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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
133/170

4-72 勇者学園

 おれ達は、学校っぽい建物の前についた。

 ちなみに、おれ達の方へ進んでいたヤッダーワーンは、途中で進路をかえた。シャバーがうまく引き付けてくれたようだ。

 おれ達の目の前の、学校っぽい建物の入り口には、「勇者学園」と書かれた板がはりついている。

「やっぱり、ここが、勇者学園っすか。フーじぃの孫や、ヒガシャの子ども達がみんな入学したっていう人気の学校……」

 立派な校舎だ。

 だけど、勇者学園の建物の中からは、爆発音が聞こえてくる。

 おれが、見上げると、窓からガラスが飛び散っている。

「立派な校舎だけど、なんだか、じきに、壊れてなくなりそうっすね……」

 「プッ」

 「キモッ」


 そう言っている矢先にも、建物の2階の一角で大爆発が起こり、大穴があいた。

 そして、大穴のあいた校舎から、

「プリプリ☆プリヒコはどこどぅわー!」

という声が聞こえる。ガラガラとなにかが壊れて落ちる音といっしょに。

 リーヌの場合、怒鳴り声だけで攻撃になるから。どうやら、リーヌは、おれにつけたあだ名を勝手に呼びながら、その声で、色々と破壊しているようだ。

(なんだか、おれは何もしてないのに、おれのせいで学校が破壊されているみたいなことに……)

 ものすごく、いやなんだけど。


 しかも、おれの、かばんの中から、声がした。

「キャンッ はずかしっ! プリプリ☆プリヒコって名前、はずかしっ! はずかしっ! キャンッ キャンキャンッ」

「おれも恥ずかしいと思うけど! そんなこと言われると、ますます恥ずかしくなるから、やめてくれ! あー、もう、はずかしっ」

 おれが叫んでいると、おれの頭上からも、声がした。

「ププッ。ププププ☆ププププ」

「キモキモ☆キモキモ。キモッ キモッ」

 何言ってるんだか、わからないけど。

 なんだか、モンスターが増えて、にぎやかだ。こいつらが何匹いても、戦力的には、まったく上昇してないんだけど。


 ホブミは、校舎にむかって、あまり大きくない声で叫んだ。ホブミは、もともと声が小さいから、全力で叫んでも、声は小さい。

「姫様ー! 姫様ー!」

 校舎の方からは、特に反応はない。

 リーヌには、聞こえなかったようだ。


 さて、そこで、なにかを誤解しているっぽいシロが、校舎を見あげながら、言った。

「プリンセスは、ここに囚われているのか……。爆発が起こっている。早くお助けせねば」

「え? いや、シロさん。たしかにふつうのプリンセスだったら、そんな感じになるとこなんすけど。この場合は、あのプリンセスが……」

 おれが続きを言う前に、ホブミがすかさず言った。

「囚われの姫様、かわいそうなのですー。早くたすけださなきゃなのですー」

「急ごう。露払いは、俺にまかせてくれ」

と、力強く言うと、なにかを誤解しているっぽいシロは、そのまま勇者学園に突入していった。

(あの自称・プリンセスは、囚われているんじゃなくて、勝手に突入して暴れてるんすー!)

と、おれは、心の中で叫んでたんだけど。


 おれ達が、勇者学園の玄関口に入るとすぐ、冒険者らしき男達がでてきた。

「モンスターが攻めてきたぞ!」

「カエル魔王の手下か!」

 そう、がなりたてる冒険者たちを前に、平和主義者のおれは、なんとか、平和的に解決しようと、言ってみた。

「いやいや、おれ達は、カエル探しをしている旅の途中のフレンドリーなモンスターたちっす。なんと、奇遇にも、カエルの捕獲が、おれ達のお仕事っす。狂暴カエルでお困りだったら、おれ達が特別に無料で、平和的に、駆除してあげるっすよ? さぁ、おれ達を中にいれてくれっす」

 でも、冒険者風の男達は、おれの言うことを無視して、襲いかかってきた。

「このあやしいアホ面モンスターめ!」

「モンスターどもを倒せ!」


「ギャー!」

と、おれが叫んでいると。

「ここは、俺にまかせてくれ」

と、言い、シロが、2本の刀を口にくわえた。

 

≪二刀流秘技・邪素躰守顎炎じゃすてぃすがくえん!≫


 2本の刀を口にくわえたシロは、刀に炎をまとい、学園から出てきた8人くらいの冒険者達の間を駆け抜けていった。

 シロが駆け抜けると、その後ろに、炎が2本の川のように流れていく。

「かっこいいっす! おれが、この世界で見た技の中で、一、二を争うかっこよさっす!」

 ちなみに、この技と、かっこよさ1位を争っているのも、シロの技だ。

 シロの技って、どれも、見た目がかっこいいんだよなー。なんか、技名は、どこかで聞いたことがあるような名前だけど。


 斬られた冒険者風の男たちは、炎に身を包まれ、勇者学園の玄関を、のたうちまわった。

 廊下の奥からかけつけた男が、その様子を見て、廊下にあった消火器で仲間たちの火をけした。

「クソッ。一度撤退して、たてなおせ!」

 冒険者風の男たちは、校舎の奥へと逃げていった。


 その後も、出くわす冒険者風の男達は、シロが全部倒してくれ、おれ達は、どんどんと勇者学園の内部、破壊されまくった校舎内を進んで行った。

「さらわれたプリヒコはどこどぅわー! プリプリ☆プップリンはどこどぅわーー!」

という声と爆発音を追いかけて。

「プリケロさーん! とりあえず、だまってくれーっす!」

「姫様―! ここですー!」

 おれとホブミは、大声でリーヌに呼びかけ続けた。

 

