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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
152/170

4-91 入場ゲート

 おれ達は天国の階段をのぼることにしたんだけど。何の策も思いつかなかった。

「よし、行くぜ」

と言って、リーヌは、入場ゲートにむかって、堂々と歩いていった。

 おれ達は、その後ろをついていった。

「よお」

と、リーヌは、入場ゲートのケロット団員に、片手をあげて、フレンドリーにあいさつして、なにげなく通行しようとした。

(な、なるほど。「堂々と行けば、バレない作戦」か……)

 いくらなんでも、むちゃだろうけど。でも、リーヌはカエル人間の姿だから、意外といけるかも。


「通行許可証、見せてケロ」

と、ケロット団員は、言った。

「忘れちまったぜ。今日だけ、通してくれよ。ほら、アタイの顔、おぼえてるだろ?」

と、リーヌが言うと、ケロット団員は言った。

「どっかでみたような気はするケロ、ここでは見てないケロ。許可証がないと、通行できないケロ。1億Y払って入場券を買うか、通行許可証を持ってくるんだケロ」

「あんだよ。いいじゃねーかー」

と、リーヌが、ごねだしたところで。

 後ろからシャバーが割って入った。

「通行許可証ってのは、これか?」

 シャバーは手に、青いカードをもっている。

「そうだケロ」

と、ケロット団員は、うなずいた。


 おれは、おどろいてシャバーにたずねた

「それって、今朝の封筒に入ってたやつっすか?」

 シャバーが手にしている通行許可証は、シャバーの枕元に置いてあった、いかにもサギっぽい手紙に同封されていたカードだ。たぶん。

「でも、たしか、ごみ箱に捨ててたっすよね?」

 おれは、ごみ箱をあさって確認したんだから、まちがいない。

「いつのまにか、また、ポケットに入ってたんだよ」

と言って、シャバーは、水色の封筒をとりだしてみせた。


 受付のケロット団員は、シャバーの通行許可証を入場ゲートにかざし、

「はい、1名様ご入場」

と、言った。

「え? 1名? 入れるのシャバーだけ?」

と、おれがききかえすと、ケロット団員は、きっぱりと言った。

「許可証もってる人だけだケロ」

「アタイも通るぞ」

と、リーヌは、当然のように言った。

 けど、ケロット団員は、きっぱり言って、リーヌの前に立った。

「だめだケロ」

「あんだよ。さっきから。通せんぼしやがって」

と、理不尽に怒りだしそうなリーヌを制止して、シャバーは言った。

「おまえらは、ここで待ってろ。『オトメノキッスイ』とかいうのは、俺がとってくる」

 リーヌが何かを言う間もなく。シャバーは1人、入場ゲートを通過し、奥のエレベーターホールに進み、すぐにエレベーターに乗り込んで消えてしまった。


 おれは、リーヌに言った。

「しかたないっすね。そこのお土産屋さんで、天国のソフトクリームでも食べて待ってるっす。ひとつ、3000Yもするっすけど。ふわふわでとろける味らしいっすよ?」

 でも、リーヌは、ぶすっとした顔のまま、動かない。

 と思ったら。

「待ってられねぇー!」

 リーヌは叫んだ。シャバーがエレベーターに乗っていなくなってから、たぶん5秒後くらいだ。

「早っ。どうせプリケロさんが、黙って待ってるなんて、できないとは思ったっすけど。せめて1分くらい、待ったらどうっすか?」

と、おれは言ったんだけど、ホブミは明るく言った。

「1分も1秒も、違いはないのですー」

「そうだけどさ。いくらなんでも、秒単位じゃ、『待ってたんだけど、待ちきれなくて』とかいう言い訳もできないぞ?」

 そう、おれが言っている間に、リーヌは、キック一発、入場ゲートを破壊していた。

 かわいそうに、入場係のケロット団員は、その衝撃で、空中をふっとんでいった。


 近くにいた警備員のケロット団員たちが、ふっとんで倒れた入場係を抱えて、逃げていった。

 警報音があたりに響き渡る。

「行くぜ!」

と言って、リーヌは入場ゲート……があった場所、を跳び越えていった。

「やっぱこうなるんすかー」

 おれが、ぼやくと、ホブミは、ちょっと楽しそうに言った。

「他の方法は、ありませんですー」

 なんやかんや言って、ホブミは、いつも、リーヌの暴走を楽しんでるんだよなー。

 

 ところで、警報音は鳴り響いているけど、敵は出てこない。ケロット団員達もいなくなったから、おれたちを邪魔する敵は、いない。

 だから、おれは、その場で立ちどまって、つぶやいた。

「なんか、意外と平和に入れるんだなー。でもやっぱり、この先は危なそうだし、おれとプップはおとなしく、そこの展覧会かお土産屋さんで待ってるってのも、いいかもなー。どうしようかなー」

