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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
161/170

4-100 蒼の騎士 1

 天空の魔女が宮殿内にひっこんだ直後。

「まかせろ。『大いなる厄災』は、おれが倒す」

 そう言って、蒼の騎士シャバーは、青い刀身の大剣を、さやから引き抜いた。

 おれを、殺すために。


 カエル艦長たちが騒いだ。

「天空の魔女様がさずけたウルテマウェポンだロゲ!」

「天空の魔女様がさずけた伝説の剣だワグ!」

 おれは、震え、叫んだ。

「うわっ。いかにも究極の武器っぽい名前! ぜったいに、おれを倒すには必要ない武器っぽい!」


 カエル艦長たちは、さらに説明を続けた。

「この剣は装備者の体力を吸い取って剣にしちゃうんだロゲ。だから、ふだんは柄の部分だけなんだロゲ」

「持つ者の闘気の質で刀の形が変わんるんだワグ。だから、ふだんは、刀身がないんだワグ」

「だから、売ろうとしても売れないんだロゲ~」

「だから、売る手間かかりまくりなんだワグ~」

 おれは、自分の命が危険にさらされていることも忘れて、おもわず叫んだ。

「それでウルテマウェポン!? ダジャレとかいれるとまぬけになっちゃうだろ! その説明いらないから! よけいなこと言わずに、究極の武器って言っとけよ!」


 リーヌは、とまどったように言った。

「シャバー、どうしちまったんだ?」

「もしかしたら、シャバーさんは、天空の魔女に操られているのかもしれません」

と、ホブミが言った。

 でも、蒼の騎士ことシャバーは、きっぱり否定した。

「操られてなど、いない。俺は、天空の魔女から真実を聞いただけだ。俺は、俺の意志で、『大いなる厄災』を倒すために、ここにいる」


 ホブミは、あっさり、うなずき、小声でつぶやいた。

「ですよね。真実の1%を知っただけで、十分、ゴブヒコさんを殺したくなりますから。その上、ゴブヒコさんのせいで、世界中が、家族や大事な人たちまでが、危険にさらされているとなれば。殺さない理由は、どこにもありません」

「なんで、こっそり、こわいこと言ってんだよ。ホブミ。仲間だろ?」

と、おれが言うと。ホブミは冷たく、とげのある声で言った。

「私は、リーヌ様の仲間ですが、ゴブヒコさんの仲間ではありません。むしろ、敵です。残念ながら、今は私は敵になれませんが。殺意は、たしかです」

 ホブミは、いつもそんなことを言っていたけど。それは、ツンデレ的なやつか、ただの毒舌だと思ってたんだけど。

 でも、ホブミの目には、たしかに、本気の殺意がみなぎっている気がする。……ホブミって、実は、いつも、本気だったのかも。


 蒼の騎士はウルテマウェポンを高くかかげた。おれの方を向いて。

「ギャーーー! おれが、ねらわれてるぅーーー! あんな強そうな武器なんてなくても、シャバーなら指一本で、おれを殺せちゃうのに。わざわざ、伝説の武器で、おれが、ねらわれてるぅー!」

 おれは、あわてて、ホブミの背後に逃げ込んだ。


 蒼の騎士は、大剣を振り降ろした。


溢闘霊弾(いっとうりょうだん)蛇鎚義理(たてぎり)


