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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-99 大いなる厄災2

 カエル艦長たちが、「大いなる厄災」は、おれのことだと叫んだ直後。

 それまで、ぽかんと、何もわかってなさそうな顔で、話を聞いていたリーヌが、おどろきの声をあげた。

「なにぃ!? ゴブヒコは大きな野菜だったのか!? ゴブリンじゃなくて、野菜だったのか……。たしかに、緑だけどよ。食ったことねぇから、わからなかったぜ」

「野菜じゃないっす! リーヌさん、いまだに『大いなる厄災』のことを、『大いなる野菜』だと思ってたんすか!? 世界を滅ぼす大きな野菜って、なんすか、それ? おれは、野菜じゃなくて、ゴブリンっす!」

 ホブミが、そこで、口をはさんだ。

「いいえ、リーヌ様が、おっしゃるのなら、きっと、ゴブヒコさんは、野菜です。それに、野菜だとしたら、この弱さにも説明がつきます」

「たしかに、野菜だったら、戦闘力ゼロがあたりまえだけどさ! ホブミまで、まじめな顔で、冗談言うなって。さっきまで、シリアスモードだったのに……今の、冗談だよな?」

 でも、ホブミは、真顔だ。

 ホブミは、リーヌの言うことは、まるで神様の言うことかのように、むりやり真実にしちゃうからなぁ。


 おれは、リーヌに説明した。

「カエル艦長たちが言っているのは、世界を滅ぼしかけていて、ハコブネ計画の原因になっている、『大いなる厄災』の話っす。つまり、モンスターが誘拐されているのも、フーじぃのサファリパークがつぶれかけるきっかけをつくったのも、あちこちで噴火や天変地異が起こっているのも、アサシンと騎士団が必死になっているのも、ぜーんぶ、おれのせいだって、カエル艦長たちは、言ってるんす」

 もし、これ、ほんとうだったら、おれって、世界一、迷惑なやつだな。

「でも、おれは、『大いなる厄災』なんかじゃないっすよ? おれが聞いた話では、『大いなる厄災』は最強のイケメンなんすから。だから、激弱でブサイクな、おれのはずはないっす」


 でも、おれは、そこで、とある可能性を思いついた。

「……それとも、おれって、無自覚なだけで、実は、最強のイケメンだったの!?」

 カエル艦長たちは、即座に否定した。

「んなわけないだロゲ」

「ありえないんだワグ」


「なーんだ。やっぱり、おれは、ただの善良なゴブリンだった」

と、おれが言うのは無視して、カエル艦長たちは言った。

「『大いなる厄災』は、最強やイケメンじゃなくていいんだロゲ。女神さまは、たぶん、ちょっと、感覚がおかしいんだロゲ」

「『大いなる厄災』は、最弱でもブサメンでもいいんだワグ。女神さまは、たぶん、ちょっと、趣味がおかしいんだワグ」


 とつぜん、リーヌが、くしゃみをしだした。

「ハーックション。ヘーックション。あんだか、くしゃみが、とまらねぇな。風邪か?」

「私は、噂をされるとくしゃみがでる、という迷信を連想してしまいましたが。リーヌ様が風邪とおっしゃるのなら、きっと風邪でしょう」

と、ホブミは、おごそかに言って、風邪回復魔法とやらをかけた。


 おれは、カエル艦長たちに言った。

「いや、なんの話だかわからないけど。かってに、ぜんぶ、おれのせいにするなよ。おれは、どこをとっても善良な平和主義者のゴブリンなんだから。おれは、『大いなる厄災』って呼ばれるようなことは何もしてないぞ?」

