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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-73 新・学校の怪談

 さて、平和主義者のおれは、考えた。

 リーヌに、これ以上の破壊活動をさせないようにしないと。

 とにかく、すみやかに、ここから脱出しないと。

 リーヌは、ここにいるだけで、色々と破壊していくからな。

「さぁさ。プリンセス。無事におれと合流できたし、モフモフ騎士ナイトといっしょに、おとなしく町に帰るっす」

と、おれが言うと、

「よし! 町に帰るぞ。おまえらも来い、ちっちぇー巨人! ハナコ!」

と、リーヌは、元気よく、人体模型と、廊下に置いてあった大きな鉢植えの花にむかって言った。


「え? ハナコ?」

 鉢植えの花は、人間と同じくらいの大きさの、ヒマワリっぽい大きな花だ。なぜか、サングラスをかけていて、ギターをもっている。

 おれは、さっきまで、これは、ただの、いたずらっ子にサングラスとギターをかけられちゃった鉢植えのヒマワリだと思っていた。

 でも、これ、鉢植えのヒマワリじゃないかも。

 なんか、びみょうに、さっきからあっちむいたり、こっちむいたり、動いている気がする。

 ヒマワリって、太陽の方に、花のむきを変えるから、そういうやつなのかな、って思ってたんだけど……。


「ハナコって、この花……?」

と、おれが、ヒマワリみたいな花の鉢植えを見ながら、つぶやいていると。

 ヒマワリっぽい花が、おれにむかって、草の手をふった。

「キモッ キモッ」

と、プップのくちばしの間でキモノキが、あいさつを返した。

「やっぱり、このヒマワリ、動いたっす! てか、ヒマワリじゃないっす! なんなんすか? これ?」 

 こんな感じの花をちっちゃくした感じのオモチャが、昔、ばあちゃん家にあったけど。でも、ばあちゃん家にあったのは、音に反応して踊る小さな鉢植えのオモチャで、こんな、人間サイズのやつじゃない。

 

「ハナコはトイレにいたんだぜ?」

と、リーヌは言った。

「ハナコがトイレにいたというより、プリケロさんが、トイレで見つけたから、かってにハナコって名前をつけちゃったんすよね?」

 おれが、たずねると、リーヌは元気よく答えた。

「おう。トイレにいたんだから、ハナコだろ? だって、花だろ?」

「それ、ふつうに考えると、『トイレの花子さん』、じゃなくて、『トイレのお花さん』っすけどね」

 どうやら、リーヌから「ハナコ」について、これ以上の情報を得ることは、無理そうだ。ぜったい、なにも知らないからな。


 だけど、今は、物知りなホブミも一緒にいる。ホブミが、説明してくれた。

「このお花さんは、ロックンフラワーというモンスターなのですー。座っているときは、鉢植えに見えるかもですが、鉢に見える部分の下に足もあるのですー」

「やっぱ、モンスターなのかぁ。だよなぁ。ただの植物なわけないよな」

 おれは、納得して、うなずいた。


「ロックンフラワーは、とってもとーっても、フレンドリーなモンスターなのですー」

と、ホブミが言うと、ロックンフラワーは、踊りながら、おれたちに草の手をふった。

「たしかに、とってもフレンドリーっそうっす。それに、モンスターなのにプリケロさんから逃げ出さないなんて。どんだけフレンドリー?」

 おれは、別に、質問したわけじゃなかったんだけど、ホブミは、どんだけフレンドリーか、説明してくれた。

「ロックンフラワーは、出会った人のお家に勝手に住み着いたりするくらいにフレンドリーなのですー」

「フレンドリーすぎ! こんなにでかくて目立つのが、いつの間にか、家の中に住み着いてるとか、ちょっと怖いんだけど!」

 ぜんぜん、おれの言ったことを気にしてなさそうなロックンフラワーは、もってるギターで楽しそうなミュージックを奏でた。


 ホブミは、さらに詳しく説明してくれた。

「ロックンフラワーは、人が多いところが好きだから、遊園地とかショッピングセンターとかによくいるですー。水場の近くに住むモンスターなので、そういう場所のトイレによくいるのですー。トイレをお掃除してくれて、いい匂いとミュージックで満たしてくれるから、とてもありがたいモンスターなのですー。だから、人気で、ロックンフラワー誘拐事件が後をたたないのですー」


