表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
140/170

4-79 新聞3

 勇者学園でおれ達が大暴れした、次の日の朝。おれはひとりで、というか、プップとおれだけで、朝の散歩にでかけた。

 プップ以外のモンスターは、いっしょじゃない。

 朝起きたら、他のモンスターは、みんな、いなくなっていたのだ。

 よくおぼえてないんだけど、フロル酒場に置いてきちゃったのかな?

 朝起きて、おれがプップに、

「プップ、他のモンスターがいないんだけど?」 

と、たずねると、プップは、いつものままの顔で、

「プッ」

と、当然だというふうに鳴いた。だから、プップは、まったく、心配していないようだ。

 まぁ、もともと、キモノキはプップがくわえてただけだし、アナイリードッグは、勝手におれのカバンに入ってただけで。そもそも、なんでいっしょにいるのかナゾだったんだけど。


 さて、おれが、ヒガシャ町で散歩をしていると、大通りの露店に人だかりができていた。

 売れに売れているのは、新聞だ。

 おれは、今朝、起きるなり、シャバーに、おねだりをしてもらってきたおやつ代で、新聞を買った。……ホブミに巻き上げられる前に使ってしまおうと、おれは、おやつ代をにぎりしめて宿屋を出てきたのだ。


 新聞の大ニュースは2つあった。1つ目は、「キニシナイノ火山が噴火!」というニュースだった。記事は、こんな感じだ。


ーーーーーーーーー

 《またも異常事態! 有史以来、一度も噴火しないことで有名だったキニシナイノ火山が噴火!》 


 決して噴火しないことで有名だったワイハ島の観光名所、キニシナイノ火山が、噴火してしまった。

 キニシナイノ火山のふもと町の町長によると、

「キニシナイノ火山のことは、これまで気にしていませんでしたが、もう気にしないではいられません」

とのことだ。


 さらに、噴火の影響なのか、突然、周辺の鉱脈が消えてなくなってしまったという。

 キニシナイノ鉱山管理会社の責任者は、「噴火と同時に、鉱脈が消えてしまいました。鉱脈無こう・みゃくなしでは、どうしようもありません。ショックです」と語っている。

 今夏は、地震、台風の被害に加え、突然のスイカ爆発病流行によってスイカ農家も大打撃を受けた。度重なる天変地異で世界経済への影響が心配される。


 なお、本紙の取材に、ピスピ教会の大司祭、預言者ダガロパ様は、こう解説してくれた。

「これもまた、『大いなる厄災』の影響でございます。世界は危機にひんしております。早く『大いなる厄災』の正体をつかみ、抹殺せねば。この世界は、滅んでしまうのでございますー!」

 暗殺僧兵団で有名なピスピ教会では、今後も、世界を救うための暗殺活動を行っていくとのことだ。


ーーーーーーーーー


「へー。天変地異って、ほんとに起こってたのかー」

 でも、おれが気になっていたのは、別のニュースの方だ。

「えーっと、なになに? 『勇者学園、大魔王軍の襲撃により、壊滅!』。あー。やっぱ、こうなったかー」

 新聞の記事によると。


ーーーーーーーーー

 《勇者学園、大魔王軍の襲撃により、壊滅!》


 ヒガシャ町の近くにある勇者学園が、大魔王リーヌ軍の襲撃を受けて、壊滅的なダメージを受けた。勇者学園は、城塞都市オイコットからの資金援助を受けて建てられた、未来の勇者を育てる学校だ。


 襲撃犯は、大魔王軍幹部の、<暴虐のカエル魔王プリンス>、<不死身の狂戦士ジョー>、<絶望の暗黒賢者ホナミ>、<白銀の魔戦獣将軍ホワイトケルベロス>、<失笑の道化師プープクリン>、の5名と、100匹あまりの狂暴なモンスターの軍勢だという。


 勇者学園の教頭、ハゲール先生によると、校庭じゅうをモンスターの軍勢がおおいつくし、猛攻撃を受けるなか、勇者学園の教職員と生徒達は、校舎がぼろぼろになるほどの激闘をゆうかんに戦いぬき、100匹近いモンスターのほとんどを倒した、とのことだ。

 さすが、勇者を育てる学校だ。

 しかし、大魔王軍の攻撃を受け、勇者学園の教師と生徒たちに多数の重軽傷者が出たうえ、学園長が拉致され行方不明になってしまっている。


 教頭のハゲール先生は、

「学園長先生がゆうかいされてしまったことが、残念でしかたがありません。こんなに残念なのは、私の髪の毛の最後の一本がなくなってしまった時いらいです。えぇ、正直、あの時の方が、もっとショックだったんですが、これは、ないしょですよ? あ、わかってくれます? なにしろ、最後の一本ですからね。とにかく、学園長先生のご無事をみんなで祈っています。はい、もう、抽選倍率1000倍という伝説の育毛剤の当選を祈った時と同じくらいの真剣さで祈っています。まぁ、正直、育毛剤の時の方が必死だったんですけどね。あ、これは、オフレコで。え? 育毛剤? はずれましたよ。ほら、この頭を見れば、わかるでしょ? ですが、なにしろ、学園長先生は、世界一残酷なサディストだという暗黒賢者に連れ去られてしまいましたから、もう帰ってはこられないかもしれません。かくなる上は、私が学園長となるしかないと、生徒達と教職員たちから、言われています。えぇ、もう、ほんとうに、学園長先生がいなくなってしまったことが、残念でならないのですが、もう、みんなが言うなら、私が新学園長になるしかないかな、と思っております」