 しばらくして。


 とつぜん、廊下の角から、動く人体模型がとびだしてきた。

 理科室とかに置いてある、プラスチックとかで、できている人体模型だ。

「な、なんだ、これ!? キモッ!」

「キモッ!」

 おれとキモノキが叫ぶと。

「プリヒコ!」

 人体模型の後ろから、リーヌがあらわれた。

「ちっちぇー巨人。よく、とらわれのプリヒコを見つけてくれたな」

と、リーヌは人体模型に感謝していた。

 どうやら、「ちっちぇー巨人」とは、この人体模型にリーヌがつけた名前のようだ。


 おれは、リーヌに言っといた。

「プリケロさん。ちっちぇー巨人って、それはないっす。いや、言いたいことはわかるっすよ? たしかに、おれも、こういう巨人が出るアニメを見てたっす。一時期、宴会芸とかハロウィンとかのコスプレでも、巨人だか人体模型だかわからない全身タイツが流行ってたっす。でも、人体模型は、進撃しちゃう巨人より前からいたんすから。だから、これは、ただの、ふつうサイズの、人体模型っす。筋肉だけじゃなくて、内臓的なパーツが、見えてるし」

「キモッ」

と、キモノキがうれしそうに鳴いた。


「なに言ってやがんだ。ちっちぇー巨人が見つけてくれたんだから、感謝しろよ。囚われのプリヒコ」

と、リーヌは言った。

「プリヒコはやめてくれっす。てか、おれは、囚われていないし。こんなに自由の身っす」

 おれは、両手両足を元気に動かし、その場でかけ足をして見せた。

「だいたい、プリケロさん。こんなとこを、いくら探しても、おれは見つからないっすよ? おれは、ここに、いなかったんすから」

と、おれが言うと、リーヌは、まじめな顔で、おれにたずねた。

「あ? なにいってんだ? おまえ、ここにいるだろ? それとも、いねーのか? おまえは、アタイがゴブヒコから進化させたプップリンじゃなくて、知らねぇ野生のプップリンなのか?」

「プップリンは世界に一匹しかいないっす! プップリンて、おれ達が勝手に、冗談でつくっちゃった、なんちゃって新モンスターなんすから。そうじゃなくて、おれは、プリケロさんを探して、今、はじめて、ここに来たんす。おれは、別の場所で無事にリリースされて、町に帰ろうとしてたんすよ?」


 リーヌは、首をかしげた。

「なに言ってんだか、わかんねーな。おまえは、アタイが知ってるゴブヒコなのか? ゴブヒコじゃねーのか?」

「ゴブヒコっす! いつもおなじみの、激よわブサイクな、あんたの唯一の仲間モンスターっす! てか、散々いっしょにいるんだから、さすがに、見ればおれだって、わかるでしょ?」

と、おれが言うと、

「そりゃ、アタイのセリフだぜ」

と、なぜかリーヌは、あきれたように、言った。

「おれは、プリケロさんの見分けはついてるっすよ? たしかに、金髪じゃないただのカエルになったら、見分けがつくか、ちょっと自信がないっすけど……」

 とか、おれが言っていると。


 リーヌは、そこで、はじめて、おれの後ろにいるモフモフな犬侍の存在に気がついた。

「モ、モモモモモフモフ!? モフモフモフモフ!?」

 おどろきすぎて、リーヌは、モフモフしか言えないらしい。

 シロは、リーヌの前に歩み出ると、片膝をついた。

「俺は、シロという者。微力ながら、プリンセスをお助けするため、はせ参じた」

「モッフモフー! モフモフ騎士ナイトどぅわーーー!」

 リーヌは、興奮しすぎて、意味不明に叫んだ。その叫び声で、窓ガラスが、近い方から順番にバリンバリンと猛スピードで割れていった。

 ちなみに、おれは、そうなるんじゃないかと思ったから、リーヌが叫びだす前に、リーヌの後方に移動していて、無事だった。

 そうじゃなかったら、おれもプップもキモノキもアナイリードッグも、みんなリーヌの叫び声で、うっかり殺されちゃうところだったから。……もう、今は、おれだけの命じゃないからな。おれ、ゴブリン・バス化しちゃってるから。

 それにしても、こんな光景を見ても、シロはまったく、リーヌの正体に気づいていない。本物のプリンセスだと、信じているらしい。思いこみって、すごいな。


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