 カエル艦長たちは、冷たく言った。

「おまえ、たくさん、しでかしてるはずだロゲ」

「だから、異常気象とか噴火とか起こるんだワグ」

「いやいや、それ、おれとは関係ないって。心当たりなんて、まったくないし」

 おれが、そう言った瞬間、ホブミが、大きく舌打ちをした。なぜか、ホブミから、むちゃくちゃ暗黒オーラがたちのぼっていた。

 おれの言うことは無視して、カエル艦長たちは続けた。

「それに、他にも、おまえのせいで、世界の歪みや異常事態が、起こってるんだロゲ」

「そもそも、おまえはこの世界への侵入者なんだワグ。ここにいること自体が、異常なんだワグ」


「いや、言ってる意味が……」

 わからない、と言おうとして、おれは、気がついた。

 たしかに、おれは、別の世界の人間だ。

 なぜだかわからないけど、転生してここにいるけど。

「でも、異世界転生って、よくあることじゃん? 異常どころか、テンプレの中のテンプレだろ?」 

 まぁ、転生した結果がこんなに弱くて、しかも、いつまでたっても弱いまま、なんてのは、むしろテンプレの反対だけど。


 ハコブネ艦長たちは、首をかしげた。

「天ぷらの中の天ぷら、ってなんだロゲ?」

「えび天じゃないワグ? ちがうなら、わからないワグ」

「すんげぇ、うまそうだな。天ぷらの中の天ぷら」

と、リーヌが舌なめずりをした。

 おれは、真剣に天ぷらを想像している、赤、黄、緑の3匹のカエルにむかって、全力で叫んだ。

「天ぷらじゃなくて、テンプレ! 異世界転生はテンプレ、つまり、異世界転生は、人気で、みんな、さんざん見てきた話ってことっす!」


 でも、ハコブネ艦長たちは、また、首をかしげた。

「イス回転せぇ? 見たことないロゲ?」

「イスを回転するワグ? 見たことないワグ~」

「なに? 見たことねぇのか? じゃ、アタイが、見せてやるぜ!」

 リーヌは、甲板のはしにあったビーチチェアを、まるでバスケットボールか何かのように、ひとさし指の上で回しだした。

 艦長たちは、よろこんで拍手をした。

「イス回転せぇ、たのしいのだロゲ~」

「たしかに、いくらでも見られるワグ~」

「よっしゃ、次は、パラソルの上でまわしてやろう!」

 そんな楽し気な3匹のカエルにむかって、おれは叫んだ。

「『イス回転せぇ』じゃなくて『異世界転生』っす! なんすか、その、超人的な宴会芸!」


 とりあえず、つっこんでから、おれは、この事態について、真剣に考えた。かってに、「大いなる厄災」なんかにされちゃ、たまったもんじゃない。

「だいたい、おれ、好きで転生したわけじゃないんだから。なんだかよくわからないけど、青い妖精、てことは、つまり、天空の魔女に、転生させられてここにいるんだぞ? だったら、全部、天空の魔女のせいじゃないか!」


「あーら。勝手にわたしのせいにしないでくれる?」

 青い妖精の声が響いた。

 ハコブネに隣接している蒼の宮殿のバルコニーに青い妖精、いや、天空の魔女がいる。

 おれは、宮殿のバルコニーめがけてどなった。

「あ、青い妖精! おまえ、どういうことか、ぜんぶ説明しろ! なんで、おれが、『大いなる厄災』あつかいされなきゃいけないんだよ!」

「そんなこと言われても~。わたしには、あんたにすべてを説明する権利なんてないの。知りたかったら、直接、女神様に聞きなさいよ」

 なんだかよくわからない言い逃れをする青い妖精に、おれは、びしっと反論した。

「女神様になんて、会えないだろ! おれ、この世界に来てからずっと、女神様でてこないかなーって、期待して待っているのに、いっこうに、あらわれないぞ?」

 天空の魔女は、おれにむかって、全力で、どなりかえした。

「とっくにあらわれてるわよ! あんたが気づいていないだけで。女神様も神様も、ずっとあんたのそばにいるんだから!」

「いやいや、そういう、『神様はつねにあなたのそばにいてくださります』みたいな宗教的なのは、いいから」

 天空の魔女は、あきれた、とでもいうように、首を横にふった。


 おれは、さらに、天空の魔女に文句を言った。

「それに、なんで、おまえ、モンスターを誘拐したり、かってに、この世界を消滅させようとしてるんだよ!」

 天空の魔女は、髪の毛をかきあげると、言った。

「それはね~。一言でいうと、社畜の反逆よ。わたしは、この世界の管理者のひとりなんだけど。あんたがこの世界に来た時に、不幸にも、あんた対応のお役目をちょうだいしちゃったわけ。窓口、ナビゲーター、監視役、そして、世界の調整役……むちゃくちゃブラックに働いてきたんだけど。もう疲れちゃったのよね。なんだかこう、社畜、プチッと切れちゃった。みたいな感じ~」


 天空の魔女は、深く長いため息をついてから、話をつづけた。

「だから、そろそろ、ポチッと、リセットボタンを押したいかなー、って思って。やたらと、あんたの肩をもつ神様も、いいかげん賛成してくれたから。だから、もう、あんたには、おさらばしてもらって、この世界はリセットしようと思って、ハコブネ計画A案を考えてみたの。でも、あんたさえいなくなってくれるなら、ハコブネ計画Bでも、青の騎士による『大いなる厄災』討伐でも、どれでもいいの。とにかく、あんたのいない世界をつくって、わたしは、休暇をとって、リフレッシュしたいのよ」

 天空の魔女の言うことは、半分くらいわからなかったけど。休みがほしいから、リセットボタンを押して世界を消去しようとしているらしいことは、わかった。


「な、なにを、よくわかんないけど壮大に勝手なことを言ってんだよ! リセットボタンとか押さないで、セーブして、勝手にバカンスに行けばいいだけだろ?」

と、おれが言うと、青い妖精こと天空の魔女は、さらに、わけのわからないことを言った。

「そうはいかない状態でしょ~? セーブポイントなんて、出現しないわよ。こっちできっちり片をつけないと。だって、もう、待ったなし。YesかNoか、言わなきゃいけないわけよ? でもね、わたしは、Yesを選んで、あんたみたいな存在は、きれいに忘れるのが一番だと思うの。わたしが、どうこう言うことじゃないんだけど」

 天空の魔女は、おれから視線をはずし、バルコニーを歩きながら言った。

「だって、もともと、そうなる予定だったんでしょ? あこがれの男と人生をやり直せばいいじゃない? たとえ、それが、わたしの未来予測によると、闇社会の支配者コースだったとしても。その方が、この世界は安定するわけよ。あっちの世界がどうなろうが、わたしは、知ったこっちゃないわ。むりして平和にほのぼの生きようとしなくたって、自然に悪のカリスマとして生きればいいじゃない?」


「なに、わけのわからないこと言ってるんだよ!」

 おれが、文句を言うと、天空の魔女は、冷たい目でおれを見て、言った。

「わからないってことが、あんたの罪よ。気づこうとする勇気すらないんだから。乙女心はデンジャラスなのよ! といっても、別に、わたしは、あんただけが悪いとは、思わってないんだけどね。だって、あんたたち、どっちもどっちよ? どんだけ不器用なのよ。ま、でも、覚悟もないのに、ふらふら近づいて行ったあんたは自業自得よ~。じゃ、蒼の騎士、後は任せたわ。さくっと、『大いなる厄災』を倒してちょうだい」

 天空の魔女は、おれ達に背を向け、宮殿の中へと去って行った。

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