と、本紙記者に、うれしそうに語っていた。


 当局は、ヒガシャに潜伏中といわれる襲撃犯、大魔王軍の行方を追っている。

 なお、城塞都市オイコットの首相は、勇者学園再建のための資金援助と、襲撃犯の逮捕のために、ヒガシャに派遣している鉄道警察の増員を行う、との声明をだした。

ーーーーーーーーー


 おれは、新聞を読みながら、感想を、つぶやいた。

「プリケロさんの名前、プリンスになっちゃってるぞ? ちゃんとプリンセスにしといてやれよ~。この新聞記事、デタラメばっかりだし。狂暴なモンスターの軍勢なんて、どこにいたんだよ。おれたちと、キモノキやアナイリードッグしかいなかったぞ? 全員の戦闘力をたしても、村人1人分にならないぞ?」


 なにはともあれ、予想通り、カエル魔王、シャバー、ホブミの3人は、ばっちり悪名を高めてしまっている。

 でも、おれの近くで新聞を読んでいた屈強そうな男達は、こんな会話をしていた。

「ジョーのやつ、また賞金があがってるな」

「俺も負けてらんねーぜ」

 ここは、無法者の町なだけあって、賞金首になって賞金が上がることは、うらやましいことみたいだ。


 ところで、新聞には、似顔絵つきの手配書が掲載されている。おれは、そのイラストをチェックしていった。

 カエル魔王と、シャバーは、わりと似ている。

 だけど、ホブミは……ぐしゃっとした顔の、お婆さんみたいに描かれている。

 まぁ、今回はホブミ、ゴブリンの姿だったもんな。目撃されたゴブリンの顔+人間の賢者のイメージを合成したら、こうなっちゃったのか?

 これだけ似てなかったら、その辺を歩いていても絶対にバレそうにないから、むしろいいことかもしれないけど。


 さて、勇者学園壊滅の記事の手配書は、あと2つある。<白銀の魔戦獣将軍ホワイトケルベロス>と<失笑の道化師プープクリン>のものだ。

「この、白銀の魔戦獣将軍ホワイトケルベロスって誰だろ?」

 ホワイトケルベロスは、頭が3つある狼みたいなモンスターだ。新聞によると、カエル魔王たちと一緒に、勇者学園を襲ったことになっているんだけど、おれたちのそばにケルベロスなんて、いなかったはずだ。

「ホワイトで犬っぽくて、おれ達と一緒にいたのって……ひょっとして、シロさん?」

 でも、手配書のホワイトケルベロスは、どう猛そうな、狼の頭が3つあるモンスターだ。

 ふつうに頭が1つしかない、かわいらしい子犬みたいなシロとは、ぜんぜん似ていない。

「やっぱ、ちがうかな? まぁ、これがシロさんのことだとしても、このイラストじゃ、ぜったい、バレないな」


 それから、おれは、ふと、ホワイトケルベロスのとなりにあった手配書の似顔絵を見て、ふき出した。

「うっわ、すっごいアホ面っ。この、失笑の道化師プープクリンってやつ、アホ面すぎだろ~」

「ププッ」

と、プップも笑った。

 ちなみに、<失笑の道化師プープクリン>だけは、懸賞金がかかっていない。というか、賞金のかわりに、「報酬:アメちゃん又はティッシュ1つ」と書いてある。

「この報酬、完全に、ハズレの残念賞だし~。しかも失笑の道化師って。失笑しちゃったら道化師失格じゃん。プープクリンって名前もへんちくりんだしなー。……プープクリン? なんかちょっとだけプップリンに近いけど。あと、このアホ面、なんとなーく、プップに似ているような気も……。ま、まさか、プップリンのことじゃないよな?」

「ププ? ププップゥ~ッ」

 プップは、「そんな、ありえないよ~」というように鳴いた。

「だよなー。そんなはずないよなー」

 おれは、安心して、新聞をたたんで、宿屋に戻ることにした。

 おれの近くで新聞を読んでいた屈強な男達が、

「お、プープクリンが歩いてるぜ?」

「手配書そっくりだな」

と、言っていた気がしたけど、ぜったいに、気のせいだ。

 気のせいに、ちがいない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