** ゲムボイ教会の庭
おだやかな昼下がり。大きな教会の庭に、子ども達が集まっている。子ども達のひとりがたずねた。
「トスター先生、今日のお話はなんですか?」
「なにが良いかい?」
トスター先生と呼ばれた男がやさしくたずねると、小さな子どもがリクエストを出した。
「りーちゃさまとよーくさまのおはなしがいい」
年長の子どもが言った。
「ぼくも創世神話が聞きたいです。教会の石碑にも刻まれてるけど、難しくって」
トスター先生はうなずき、話しだした。
「うん。創世神話だね。この世界を創った神様と女神様のお話だ。かつて、こことは違う場所、神々の住まう場所にヨーク神とリーチャ神は生まれた。ふたりは出会い、ある日……」
そこで突然、教会の中から一人の司祭が慌ただしく駆け出てきた。
「トスター様! お戻りください! 緊急会議が開かれます。ピスピ教会のダガロパどのが、世界滅亡の預言を出されました!」
「やれやれ、またか」
ため息をついてそう言うと、トスター先生は立ち上がった。
子どもたちは口々にうわさ話をはじめた。
「ダガロパさまの預言って、たいていあたらないんだよね。トスター先生の心眼と違って。パパが言ってたよ」
「でも、当たるときもあるんだってよ。大聖女様のご神託よりは外れるけど、前に当たったこともあるんだって。ばあちゃんが言ってたよ」
「じゃあ、世界は滅んじゃうの?」
「トスター先生? 世界はほろんじゃうの?」
「だいじょうぶ。世界はそう簡単には滅びはしないよ。7色の光と慈悲深きヨーク様がいらっしゃるから。それじゃあ、みんな。残念ながら、今日のお話は終わりだ」
不安そうな子ども達にそう言うと、トスターは教会の中へと戻っていった。