 おれは、感心した。

「たしかに、そりゃ、すごいっす。トイレ掃除がいらないなんて。1家に1フラワーほしいっすね」

「でも、ロックンフラワーは、たまにトイレに外からカギをかけちゃう、おちゃめさんなのですー。1曲聞き終えるまで、出してくれないですー」

と、ホブミが言うのを聞いて、おれは、ちょっと考えたすえ、結論をだした。

「それは、困る……こともないな。トイレでのんびりするのは、いいもんな。じゃ、ロックンフラワーを連れて帰るのは、いいとして……」


 おれは、動く人体模型っぽいのを、じーっと見た。

「プリケロさん。これも、連れて帰る気っすか? てか、これ、モンスターなんすか?」

 むしろ、モンスターであってほしい。モンスターじゃなかったら、なんなの?

 でも、ホブミは言った。

「ホブミは、知らないモンスターなのですー」

 やたらと物知りなホブミが知らないってことは、たぶん、これ、モンスターじゃない。

 やっぱり、どう見ても、プラスチック製の人体模型以外の何物でもないし。つまり、これは、動く人体模型以外のなにものでもない……。


「理科室にいたんだぜ。理科室はもうないから、ちっちぇ巨人は帰るとこねーんだ」

と、リーヌは、かなしそうな声で言った。

「なんか、かわいそうな、同情を引くようなことを、言ってるっすけど。それって、プリケロさんが、理科室を壊しちゃったってことっすよね?」

 おれがたずねると、リーヌは、とりあえず、否定した。

「んなことねぇよ。なんか、変な液体がいっぱいあったから。ちっちぇー巨人といっしょに、色々混ぜて遊んでたら、理科室のあった、あっちの2階がふっとんじまっただけだぜ?」

「理科室だけじゃなくて、周辺一帯をぜんぶ、ふっとばしたんすか。それにしても、モンスターじゃないのに動く人体模型って、いったい……? ひょっとして、学校の七不思議的なもの? 幽霊?」

 そうかんがえると、怖くなって、おれは、ブルブルとふるえた。


 リーヌは、平然と言った。

「巨人は動くもんだろ」

「巨人じゃないっすから! ふつうサイズの理科室の人体模型っすから! さっきから、やたらカタカタいってるし、内臓の模型が、一部、はずれて、落ちかけてるっすよ? キモッ」

「キモッ」

と、キモノキが元気よく鳴いた。

「こまけぇこというなよ。な、ちっちぇー巨人?」

 人体模型は、不気味な感じに、カタカタうなずいた。

「こんな、仲間、いやだぁー。せめて、ガイコツにしてくれよぉー。おれ、内臓的なの、ダメなんだからぁー」

と、おれが嘆いていると、

「キモッ キモッ」

と、キモノキがとてもうれしそうな鳴いた。……キモノキは、内臓的なものが好きらしい。

 

 さて、その時、グラウンドの方で、爆発音がした。

 ガラスのない窓から外を見ると、シャバーが、戦闘機とヤッダーワーンに挟撃されて、苦戦している。

「そうだ。シャバーがおとりになってくれてたんす。早くいかないと、シャバーがピンチになっちゃうっす。プリケロさん、もいちど、ケロパンチで、ヤッダーワーンをたおしてくれっす」

