を集合させた感じだ。


(こ、こ、こ、これは、見るからに、真城さんの関係者のような……。他におれが拉致される理由なんてないし。やっぱり、おれは、あの方に近づくべきじゃなかったぁ!)


 おれは後悔したけど、もう手遅れだ。


 数十分後、おれは、だだっ広い倉庫のようなところにいた。

 おれは倉庫のまん中で、足をかかえて座っていた。

 周囲には、怖いお兄さんたちがたくさんいる。


 うぅ……。おれ、コンクリ詰めにされるのか? 

 短い人生だった。もっぱら引きこもっていたから、ほんと、あっというまの人生だった……。

 なにもやってない人生だけど、でも、思い残すこともないなぁ。

 おれに夢とか将来の計画とかないからなぁ。

 あーあ。

 でも、一度でいいから、デートに行きたかったなー。もうDT卒業とまでは言わないからー。

 どうせなら怖いお兄ちゃんたちじゃなくて、怖いお姉ちゃんたちに襲われたかったしー。

 真城さんのお知り合いなら、美女軍団でもいいじゃないかー。

 なんで、こんなおっかない野郎どもなんだよー。


 そんなことを考えていると、


「初代、こちらです」


 という声が聞こえ、奥の扉から、とてもガタイの良い男が入ってきた。

 ゴリラと素手で殴りあっても勝てそうな男だ。

 でも、顔はかなりのイケメンだ。

 ちょっと憂いを秘めた目つきで、彫りの深い顔は、男も憧れるレベルのイケメンっぷりだ。

 背は、たぶん190センチくらいはある。おれがあの男の横に立ったら子どもにしか見えないだろう。

 髪型はほとんど坊主刈りに近い短髪で服装はオラオラ系というか真城さん系というか。

 つまり、おれが一目散に逃げだす系のファッションだ。

 でも、ファッションセンスがいいのか、顔と体形がいいからなのか、その辺の不良と違って、かっこいい。

 全体的に、おれと同じ人類とは思えない。


 おれをつれてきた不良のひとりが、初代と呼ばれた男に言った。


「こいつが、昨日、真城さんといっしょにいたやつっす」


 やっぱり真城さんのお知り合いのようだ。


「真城さんには途中でまかれちゃったんで、こいつを連れてきました」


(おれ、昨日、後をつけられてたの!?)


 平和に暮らしてきたカタギであるおれが、尾行に気づくはずないし。……むしろ、なんで真城さんは気づいてるの? 


 初代とよばれた、ごつくて背の高いイケメンは、はるか高みから、体育座りをしているおれを見下ろし、たずねた。 


「おまえはあいつのなんだ? その面構えでまさかとは思うが……」


 なんかこれ、返事をまちがえたら、殺されそうな気がする。親しい関係だったらアウト、みたいな。

 不幸中の幸い、おれと真城さんは、どこをどうとっても、問題になるような関係ではないけど。友達ですらないからな。

 おっかないイケメンは、おれへの質問を最後まで言った。


「……新しい舎弟か?」


 おれは、あわてて正直に答えた。まちがって舎弟と思われちゃったら大変だからな。


「バ、バイト先の知り合いです」


 ヘビー級ボクサーみたいな体格のイケメンは、おれの返事を聞いて、驚愕の表情をうかべた。


「バイト? あいつが、まじめに生きてるってのは、本当だったのか……?」


(バイトしてるだけで驚かれるって。真城さんっていったい……)


 おれの頭を片手でにぎりつぶせそうなイケメンは、おれにたずねた。


「あいつの電話番号を知ってるか?」


「スマホに、番号はいってるはず……」


 おれがそう言うと、怖いお兄ちゃんたちが、おれのカバンを勝手にあけ、中をあさった。

 不良のひとりが、おれの、ちょっと痛いスマホケースに入っててちょっと痛い待ち受け画面が待っているスマホを取り出した。

 不良はすみやかに真城さんの電話番号を調べあげ、スマホなんて指で粉砕しそうな初代と呼ばれる男にスマホを渡した。


 真城さんは、呼び出しに応じたようだ。

 低くかっこいい声のごついヤンキーが、おれの痛スマホで話をしている。


「久しぶりだな。俺だ。……ああ。……一週間前に出てきたばかりだ」


 合間に、真城さんの声は聞こえるけど、なにを言っているかまでは聞き取れない。


「山田? ……そいつはここにいる。……話したい事がある。来てくれ。……場所はわかるな? ……ああ」


 会話の内容はよくわからないけど、とにかく、真城さんがここに来ることになったらしい。


 その後、おれはだだっ広い倉庫の中でしばらく待った。

 といっても、おれは監禁されていたわけじゃない。

 真城さんへ連絡がとれた後、おれのこととかどうでもよかったらしく、誰もなにも言わなかった。

 つまり、おれは完全に放置されていた。「これなんの放置プレイ?」って言いたいくらいに。


 でも、わざわざ、「帰っていいですか?」て、おれから聞くのも怖いし……。ていうか、おれ、こんな怖い人たちに話しかけるとか、ムリだし……。

 かといって、勝手に帰ろうとして激怒されたら困るので、おれはひっそりと、みんなのおしゃべりを聞きながら、倉庫の中で体育座りをしていたのだ。

 でも、おかげで、おれは色々聞くことができた。


 あのごっついイケメンは、打威魔殴という不良グループの初代総長だった。

 だけど、なにかの事件で少年院か刑務所に入れられてしまって、その後、真城さんが二代目総長になったらしい。

 つまり、真城さんはレディースとかじゃなくて、この超危険そうな男だらけの不良グループのリーダーだった。

 ここにいる不良達は、東京なんて簡単に制覇しそう……ていうか実際制覇していたらしいし、もう世紀末の荒廃した世界でバイクや改造車を乗り回してても違和感ない感じだ。 


 ところが、二代目総長だった真城さんは、何か月か前に、とつぜん打威魔殴を解散して雲隠れしちゃったらしい。

 一切の連絡を絶った。

 そして、1週間くらい前に牢屋から出てきた初代総長が、今、真城さんを呼びつけた……。


 おれは、そこで気がついた。

 なんか、よく考えると、この状況って……。

 真城さんは、勝手に行方不明になっていたんだから、裏切り者あつかいされてても、おかしくない。

 そもそも、真城さんが逃げ回ってて捕まえられないから、かわりにおれを捕まえて、真城さんを呼びつけたみたいだし。

 てことは、これって、仲間から抜けたやつに制裁加えるとかいう、不良のアレか?

 てことは……どうしよう! 真城さんが、危ない!


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