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1-5 金欠発覚

 翌日、リーヌの部屋を片付けてやりながら、おれはぶつぶつ、つぶやいていた。


「ていうか、テイマーだったら、なんか訓練スキルもってるとか、どっかに訓練場あるとか、戦闘以外に経験値を得る方法あるんじゃないのかなー」


 小声で言ったつもりだったけど、ベッドの上でごろごろしているリーヌには聞こえてしまった。


「ああ? 訓練好き? 訓練しよー?」


「ちがうっす! なんすか? その聞きまちがい。そんな、ポジティブでやる気に満ちたこと、おれが言うわけないっす。おれのやる気のなさは、幼稚園でも評判だったんすから。おれが言ってたのは、リーヌさんがもってるスキルや、町の施設の話っす。戦闘しなくても仲間モンスターを強くするスキル、もってたりしないんすか?」


 リーヌは、自信満々に、宣言した。


「なんの話かわからねーが、アタイがもってるスキルは、『仲間にする』だけだぜ?」


 おれは、あぜんとした。


「それだけ……? どんなテイマーなの、それ? ……やっぱ、こんなんじゃ、おれを強くするなんてムリっす。だいたい、昨日も敵の選び方を、まちがえすぎっす。おれが、あんな強いワータイガー倒せるわけないっす。レベル1のスライムとかからはじめないと。それでも、勝てる気がしないんすけど。てか、ぜったい負ける自信があるっす」


 おれは、スライムに体当たりされたときの激痛を思い出しながら、そう言った。


「んなこと言われてもなー。そうだ、ジュース飲みてぇな。買ってきてくれ」


「ぜんぜん、おれの話聞いてないっすね……。今は、掃除中だから、ムリっす」


 自販機とかないから、ジュースを手に入れるのも、けっこう大変なのだ。この家は町はずれにあるし。


「今、飲みたいんだもん。はーやーくー!」


 リーヌはベッドに横になったまま、軽く足をばたばたさせた。

 その振動で、ベッドの上の、リーヌがだきまくら代わりにしている、よれよれなパンダのぬいぐるみが跳びあがった。

 そしてその風圧で、ベッドのそばにあったテーブルの上のものが吹っ飛んでいった。

 それを見て、おれはあきらめた。


「しかたないっす。どうせ、そうじしても、リーヌさんが叫んだり動いたりすればぐちゃぐちゃになるから意味ないし。先にジュースを買ってきてあげるっす。じゃ、ジュース代くれっす」


「ちょいまち、今出す」


 リーヌはねっころがったまま、外出着のポケットから財布をとりだして、さかさまにした。が、なにも出てこない。

 リーヌは財布に手をつっこんだり、のぞきこんだり、ひっくり返したりした。が、なにも出てこない。

 リーヌは、それから、そのへんの服のポケットを、ぜんぶひっくりかえして探した。でも、あらゆるゴミしかでてこない。


 おれは、出てきたゴミをながめて、あきれはてた。


「うわー。噛んだガムとか出てきたっすよ。ひどっ。魔界の住人じゃないんだから。それに、このさいだから言っとくっすけど、ティッシュをポケットの中に放置するのだけはほんとやめてくれっす。洗濯の時、超大変なんすから」


「うっせぇなぁ。それより、あちゃー。金ないわ」


「えー。それ、今日食うものにも困る貧困具合っすよ? それに、今朝、大家さんが、ぶきみな笑みをたやさず家賃払えって言ってたし。あの大家さん、あまりに滞納し続けると馬車馬のごとく強制労働させられそうな怖さをかもしだしてたっすよ?」

 

「あ? ばかだな、ゴブヒコ。ジュースの金がないのに、家賃なんて払えるわけないだろ? おまえ、算数できないだろ」


 おれは、かつてのおれを完全棚上げでつっこんだ。


「なんでそこで自信満々なんすか! 金かせがないとだめでしょ! リーヌさん。ちゃんと金をかせいできてくれっす。今すぐ!」


 リーヌは渋々言った。


「わぁったよ。かせげばいいんだろ? じゃあ、行くぜ。手配魔獣とか、サクッと倒してがぽっとかせぐぞ」


「はいはい。それじゃあ、いってらっしゃーい」


 おれはリーヌを送り出そうと手を振った。

 だけど、リーヌは上着を手にとりながら、当然のように言った。


「おまえもくるんだぜ?」


「え? おれも?」


 あれ? もしかして、とんだブーメラン?


「おれ、戦闘能力ないから、部屋で片付けしてたほうが、効率的だと思うんすけど」


「あに言ってんだ。ゴブヒコ、さっき、もっと強いモンスターと戦って強くなりてーって言ってただろ? ちゃんと聞いてたぜ?」


「絶対、言ってないっす! 戦わずに強くなりたいとは言ったっすけど。てか、戦わなくちゃ強くなれないなら、おれは戦わないで弱いままの道を選ぶっす!」


 リーヌは口をとがらせた。


「おまえが強くならねぇと、アタイがふわもこキュートなモンスターを仲間にできねーだろ」


「だいじょうぶっす。バッチリな解決方法があるっす。ありのままの自分をうけいれるんす。おれは、超弱いというありのままの自分を受け入れることにしたっす。リーヌさんも、モンスターを仲間にするのをあきらめて、『強すぎてモンスターを仲間にできない世界一ダメなテイマー』という、ありのままの自分を受け入れれば、万事解決っす」


 だけど、リーヌは叫んだ。


「あきらめるもんか! すべてはアタイの野望、ふわふわもこもこキュートなモンスターたちと暮らすほのぼのライフのために!」


 こうして、おれはリーヌと手配魔獣を倒しに出かけることになった。


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