「おう。じゃ、また、かっこいいロボを倒すぞ」

と、リーヌが言っていたその時。


「危ない!」

というシロの声が聞こえて、おれは、とつぜん、もふっとしたものによって、床に押し倒された。

 爆発音が響き、がれきが飛び散った。

「モフッ。……あ、ありがとうっす。シロさん」

と、おれは、おれの上の極上のモフモフのかたまりに言った。おもわず、「モフッ」と言ってしまうほどの、モフモフ具合だった。

 特に、シロの首あたりの毛が、おれの顔にあたってるんだけど、極楽のふわふわっぷりだ。

(もう、このままずっと、モフモフをかけ布団にお昼寝したいー)

と、おもわず思ってしまうくらいの、もふもふふわふわ具合だ。

「無事でなりよりだ。プップリン殿」

と言って、シロは、立ち上がった。

(モフモフぅ~)

と、おれは、心の中で、叫んだ。シロと会うたび、リーヌがモフモフ騒いでいた理由が、わかってしまった……。この極上のモフモフは、手放しがたい……。


 なにはともあれ、おれ(+プップ、キモノキ、アナイリードッグ)はシロのおかげで無事だったんだけど。

「ちっちぇー巨人ーー!」

と、リーヌが叫んでいた。

 ロックンフラワーが、すっかりしなびてうなだれた様子で、ギターで悲愴な音楽をかなでている。

 なんと、さっきの攻撃をくらって、人体模型が粉砕されていた。

 今はもう、粉々のプラスチックのかけらだ。ところどころ、内臓的なものとか、顔のパーツの欠片とかが見えていて、すごい怖いけど。

 というか、やっぱり、こうやって見ると、これ、プラスチック製の人体模型以外の何物でもない。動いていたのが、ナゾだ。


 そして、廊下の向こう端には、バズーカをもった少年たちがいる。十代前半くらいの年頃の。

「あのクソガキども。よくも、ちっちぇー巨人を!」

と、リーヌは怒りにふるえながら言った。

 おれは、リーヌに言った。

「プリケロさん。怒る気持ちはわかるっすけど、相手は、子どもっす。まちがっても、殺しちゃだめっすよ。いくら悪名高い悪役でも、やっていいことと悪いことがあるんすから。そもそも、この人体模型って、この学校の備品のはずだし……」

と、おれが冷静に言っている間に、バズーカで攻撃してきた少年たちは、廊下の角を曲がり、見えなくなった。

 そして、リーヌはすでに、少年たちを追いかけて走りだしていた。


「プリケロさーん! そんなやつら、ほっといて、シャバーを助けて、町に帰るっす!」

と、おれは、呼びかけたんだけど、リーヌは、当然のように、おれの言うことなんて聞かず、逃げる少年達を追いかけていった。

「姫さまー。待ってくださいですー」

 ホブミとシロも、リーヌを追いかけて行ってしまった。しかたがないので、おれも走り出そうとした。……その時。

 なんか、後ろから、カタカタ音がする……と思って、おれは、ふりかえった。

 そこには。

 飛び散ったパーツが、ところどころ、おかしな形にくっつきながら、集合し、そして、両手を足みたいにつかって、追いかけてくる、テケテケ化した人体模型が……。

「ギャァーーー!!!」

「キモッ キモッ」

 キモノキはうれしそうだったけど、おれは全力で、悲鳴を上げて、絶叫し、必死になって、リーヌ達を追いかけた。


「ギャーーーーーー! テケテケ! テケテケ人体模型!」

「このゴブリン、うるさいのですー」

と、ホブミが文句を言うから、おれは、必死になって、後ろをゆびさしながら、伝えようとした。

「人体模型が! テケテケに! テケテケ人体模型に!」

「意味不明なのですー」

と言って、ホブミは、ちらっと後ろを向いて、言った。

「なにもないのですー」

 おれは、もう一度、後ろを見た。たしかに、後ろの廊下には、なにもいない……。

「あれ? みまちがいだったのかな?」

「キモッ?」

 なにはともあれ、おれは、人体模型から、逃げ切った。

 テケテケ人体模型は、これからもずっと、勇者学園に棲みついて、学校の七不思議的な存在になるんだろう……。

 

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