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3-? ホブミ5

 メタルアニマルの隠れ里。

 メタル系モンスターは非常に高い防御力と低い攻撃力、そして、倒した時の経験値が異様に多いことで知られる。

 そのために、各地で冒険者による「メタル狩り」と呼ばれる行為が起こり、生息数が激減、今ではレアモンスターの一種とみなされるほどに減少してしまった。


 だが、ホナミが驚いたことに、ここにはメタルアニマルと総称される多様なメタル系モンスターが大勢住んでいた。

 メタルアニマル達は自分達の正体を「動物」と偽り、人里外れたこの地に「牧場」という名の隠れ里を築いていたのだ。

 メタルアニマルに敵意を向ける者が侵入できない特殊な結界を張って。


 満天の星空のもと、ゴブリン姿の女賢者ホナミはひとり、神々に祈りを捧げていた。


「創世の二神、ヨーク様、リーチャ様。どうか私をお導きください」


 ホナミはこの大陸でもっとも信者の多い二神教の敬虔な信徒だった。

 二神教は生命の大切さを説く。

 だが、今のホナミの心には、殺意が渦巻いていた。


 ゴブヒコのにやけ顔を思い出しては激しい殺意が沸き起こるのだ。

 あのブサイクな顔を見るたびに、ホナミはゴブヒコを生き返らせたことを激しく後悔した。


 今日、あのゴブリンが死にかけた時、あのまま放置しておけば、無事にゴブヒコ抹殺の任務は完了していた。

 なのに、リーヌが涙を流した時、とっさにホナミは蘇生魔法を唱えていた。

 唱えざるをえなかった。

 あの時、リーヌの悲しみに呼応するように、空までが急にどんよりと曇り、突然の大雨が降りそうになった。

 そして、胸の中を切り裂かれるような激しい悲しみと痛みとともに、全身をマヒさせるような恐怖がホナミを襲ったのだ。


 もしもあのままゴブヒコを見殺しにしていれば……おそらく、恐ろしいことがおこっていた。

 大魔王リーヌは大災害すら引き起こすと言われる。それは、尾ひれのついたうわさ話にすぎないと思っていた。

 だが、今のホナミは確信していた。

 誇張ではない。

 大魔王リーヌはそれだけの力を持っている。

 そして、ホナミの推測が正しければ、おそらく、大魔王リーヌはその力をコントロールすることができない。感情の激昂で、恐ろしい力が暴発するのだろう。


 ゴブヒコは今頃、ホテルでひとりで寝ているはずだ。

 今なら、簡単にゴブヒコを殺すことができる。だが、ゴブヒコを殺せば、きっと災害級の惨劇が起きる。

 そして何より、ホナミにはリーヌを悲しませることができなかった。

 想像するだけで、ホナミは心が引き裂かれるような苦痛を感じていた。


 しかし、この任務を放棄すれば、あの勇者は卑猥な画像を多数の人々の目につく場所にさらし続けるだろう。

 あの画像を人々が見て嘲笑ったり欲望を抱いたりすることを想像すると、知人達が自分をどう思うかと想像すると、女賢者は死にたくなった。

 女賢者は祈り続けた。


「創世の神々よ。どうか私に勇気を。正しいことを行う勇気をください……」


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