「ププッ プププー」

 プップはやる気満々に鳴いた。

「えー? プップは行くの?」

 おれたちが、そんな会話をしていると。

 なぜか、後ろから、騒がしい音がした。


 おれが振り返ると。

 赤いハートマークがついた白マントの騎士団と、白黒フードの暗殺者たちの集団が、なぜか、こっちにむかって、ものすごい形相で走ってくる。

 騎士団員は叫んだ。

「いたぞ! あの怪しい疫病神モンスターめ! よくも、はかってくれたな!」

 アサシンは叫んだ。

「いたぞ! あれが、電波ジャックし、阿鼻叫喚を引き起こしたモンスターだ!」

 騎士団員もアサシンも、みんなが叫んだ。

「あいつを、殺せ!」


「ププーーッ!」

「ギャーーー! おれは、なにもしてないどころか、みんなを応援してたのにぃーー! プリケロさーん! 助けてー! プリケテー!」

 おれは、あわてて、リーヌ達の後を追って走り出した。

「なに? プリケテだと? よし、プリケルぞ」

 ふりかえったリーヌは、はじけた感じで、プリプリにおどりだした。

「プリケルって、おどるの!? おれは、助けてほしいんすー!」

 リーヌは、おどってるし、後ろからは、攻撃が飛んできそうだし。

(これはもう、ダメかもしれないー!)

 だけど、おれが、必死に入場ゲートを通過中。おれの頭上から、非常用シャッターがおりてきた。

 おれが、ゲートを抜けたところで、ちょうど、おれの背後に分厚いシャッターがおりた。


 閉まりかけたシャッターの向こう側で、騎士たちと、暗殺者たちが、騒いでいる。

 というか、騎士とアサシンの攻撃が、ビシバシ、シャッターにぶつかっている音がする。

 でも、シャッターは、壊れない。シャッターは完全に閉まり、騎士と暗殺者の攻撃の音は小さくなり、警報音にかきけされて、ほとんど聞こえなくなった。


「あんだ? あいつら、おまえのダチか?」

 リーヌは、おどりながら、おれにたずねた。

「ぜんぜんダチじゃないっす。おれを殺しに来た人達っす。プリケロさんが踊っている間に、おれは、あやうく殺されるところだったんすよ? あーあ。おれは、何も悪いこと、してないのにぃー。むしろ、みんなに協力してあげてただけなのにぃー。なんで、おれが命をねらわれるんだよー」

 おれが、なげいていると、ホブミが、言った。

「ホブミは、先輩が昨日、なにをしていたかは知らないのですー。でも、先輩の自業自得なのだけは、わかるのですー。それにしても、悪運の強いゴブリンですー。シャッターが後2秒、早く降りてくれれば、先輩は、シャッターの向こう側。とても、とても、助けられなかったのに、なのですー」

 ホブミは、残念そうに言いながら、メガネに魔法陣をうかびあがらせて、シャッターを見ている。

「なんとなんと。このシャッターは勇者学園の体育館の壁なみの強度があるのですー」

「え? あの、1億のダメージでも、うんぬんかんぬん、ってやつ?」

 おれが聞き返すと、ホブミはうなずいた。

「この天国への階段という建物は、外壁も、そのシャッターも、他では見たことのない物質でできているのですー。防御力が上限突破素材なのですー」


「オイコットの城壁技術ってやつ?」

 おれがたずねると、ホブミは、首を横にふった。

「こちらが先なのですー。ホブミが聞いた話によると、オイコットの工学者たちは、『天国への階段』の壁を研究して、城塞都市の城壁建築技術を編み出した、といわれているのですー。『天国への階段』は、ずっと昔からここにあるのですー。古代遺跡のひとつなのですー」

「へぇ。じゃ、古代文明のすごい技術、的なやつなのかー」

と、おれが感想を言うと、ホブミは言った。

「ホブミは信じていなかったのですがー。天空の魔女が、神々の使いだというウワサは、ウソではないかもなのですー」

「神々の使い? 魔女なのに?」

 でも、そういえば、天国入場料とか、書いてあったもんな。天国に行けるってことは、きっと、神様とコネがあるんだもんな。……サギじゃなければ。


 さて。おれたちは、シャバーの後を追って、エレベーターに乗ろうとした。

 でも。当然のように、エレベーターは作動しなかった。

「あんだ? エレベーターは、こわれてんのか。じゃ、階段で行くぞ」

と、リーヌは言った。

「えー。階段っすかぁー? お空の上まで? そんなの、おれ、登れないっすよ? もう、あきらめて、帰らないっすか?」

 すると、ホブミが言った。

「姫様を元にもどすまで、ホブミは帰らないのですー。でも、帰りたいなら、先輩ひとりで、かってにどうぞなのですー。暗殺僧兵団と教会騎士団に、たっぷり遊んでもらえばいいのですー」

 そうだった。シャッターの向こう側には、おれを討伐しにきた、騎士団員と暗殺者たちがいるんだった……。

 おれ一人じゃ、ぜったい、外に出られない。

 そもそも、おれには、あのシャッターをあけることもできないんだけど。

 というわけで、おれも延々と続く、らせん階段をのぼっていくことにしたんだけど……。

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