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2-4 帰宅

 さて、おれ達はとりあえず魔王城からリーヌの家に戻ることにした。

 ちなみに、ゴブリン先輩はあの後ゴブリン村に帰っていった。きっと今頃、村で最弱ゴブリン伝説を語っているんだろう。

 勇者に誘拐されて魔王城に連れてこられたノライヌ1号とノラネコ1世は、おれ達といっしょにサイゴノ町に戻った。

 町の端で解き放つと、ノラネコ1世は夜の散歩に出かけ、ノライヌ1号はなにげなくうちの庭に入っていった。別にうちの犬じゃない……というか、大家さんがペット禁止って言ってるから、飼えないんだけど。


 おれたちが魔王城を出た時は夕方だった。そしてリーヌの家についた時には、あたりはすっかり暗くなっていた。


「ふぅ、久しぶりの我が家っすね」


 いつ見てもひどいぼろ家に到着して、おれはつぶやいた。


「おう。長い散歩だったな」


 玄関のドアを開けながら、リーヌは言った。


「これ、散歩だったんすか? でも、そっか。実は日帰りだったんすね。おれは、気絶している内に何週間もたった……ように感じるけど」


 あっちの世界では何週間もたってたから。


「おれ、どれくらい気絶してたんすかね?」


 おれがたずねると、


「何周もたってるぞ」


と、リーヌは答えた。


「こっちでも、何週も!? おれたち、そんなに長い間、魔王城にいたんすか!?」


「おう。アタイがゴブヒコの周りをひとりマイムマイムで6周して、ひとりジェンカを4周しても、おまえは、まだ起きなかったぜ」


「何周って、まわるほうのっすか!? てか、リーヌさん、なんでおれのまわりをまわってんすか? おれはキャンプファイヤーじゃないっすよ。……それに、かなり、さみしくないっすか? ひとりマイムマイムにひとりジェンカって」


 リーヌは、暗い調子で言った。


「さみしかったぁー。もう心が折れるかと思ったぜ」


「じゃあ、やめてくれっす。おどる必要も、まわる必要も、ないんすから」


「だから、つぎは、盆踊りにしてみたんだ」


「まだ続けたんすか? てか、ひとり盆踊りも、さびしいっすよね?」


「うむ。アタイの心はさみしさで傷ついた。おまえのせいだ。チクショー。ずっと、シカトしやがって。なんかしゃべれよ。なんで、ずっと、だまってんだよ。無視すんなよ!」


 リーヌは理不尽におれを責めた。


「気絶してたんだから、しょうがないっす」


 でも、リーヌは、ブーブー文句を言い続けた。


「乙女の心を傷つけやがってー。ゴブヒコのくせにー。よし、とっとと風呂いれろ」


「はいはい、風呂っすね」


 というわけで、家に帰るなりおれは風呂を洗いお湯をはった。

 風呂の用意を終えて出ようと思ったところで、おれは気がついた。


「あれ?」


 なぜか風呂場に、パンダのぬいぐるみが落ちている。


「なんでこんなところに?」


 おれは手をのばして、ぬいぐるみをとろうとした。でも、つかもうした時には、なぜか、パンダは消えていた。


「あれ? へんだな。目の錯覚? まぁいいや。パンダなんてどうでも」


 おれは気にせず、リーヌを呼びに行った。


 リーヌは風呂に入った。

 風呂から出てきたリーヌが、タオル一枚でうろうろしているのを眺めていると、ギロッとにらみつけられたので、おれは退散して、風呂に入ることにした。

 風呂場には、脱ぎ捨てられたリーヌの服が散らかっている。


「ったく。あいかわらず散らかし放題だし。なんでこんなに散らばるんだよ。せめて同じ場所に置いとけよな」


 大家さんに見つかるとしかられるので、おれは散らばった服を集めていった。

 でも、落ちているシャツを拾おうとしたとき、なぜか、そのシャツが床をすすすすすーっと動いて行った。


「な、なんだ?」


 おれがびっくりしている間に、シャツはどこかに消えてしまった。


「うーん、おれ、真城さんに殴られて、頭おかしくなったのか?」


 いくらここが異世界でも、いくらこの家が何度も事故物件になっていそうなボロ屋でも、おれが知る限り、以前はこんな怪奇現象はおこっていなかったはずだ。


「不気味だ……」


 そう思いながら、おれは風呂に入った。

 おれが風呂から出た時には、リーヌはもう、いびきをかいて寝ていた。

 おれも、すっかりつかれていたので自分の部屋である物置部屋に入って寝た。


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