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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-104 天空の魔女2

 おれは、リーヌに言った。

「リーヌさん、とにかく、天空の魔女を倒してくれっす。天空の魔女を倒さないと、シャバーもハコブネの動物も、助けられないんすから」

 リーヌは、うなだれたまま、言った。

「そ、そうだな。チクショウ。腹を決めるぜ。あたしは、気持ちに正直に生きる! たとえ、今、人生で最大のまちがいを、おかそうとしているとしても!」


 リーヌは立ち上がり、両腕を上げて構えた。

「行くぜ、ゴブヒコの母ちゃん!」

 リーヌには、もう迷いはなかった! ついに、天空の魔女を葬り去る……と、思ったんだけど。

「アタイはお前を、倒……」

と言ったところで、リーヌの声は、しぼんでいった。

「……せるのか?」 


 リーヌは、首をかしげている。

「リーヌさん、なんでまた急に自信喪失してるんすか?」

 おれがたずねると、リーヌは、深刻な表情で、言った。

「アタイはどんな女でも倒せる自信があるけどよ。おまえの母ちゃんにだけは、勝てる気がしねぇ……」

 おれは、びっくりして力説した。

「えぇ!? 倒せるっすよ。おれの母ちゃんなんて、ただのパートのおばちゃんなんすから。リーヌさんは最強っすよ? 足の小指一本、まちがってぶつけるだけで、おれの母ちゃんくらい倒せそうっす。まぁ、ここにいるのは、天空の魔女だから、おれの母ちゃんよりは、強いかもしれないっすけど」


 ところが、天空の魔女は、リーヌにむかって、きっぱりと言った。

「むりよ、むり。そいつ、信じられないほどのスパパラマザコンだもの。『母ちゃん』には、絶対、一生、勝てないわよ~」

 リーヌは、顔をゆがませた。

「やっぱりか。やっぱり、アタイは、ゴブヒコの母ちゃんには勝てねーのか。だよな。勝てるわけねーよな。母ちゃんは人生を棒にふりながら、超手のかかるダメヒコをしっかり育ててきたんだもんな。しょせん、アタイは、2番目の女どまり……」

 また、意味不明に落ちこむリーヌに、おれは叫んだ。

「リーヌさんなら、ぜったい勝てるっす! だから、早く天空の魔女を倒してくれっす!」


 リーヌは、真剣な表情で、おれに問いかけた。

「おまえは、母ちゃんじゃなくて、アタイを選ぶのか? もしも、アタイとおまえの母ちゃんの間で、YS戦争が起こったら。おまえはどっちの味方になるんだ?」

「YS戦争? そんな戦争、聞いたことないんすけど?」

 おれは、脳内で、モビルスーツに乗った母ちゃんとリーヌの戦いを想像した。……これは、MS戦争だな。

「一年戦争とかじゃなくて? YSって、なんすか?」

 おれがたずねると。

「そりゃ、ヨ、ヨ、ヨヨヨ……」

 リーヌは、ヨヨヨヨ言いながら、なぜか赤くなった。

「ヨヨヨヨヨ?」

「……シュート!」

 リーヌは、なぜか、とつぜん、ぎゅっと目をつぶって、サッカーボールをけるかのようにキックをした。……なにやってんだろ、このカエル様。

 天空の魔女は、あきれたような声で、つぶやいていた。

「メがないわねぇ~」


 なにはともあれ、おれは、まじめに考えた。

「サッカー勝負なんすか? PK? おれ、体育でサッカーの時は、『たのむから味方の邪魔しないでくれ!』『おまえなんて、ずっと、味方のゴールネットにからまって網にかかった魚のふりをしてろ!』って、言われてたんす。つまり、おれはチーム分けの時、味方にいれたくない男ナンバー1だったんす。だから、どっちの味方をするかと言われても。味方をすることが味方になるのか、敵になることが味方になるのか……」


 おれが、その哲学的な難問を考えていると。

 リーヌは、真剣な表情で、もういちど、おれに質問をしなおした。

「じゃ、じゃあ。20メートル先に、おまえの母ちゃんと、アタイがいて、エサをもって、おまえを呼んでいたら。おまえは、どっちにむかって走っていくんだ?」

「なんすかその競技? おれは犬っすか? ……ちなみに、もってるエサは、なんすか?」

と、おれは、いちおう、たずねてみた。

 だって、やっぱ、犬としては、そこは、エサの種類によるからな。ただのカリカリドッグフードと、人もうらやむ高級ステーキや焼き魚、じゃ、ぜんぜん違うもん。


 リーヌは、おれの質問を予想していなかったように、一瞬、とまどった様子をみせた。

「なに? ……じゃ、おまえの母ちゃんは、母ちゃんの一番得意な手料理。アタイは……」

 リーヌは、そこで、真剣な表情で考えこんだ。

 リーヌは、料理なんてできないもんなー。


 そして、リーヌは、まるで奥義をくりだすかのように、力強く言った。

「あたしは……こっそりカトーチャンにもらった数量限定販売『黄金のスライムまんじゅう』だ!」

「『黄金のスライムまんじゅう』!? 黄金色に輝いた皮の中に特製金ゴマあんが入っていて、まんじゅうなのに翼まではえちゃっている、あの『黄金のスライムまんじゅう』っすか!?」

 おれが昔いた世界では、『黄金のスライムまんじゅう』は、おれが買いに行った時には、すでに売り切れだった。

「そりゃ、リーヌさんを選ぶっす! まちがいないっす!」

 この世界にも、スライムまんじゅうがあったなんて。おれは、やっぱり、この世界に永住する!


 おれの返事を聞いたリーヌは、歓喜の叫びをあげた。

「アタイが勝ったどぅぉーーー! アタイは、母ちゃんに勝てるどぅおーーー!」

 リーヌは、天空の魔女にとびかかり、こん身の右ストレートを撃ちこんだ。


 リーヌの一撃を受けた天空の魔女は、まるで、煙のように、ぐにゃりと曲がった。

 そして、空中に一瞬、夜空の花火のように青い光が放たれた。

「あらあら~。いいのかしらね~。ま、あとは神様に……」

という声だけを残して、天空の魔女は消えた。


 なんかよくわからない戦いだったけど、おれ達は天空の魔女に勝利した。


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