 おれは、ホブミの白いドレスの後ろで、しゃがみこみ、頭を抱えて、できる限り、体を縮めた。

「ギャーーーー!」

 叫んで目をつぶって3秒後。

 おれは、まだ死んでなさそうだった。

 ホブミが、シャハルンの盾で、シャバーの攻撃をはね返したのかと思ったんだけど。

 おれが目を開けて、ホブミのかげから顔を出して様子をうかがうと。

 リーヌが素手で、蒼の騎士のウルテマウェポンを受け止めていた。

 リーヌの手がふれている部分、ウルテマウェポンがぐにゃりと曲がっている。


 蒼の騎士シャバーは、後方へ跳びしざり、大剣を構えなおした。

 リーヌの力で変形していたウルテマウェポンの刀身は、もとの形にもどった。

 普通の剣なら、リーヌが破壊して終わりだったんだろうけど。持つ者の体力と闘気で形を成すウルテマウェポンには、武器破壊は通用しそうにない。


 カエル艦長は、楽しそうに、げんこつをふりあげながら、叫んだ。

「蒼の騎士様! こんどは全体攻撃だロゲ!」

「そしたら、後ろのやつらにもあてられるんだワグ!」

 おれの脳裏に、いつか、ヒガシャ町ちかくの森で、シャバーが、どう猛なモンスターの大群を一瞬で切り刻んだ光景が、うかんだ。

「ギャーーー! おれの千切りができあがるぅーーー! おれは、野菜じゃないのに、千切りにされるぅーー!」


 リーヌは、シャバーにむかってどなった。

「シャバー! やめろ! やめてくれ! アタイは、おまえとは戦えない!」

「リーヌ。俺の敵は、おまえではない。『大いなる厄災』だ」

 そう言い、シャバーは、剣先を、ホブミの後ろにかくれているおれの方に向けた。

 おれは、がんばって主張した。

「いません。そんなところに、おれはいません。ほら、白いドレスしか見えないっすよ? 緑のゴブリンなんて、どこにもいないっすよ?」

 蒼の騎士シャバーは、まじめな声で言った。

「音と気配でわかる」


 ホブミは、バカにしたような横目で、ふくらんだスカートの後ろで小さくなっているおれを見た。

「このプープクリン。シャバーさんに、さしだしたいところですが。リーヌ様、ここは、一度退却を」

 ホブミは、移動魔法を唱えだした。

 だけど。ホブミが唱え終えても、何も起こらない。


 カエル艦長たちは、うれしそうに言った。

「ここでは、転移や戦闘離脱系の魔法とアイテムは、ぜんぶ無効なんだワグ~」

「だから、戦闘に集中できるんだロゲ~」

「ギャー! うれしくない、ボス戦仕様!」

 おれが叫ぶと、カエル艦長たちは、さらに、興奮したようすで言った。

「ついでに、魔法もぜんぶ無効にしとくんだロゲ!」

「運命の決戦の邪魔は、させないんだワグ!」


 二匹のカエル艦長は、大音量で合唱をはじめた。

「カーエールーのうーた―は♪」

「まーほーうをむーこーう♪」

「ロゲロゲロゲロゲ~♪」

「ワグワグワグワグ~♪」

 ホブミの口から、詠唱していた呪文が聞こえなくなった。なんの呪文を唱えていたのかは、わからないけど。

 ホブミは首をふり、たんたんと、あまり残念じゃなさそうに、言った。

「魔法を封じられました。私には、もう何もできません」


「カエル艦長たち、ただのお気楽ザコかと思ったら、そんな特技があったの? おれ、負けてるじゃん! カエル艦長たちは、おれと同類の、『自称・司令塔だけど戦闘では全く役立たず、なんやかんやいって足手まといだけど、チームに1人はいてほしい、お笑い担当ムードメーカーだよね?』って感じの存在だと思ってたのに~。てか、ホブミが魔法を使えないってことは、おれ、死んだら、蘇生してもらえなくて、終了!?」

 おれは、本当に命がかかっていることを理解した。だけど、必死になったおれは、そくざに有効な対策を思いついた。

「そうだ。先に、カエル艦長たちを倒すんだ! そしたら、ホブミの魔法は使えるようになる!」

 魔法が使えれば、とりあえず、おれがHP0の仮死状態になった時に、蘇生してもらえる……はずだよな? ホブミの背中は、なんか、むしろ即死魔法をかけそうなオーラ全開だけど?


 でも、カエル艦長たちは、歌いながら、言った。

「ワグワグワグワグ♪ 艦長専用シールドがあるから、そんなのむりだワグ~♪」

「ロゲロゲロゲロゲ♪ この艦長専用シールドは全ダメージ無効だロゲ~♪」

 艦長専用シールドというのは、たぶん、カエル艦長たちがもっている透明のシールドのことだ。


「そんなチート装備を、なんで、こんなカラフルカエル艦長たちが!?」

 おれは信じられなかったけど。ホブミは冷静な声で言った。

「今までの話を総合すると、彼らは、神の使いである七色の光のしもべです。神の使いから授けられた貴重な装備をもっていても不思議はありません」

 つまり、神の使い=青い妖精=天空の魔女が、カエル艦長たちに、チート装備を与えたのか……。

「青い妖精のやつ、おれには何にもくれなかったのに! おれにくれよ! そのチート装備!」


 カエル艦長たちは歌いながら言った。

「これはハコブネ艦長専用だロゲ~ロゲロゲロゲロゲ♪」

「ハコブネ艦長以外は装備できないワグ~ワグワグワグワグ♪」


「おそらく、彼らの盾は、この艦船ハコブネのシールドと連動して効力を発揮しているのでしょう」

と、ホブミは言った。

 おれは、もういちど、考えた。

「てことは、艦長専用シールドがあるから、カエル艦長たちは倒せない……」

 そして、カエル艦長たちを倒すことができないとなると。考えつく手はひとつしかない。

「じゃあ、もう、リーヌさんに、シャバーを倒してもらうしかないっす」

 でも、リーヌは、悲痛な声で言った。

「シャバーを傷つけることなんてできねぇ!」


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