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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-103 天空の魔女1

 天空の魔女は、リーヌにむきあい、言った。

「そりゃね。あなたがその気になれば、簡単に落とせるわよ。ついさっきまで、あなたは気がついていなかったみたいだけど。脈なんて、世界中の鉱脈山脈足しあわせた以上に、ありまくりよ。でも、それでも、わたしは言っとくわ。あなた、後悔するわよ~? このわたし、山田葵みたいに」

 若かりし母ちゃん=山田葵にそっくりな天空の魔女は、胸に手をおき、舞台で演技をするかのように、感情をこめて語りだした。

「『愛がすべてだ』なんて、思っちゃうのよね、若い頃は。恋なんて、3年もすれば冷めるのに。ああ。お立ち台最後の女王と言われたわたしには、3高男が群がっていたのに……」


 ちなみに、3高とは、国立魔法大学付属の高校ではなく、高学歴・高身長・高収入のことらしい。

 母ちゃんが若い頃は、それがモテる男の条件だった。と、昔、母ちゃんが言っていた。顔が入ってないのが、ちょっと意外だ。


「な、なんか、おもいっきり、母ちゃん世代の話がはじまったぞ……」

 まるで本物の母ちゃんが昔話しているみたいで、すんごい、いやなんだけど……。

 青い妖精=天空の魔女は、本物の母ちゃんではない。と、わかっていても、これだけそっくりだと、気色悪い。なんだか、母ちゃんが若返って話しているとしか、思えない。


 天空の魔女は、嘆いた。

「なのになのに、どうしてか。わたしより低学歴低収入、背も高くない、あのダメ男に恋してしまったのよ~」

 それから、天空の魔女は、人差し指をたて、リーヌにむかって、言った。

「お嬢ちゃん。よく聞きなさい。ダメ男を『わたしが育てるんだ~』なんて思っても、ムダなのよ。ムダ。男は、そう都合よく育たないの。むしろ、あの男なんてどんどん退化したのよ! 結局、捨てることになったわ」

 天空の魔女は、一瞬、40代の姿に戻って、リーヌにむかって言った。

「そして、永遠に終わりそうにない子育てに振りまわされている内に、時はあっという間に過ぎ去って、すっかり、この姿に」

 なぜか、そこでリーヌが、がっくりと床にひざをついた。

「リーヌさん!?」

 どうやら、天空の魔女はリーヌにむかって、精神攻撃をくりだしているようだ。

「う、うぅ……なんか、気がめいってきたぜ」


「しっかりしてくれっす。リーヌさんなら、天空の魔女でも一発ぶん殴れば、勝てるっす。だから、早く、天空の魔女に攻撃してくれっす」

 でも、天空の魔女の正体を理解していないリーヌは、なんだか、小さな声で、もごもごと言った。

「だ、だけど、あいつは、おまえの母ちゃんなんだろ? 母ちゃんを殴っちゃまずいだろ? 仲よくしねぇと……だ、だって、おまえの母ちゃんは……アタイの母ちゃんになるかも……」


 それを聞いて、おれに、衝撃が走った。

 おれは、気がついてしまったのだ。

「ま、まさか!? 実は、リーヌさん……」

 おれの母ちゃんが、リーヌの母ちゃんになる。

 それが意味することは、ひとつ。

 ちょっと考えられないことだったから、今まで思いもしなかったけど。

 それは、つまり……。


「リーヌさんは、おれの妹なんすか!?」

 リーヌは、びっくりして、叫んだ。

「な、なにぃ!? おまえは、アタイの兄貴だったのか!? ぜんっぜん、似てねぇぞ!? マジか……。それは、ちょっと、人生計画考えなおしだな……。じゃ、やっぱ、シャバーニに……」

 だけど。そこで、天空の魔女が、全力で叫んだ。

「そんなわけないでしょ! わたしがもってる情報によると、99.9999999無限大%でありえないわよ! あんた達は、はとこですらないわ!」

 それを聞いて、おれたちは、安心した。

「な、なんだぁ。びっくりした」

「なんだ、ちげぇのか。びっくりしたぜ」

 おれ達が、安心して息をついていると。天空の魔女は、大きな、ため息をついた。

「あいかわらず、ずれまくってるわねぇ、あんた達は。思わず、助け船をだしちゃったじゃない」


 おれは、天空の魔女にむかって叫んだ。

「てか、卑怯だぞ! 青い妖精。母ちゃんの姿で惑わそうなんて。リーヌさん、あいつは、母ちゃんの姿をしてるけど、母ちゃんじゃないっす。母ちゃんは、もっと、ずっと、やさしいんすから。本物の母ちゃんは、おれに、ひどいことなんて、言わないっす。だから、きっと、あいつは幻覚魔法で、おれ達の精神に攻撃してるんす」

 天空の魔女は、冷たく言った。

「『幻覚』じゃなくて、『現実』っていう名の攻撃よ。むしろ、目を覚まさせてあげてんだから」


 そして、天空の魔女は、一瞬、40代の母ちゃんの姿に戻って、かつ、なぜかスーツ姿になって、冷たい声で言った。

「それにね、あなたは、うちには似合わないのよ。なんやかんやいって、うちは高学歴エリートサラリーマン家系なの。わたしをふくめて、みんな大卒。そのバカ息子だって、やる気をだしさえすれば、高卒認定とって大学にくらい行けるのよ? トータルではすんごいバカだけど、実は知能指数は高いから。今までだって、話があわないと気がついていたでしょ? 育ちがちがうのよ」

「ぐはぁーっ」

 リーヌは、派手に血を吐いた。


「だいたい、あなたに、かたぎの暮らしができるわけ? 今までだって、うまくいかなかったじゃない。うちのかわいいかよわい息子を、危ない抗争なんかに巻きこんでもらっちゃ困るんだけど?」

「う、うぅ……」

 リーヌは、もう、半分死人のように、床に倒れている。

「リーヌさん、しっかりしてくれっす!」


 天空の魔女は、おれ達をあざ笑った。

「どう? 現実は、どんな幻覚よりも残酷で、攻撃力が強いのよ」

 なんだかよくわからないけど、おれ達は、ピンチだ。


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